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世にも美しき数学者たちの日常書影 新年あけましておめでとうございます。

昨年は、新型コロナウィルス感染症に係る2回目の緊急事態宣言に始まり、新たな変異株「オミクロン株」の出現で終わるという、2年連続でコロナに翻弄された年となりました。

ワクチン接種の加速や治療薬の開発など、これまでの経験と人類の英知を結集し、今年こそは明るく平穏な1年となることを願うばかりです。


さて、年頭にあたり、県立図書館の蔵書の中から1冊の本をご紹介します。

作家・二宮敦人さんの『世にも美しき数学者たちの日常』です。


当館では、子どもの読書活動の普及推進を目的に、毎年「子ども読書活動推進フォーラム」を開催しています。令和3年度のフォーラムでは二宮敦人さんを講師にお迎えし、「人間になるために書く」と題し、作家が何を考え、思いながら小説を書いているのかについてご講演いただきました。そのご講演の中で紹介された著書の中の1冊です。


私自身、学生時代は数学に悪戦苦闘し、大学社会人と全く数学とは縁遠い生活を送ってきた根っからの文系人間です。そんな自分が何故「数学」と題する本に興味を持ったのか。

それは、二宮先生の「数学が得意な人間が優秀な数学者とは限らない」の一言からでした。

「え??なんで??」という素朴な疑問が湧き、その答えを求めるべく、あれほど距離を置いていた「数学」と題する本を手に取ることとなりました。


この本は、実際の数学者へのインタビューをまとめたノンフィクションです。

最高の頭脳集団である数学者たちの世界は、私たちが想像する世界とは全く異なった、ともすると哲学や芸術に近い領域、理系というより文系か?と錯覚するような、そんなロマン溢れる世界が展開されていました。

「リーマン予想」「P≠NP予想」「ホッジ予想」...長年解かれていない難問を解くことに人生を賭ける人達の以下至言です。


「『写経』ではなく『写オイラー』。オイラー論文の書き写しが楽しい」「芸術に近い。個性が全て」「言語も音楽も、もちろん数学すらも、数学である」「歩く姿を後ろから見れば、ああ数学者だなとわかる」「AIに数学はできない」「数学とは人の心、即ち情緒を数式で表現する学問である」...etc.


ここでは詳細をご紹介できませんが、数学嫌いな方も、文学作品と思って是非一度手に取ってお読みいただきたいと思います。

県立図書館では、その他にも魅力的な蔵書を多数取揃えていますので、皆様のご来館を心よりお待ちしています。


(県立図書館長 南雲 正二)


『世にも美しき数学者たちの日常』 二宮敦人著 幻冬舎 2019

資料コード:23266315 請求記号:410.28/3 OPAC(所蔵検索)