神奈川県では、「友のように いつも そばに 一冊の本を」のスローガンのもと、子どもの読書活動に関する様々な事業に取り組んでいます。「子ども読書活動推進フォーラム」は、読書の大切さについて理解を深め、県内の優れた読書推進の取り組みをみなさんに知っていただくことを目的としており、今年度(令和3年11月28日開催)で第21回を迎えました。
フォーラムは例年、作家さんによる講演と、県内で子どもの読書に関わる活動をしている団体による事例発表の2部構成で行っています。
今回は『最後の医者は桜を見上げて君を想う』や『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』の著者である二宮敦人さんの講演と、自修館中等教育学校図書館com+com(コムコム)のみなさんによるコロナ禍における活動報告をオンラインで配信しました。
今年は特に中学生~大学生を意識したイベントづくりを心がけており、生徒・学生さんのほか、子どもの読書活動に関わるボランティアの方、司書教諭、学校司書、そのほか子どもの読書活動に関心のある71名の方々にご参加いただきました。
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、第1部の事例発表は自修館中等教育学校図書館com+comのみなさんに事前に作成していただいた動画を上映しました。内容は、次々と学校行事が中止になる状況下で生徒さんが主体となって行った「図書館を舞台としたオンラインイベント」について、ブックトークなどの発表を交えての実践報告です。生徒さんが活発に話す様子は楽しそうで、制限のあるなかでも学校図書館が積極的に活動していることがよくわかる発表は、観ている方も思わず笑顔になったのではないでしょうか。
第2部の講演では、幅広い分野の小説やエッセイの執筆で活躍中の二宮敦人さんより、「人間になるために書く」と題して、作家というお仕事や小説を書くことについて、ご自身の経験を基に御講演いただきました。
作家さんはどのように小説を生み出しているのか?読者にとっては謎に包まれた執筆時のプロセスや生活サイクルが、豊富な資料に沿ってユーモアを交えながら語られました。
アンケートでは「講師の先生の人柄に魅了されました」との声が多く、二宮さんの人柄がよく表れた、穏やかながらもわくわくするひとときでした。
講演の最後には、次のようなお話をいただきました。
「変わっていることがコンプレックスでもあり、ふつうの人になりたいと思い、生きづらさを感じていました。しかし最近は考えが変わりつつあります。『世にも美しき数学者たちの日常』の取材で、"数学の得意な人が必ずしも数学者として優秀とは限らない"という話を聞き、なかなか納得しないからこそ変な本が書けるのではないかと思いました。自分では欠点だと思っていることも見方を変えれば美点で、本当の意味で劣っている人などいないと思います。夫と妻の考え方が違うことで家庭が回り、作家と編集者で視点が違うからこそ本を作ることができます。ふつうの人がいっぱいいるのではなく、色んな人がいて、色んな持ち場があるからこそ、世の中は回るのです。あなたもその一員で、自分が欠点だと思っている部分は、自分が思うほど悪い素質ではないので、一緒に生き延びましょう。」
フォーラム終了後、当館で所蔵している二宮敦人さんの著作に直筆のサインを入れていただきました。
質疑応答の際、「作家以外ならどんな職業に就きたかったですか?」の質問に、「漫画家になりたいと思ったことはあります。」と回答していらしただけあり、花の模様をかたどったサインはとても美麗です。当館で所蔵している二宮さんの著作のうち、資料詳細のタイトル注記に「著者書名本」と記載のあるものすべてにサインが入っておりますので、ぜひお手に取ってみてください。
著作一覧はこちら
なお、別の記事で二宮敦人さんの著作『世にも美しき数学者たちの日常』を紹介しておりますので、あわせてご覧ください。
司書の出番!私のオススメ本 『世にも美しき数学者たちの日常』 二宮 敦人著
今年度のフォーラムは、例年とは異なりオンライン形式で行ったため、準備から手探りの状態ではありましたが、盛況のうちに終えることができました。
お忙しいなか御準備いただき、御講演くださった二宮敦人さん、動画での出演という依頼を御快諾いただき、事例発表をしてくださった自修館中等教育学校図書館com+comのみなさま、そして御参加くださったみなさま、ありがとうございました。
県立図書館HPイベントページ
2021年11月28日(日曜日)開催 令和3年度 神奈川県子ども読書活動推進フォーラム 「人間になるために書く」
(県立図書館:令和3年度子ども読書活動推進フォーラム担当)