公開

2023年9月29日(金)、第2回「after5ゼミ」が開催されました。

今回は、翻訳家で文筆家の服部 雄一郎さん、文筆家の服部 麻子さんのご夫婦に「サステイナブルに暮らしたい」と題してお話いただきました。

ファシリテーターの伊藤さんとの対話や、ゼミ生との意見交換を交えて進行しました。

(写真左から伊藤達矢さん、服部麻子さん、服部雄一郎さん)

左からファシリテーターの伊藤達矢さん、服部麻子さん、服部雄一郎さん

おふたりが3人のお子さんと移り住んで10年目となる高知県。その美しい山々の映像からお話しが始まりました。

神奈川県出身のおふたりはそれぞれお勤めをして結婚、海外生活を経て高知県に移住しました。移住した当初は、雄一郎さんがお菓子作りをしたり、麻子さんが高知の野菜を販売したりと様々な仕事をつなぎ合わせて自営業を楽しんだそうです。

はじめから現在のような執筆や発信中心の生活を目指していたのではなく、雄一郎さんが思い入れのあった本『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の翻訳書の企画が通り出版されたことで、現在の生活スタイルに繋がったといいます。

雄一郎さんがゼロ・ウェイスト(無駄や浪費を見直してごみをなくす暮らし)に目覚めたのは、1人目のお子さんの誕生を機に葉山町役場に転職したことがきっかけでした。たまたまごみ担当に配属され、町民からの質問に答えられるようコンポスト(生ごみを堆肥化する容器)や資源物の分別に取り組むと驚くほどごみの量が減り、「自分にとって気分が良い」と感じられたことで環境問題の見え方が大きく変わったといいます。

雄一郎さんが役場や海外で学び体験した、各国のごみ事情について話が展開しました。

日本のごみは約8割が焼却され、資源化されているごみは2割弱、埋立ごみは1%未満です。私たちが普段、プラスチックや紙類、スチール、ガラスと分別している資源ごみは全体の20%にも満たないこと、さらに焼却されるごみの大半は物質的には資源化が可能であるにもかかわらず、資源化されずに燃やされており、日本のごみ焼却率は世界一であることなど、現状を知ることが出来ました。

麻子さんからは服部家の暮らしについてお話がありました。

たとえば電気を大切に使うこと。電化製品などを購入する時は、壊れたらゴミになることや、製造段階でも途上国の労働問題などにつながっていることなどを想像しながら、よく吟味することを心がけているそうです。また、野菜は地域で作られたもの、オーガニックのもの、知り合いが作ったものをできるだけ選ぶ、お肉は環境負荷が低い鶏肉を選ぶなど、「買い物は投票」という考え方について伺いました。

お金をどこに投じるのか、応援したい活動をしている個人、お店、企業に手渡すだけでもより良い社会に繋がっていくという考え方は、昨年のafter5ゼミにご登壇いただいた吉田奈緒子さんや、前回の末吉里花さんの講義にも通じる、個人ができる大きな一歩であると改めて感じました

サステイナブルやSDGsという言葉に対して、「個人の小さな取り組みだけでは意味がない」というような悲観的・冷笑的な反応があることについても、ご自身の考え方が示されました。

雄一郎さん「政治が変わらないと社会が変わらないのは事実ですが、市民が"お客様"のように待ってばかりでは結局社会が変わりにくくなります。市民の後押しあってこそ、社会の変化は加速される。個人の取り組みはいかに小さくても、輪が広がることで、社会の変化を呼び込んでいけるのです。でも、無理をしても続かない。環境と自分の双方にとってサステイナブルな『二重のサステナビリティ』を見出だすことが大切だと思います。」

麻子さん「どのようなことも、押し付けられると楽しめなくなってしまうと思うんです。だから家族はもちろん、人に「押し付けないこと」。「やりたいと思った自分」ができる範囲ではじめたらいいと思います。ごみを減らすことも、それが目的になってしまうと頂き物や子どもが作ってきた工作すらをも喜べなくなってしまう。「いまの自分にちょうどいい」を考えたり、選んだりしながら、自分や家族の気持ちや暮らしに沿った取り組みをこれからも考え続け、変化していきたいですね。」

お話のあと、ゼミ生同士で率直な意見を交わしてもらい、さらにおふたりに質問や意見を伺う時間を設けました。ごみ問題という誰もが関わりのある身近な議題は大変盛り上がりました。

最後に麻子さんから、ご自宅で育てているコリアンダーの種が希望者に配られました。

社会を変えるために無理をするのではなく、楽しみながらごみや消費に対する意識を変えていくヒントをいただいた貴重な時間となりました。

服部雄一郎さん、服部麻子さん 著書

『サステイナブルに家を建てる』KTC中央出版 2022年

請求記号:527/352 資料コード:23465347 OPAC(所蔵検索)

『サステイナブルに暮らしたい 地球とつながる自由な生き方』KTC中央出版 2021年

請求記号:590.4/134 資料コード:23465321 OPAC (所蔵検索)

服部雄一郎さん訳書

『みんなの地球を守るには? Tous écolos!』エリーズ・ルソー/文 KTC中央出版 2022年

請求記号:519/519 資料コード:23465354 OPAC(所蔵検索)

『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン/著 NHK出版 2022年

請求記号:613.5/165 資料コード:23373970 OPAC (所蔵検索)

『エイドリアンはぜったいウソをついている』マーシー・キャンベル/文 岩波書店 2021年

請求記号:E3/キ 資料コード:23468036 OPAC (所蔵検索)

『ギフトエコノミー 買わない暮らしのつくり方』リーズル・クラーク/著 青土社 2021年

請求記号:365/494 資料コード:23252570 OPAC(所蔵検索)

『プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命』シャンタル・プラモンドン/著 NHK出版 2019年

請求記号:519/518 資料コード:23465362 OPAC(所蔵検索)

『ゼロ・ウェイスト・ホーム ごみを出さないシンプルな暮らし』ベア・ジョンソン/著 KTC中央出版 2016年

請求記号:519/520 資料コード:23465339 OPAC(所蔵検索)



(イベント担当者)