本のタイトルにある「トイピアノ」は英語で"おもちゃ"のピアノという意味ですが、読み進めていくと、ただのおもちゃとは思えないトイピアノの姿が見えてきました。
トイピアノはおもちゃなのか楽器なのか、著者にとっての答えは最後に登場します。
トイピアノとピアノでは大きさや鍵の数などが違いますが、両者を分ける点は仕組みと製造元の区別としています。どちらも鍵を押して内部のハンマーが動き、ハンマーが音を出すものに当たることで音が出るところは同じですが、ピアノは弦で、トイピアノは金属などの棒で音が出るようになっています。
ハンマーや棒の素材によっても音色が異なり、それぞれの魅力があると著者は述べています。
そして、製造元の扱いが「玩具」であることです。
トイピアノという呼び方は最近のもので、ほかにも、おもちゃのピアノ、チンチンピアノ、ミニピアノ、卓上ピアノと呼ばれるものもありますが、本書では「トイピアノ」と呼んでいます。
世界的な老舗メーカーはシェーンハットで、そのロゴから1872年からトイピアノを製造していると見受けられます。また、プロのミュージシャンやコレクターをも惹きつけるミシェルソンヌというメーカーもあります。
日本にもトイピアノを生産していたメーカーがあります。著者の調べたところによると、日本では戦前から生産、輸出を行っていて、主要な生産地は名古屋でした。ヤマハの前身である日本楽器製造が1915年に製造した卓上ピアノも現存しています。1980年ごろには国内の8割を生産していた井上楽器製作所(1999年廃業)があり、1985年からは河合楽器製作所による生産が始まりました。
河合楽器製作所の紹介ページには、アップライト型のトイピアノの製作工程が写真付きで紹介されています。
著者の河合楽器製作所へのインタビューもあり、製作側の様子を覗うことができます。
実際にどんな音かを聞いてみることもできます。
本書のページに載っているQRコードをスマートフォンなどで読み取ると、トイピアノの紹介映像を観ることができ、音も聞くことができます。
その他にも、トイピアノ用の楽譜2曲(「ふたりの時計(作曲:菅谷詩織)」と「ジュ・トゥ・ヴ(作曲:E.サティ、編曲:飯田有抄)が掲載されています。
トイピアノを満喫できる一冊ではないでしょうか。
『ようこそ!トイピアノの世界へ 世界のトイピアノ入門ガイドブック』飯田 有抄 著 カワイ出版
2020年 資料コード:23205248 請求記号:763.2/209 OPAC(所蔵検索)
(県立図書館:弾いてみたくなった大人)