神奈川県立の図書館

第4期after5ゼミ第4回 吉田穂波「小さな命を守れ!~災害時の母子支援~」

公開

ファシリテーター伊藤氏と講師吉田氏の写真第4期after5ゼミ「子どもを社会で守るには」の第4回ゼミが、2025年10月24日(金曜日)に開催されました。講師には、産婦人科医で医学博士、公衆衛生学修士であり、現在は神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授を務める吉田穂波さんをお招きし、「災害時の母子を守る」をテーマにお話を伺いました。
(写真左からファシリテーターの伊藤達矢さん、講師の吉田穂波さん)

吉田さんは産婦人科の臨床医として海外で公衆衛生学を学び、帰国した年に東日本大震災の災害派遣医師として宮城県石巻市を訪れました。地域の事情が分からないまま活動する難しさに直面し、「医師として無力」だと感じられたそうです。その無力感が「災害時にできることはほとんどない。けれども、平時ならできることがたくさんある」と「災害が起こる前の備え」を行政、大学で調査・研究する原動力となりました。

震災当時の妊婦の被害数は不明ですが、たった1日で1歳以下の子ども70名が亡くなったことが分かっています。妊婦や乳幼児はどの自治体でも、数が少ないいわばマイノリティであり、少数派の支援は後回しにされがちです。しかし、「災害の影響は一様ではない」と言われ、弱い人ほど受けるダメージは大きくなります。吉田さんは「女性だけが特別と言う訳ではありませんが、特に弱い状態である妊婦さんや赤ちゃんには、健康な人より一層の備えが必要です」と説明されました。吉田さんは石巻の妊婦さんたちに「何を用意しておけばよかったか」をヒアリングし「あかちゃんとママを守る防災ノート」を作成しました。

この「防災ノート」を元に、日常の備えについて具体的なお話がありました。例えば、「防災ノート」に1いざという時に自分を落ち着かせる方法、2自分に何かあった時に頼れる人のリスト、3自宅やよく行く場所から近い避難所情報、4家族との連絡方法、5お薬手帳や診察券のコピー、6家族の写真を書き込んだり貼り付けたりしておくこと、などです。日頃から「何かあったら頼ってね」という人間関係を作ることも大切です。他にも、「母子向け福祉避難所」の構築や、避難所の妊婦対応を大学生と学ぶワークショップなどの取組を紹介してくださいました。

after5ゼミ第4回ゼミの様子.jpg吉田さんからのお話しののち、ゼミ生同士で「子どもが過ごせる避難先となりそうなところ」「誰と協力できたら」を考えました。吉田さんから「何があったら楽しく進められるか?と考えましょう」とアドバイスがあり、ゼミ生からは避難先として「スーパー銭湯」「図書館」、協力者として「横浜の企業」「大谷翔平選手」など様々な意見が出されました。災害時であっても「当たり前」に過ごすにためには何ができるかを考え、常に、そして楽しく考えることが大切であるという意識を共有することができました。最後に吉田さんは、「考えて、言葉にすることが第1歩です。皆さんの今日の発想から、3か月後、1年後に何かが変わるかもしれません」とエールを送ってくださいました。
(写真 after5ゼミ第4回ゼミの様子)

(県立図書館:イベント担当)

【関連著書】
『頼るスキル頼られるスキル 受援力を発揮する「考え方」と「伝え方」 角川新書 K-456』
吉田穂波/著 KADOKAWA 2024年資料コード: 23637747 請求記号: 336.49/71

【関連情報】
「災害時に次世代を守るためのツール」ギフトフォア(外部サイト)(2025年12月25日確認)