新年あけましておめでとうございます。
昨年は災害級ともいわれる猛暑や、あいかわらずの豪雨被害、挙句のはては熊被害も相次ぎ、気候や自然の異変をいかにも感じさせられた1年でした。2025年の流行語大賞では「二季」がノミネートされたりしましたが、穏やかに四季のめぐる年が戻ることを願っています。
さて、当館では年が明けたこの1月から、前川國男館(令和4年から休館している旧本館)が改修工事に入ります。そこで、この建物が休館に入る頃、改修に向けて準備をしていた時期の姿を捉えた『改修前 前川國男設計神奈川県立図書館』という写真集を紹介します。ちなみに旧本館からの改称により、その名を冠した前川國男さんという方は、この前川館とブリッジで繋がっている音楽堂や、すぐ隣にある青少年センターを設計した建築家です。国立国会図書館本館や東京文化会館をはじめ、日本のモダニズム建築を代表する作品を数多く生み出しています。旧本館(前川國男館)は令和3年に音楽堂とともに県指定の重要文化財となりました。
そんなことから、この本は高名な設計者による建物の特徴を捉えた、いわゆる建築の写真集と思われるかもしれませんが、実はだいぶ異なっています。写っているのは、くたびれた背表紙の本が並ぶ書架、補修作業中の本、空になった書架、すり減った手すりと落書きの跡、非常ベル、ガス排出口、塗装のひび割れた壁など、人の手がかけられていたり、放っておかれたままであったりする、雑多なモノの姿です。撮影した写真家の潮田登久子さんには、実際の家庭で使われている冷蔵庫の中を、扉を開いてそのまま写し、その暮らしの一端を記録した『冷蔵庫』や、国会図書館、大学図書館で所蔵している、朽ちかけた本の姿などを捉えた『ビブリオテカ 本の景色』(土門拳賞受賞)といった代表作があります。どちらも静物画のような奥深さとユーモアを感じますが、この『改修前』では、当時の理想を追求した建物の中で、その理想からは、どこか外れてしまった人の痕跡(それは、ここで働いている私たちのことです)が、ユーモアの一部となっています。
この本は図書館グッズのひとつとして作成したもので、館内の猿田彦珈琲でのみ販売しています。もちろん図書館資料として所蔵しており閲覧・貸出も可能です。また、本館1階の窓面書架の上部にかかっている写真は、これは何だろうと思われた方も多いと思いますが、実はこの『改修前』で使われている写真の一部です。ご来館の際にはぜひともご覧ください。
さて、前川館の改修工事はまだ1年以上続き、令和9年度中の再開館を予定しています。改修は、耐震補強、バリアフリーなど時代に即した機能や設備を設けると同時に、昭和29年(1954年)開館当初の姿に戻すというコンセプトで外観や内部を整備する予定です。再開館に向けた資料移転の際には、一部資料の利用が休止となり、利用者の皆様には御迷惑をお掛けすることになりますが、御理解、御協力をお願い申し上げます。
『改修前 前川國男設計神奈川県立図書 Before Renovation:Kanagawa Prefectural Library Mayekawa Kunio Library Annex』 潮田登久子/写真 猿田彦珈琲 2024年
請求記号:748/1323 資料コード:23589088 OPAC(所蔵検索)
『冷蔵庫 BeeBooks』 潮田登久子/著 潮田登久子 1996年
請求記号:748FF/743 資料コード:20903993 OPAC(所蔵検索)(資料移転のため2026年1月現在、利用不可)
『ビブリオテカ 本の景色 Views of the books ビブリオテカシリーズ3 Bibliotheca』 潮田登久子/著 幻戯書房(発売)、ウシオマダ(発行)2017年
請求記号:023.06/38/3 資料コード:23374762 OPAC(所蔵検索)
【関連するページ】
司書の出番 「神奈川県立図書館開館70周年記念トークイベントを開催しました」
県立図書館 SPECIAL CONTENTS 「神奈川県立図書館前川國男館写真集」
(県立図書館 企画サービス部長 森谷 芳浩)