神奈川県立図書館本館は、戦後モダニズム建築の旗手・前川國男の設計により、音楽堂を備えた施設として1954(昭和29年)に建てられました。
1999年にDocomomo JAPAN(「モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織」の日本支部)の「日本の近代建築20選」に選出、2021年に「神奈川県指定重要文化財(建造物)」に指定されるなど、非常に重要な建築として知られています。
10月17日(日曜日)、神奈川県立図書館主催のオンライン講座として、「図書館建築講座」を開催しました。
講師の藤原徹平先生は、横浜国立大学大学院の准教授であり、建築家として図書館の建築にも携わる方です。
講座は、県立図書館の建築に関する映像の上映と、藤原先生によるご講義の2部構成で行いました。
前半の映像上映では、当館で所蔵している県立図書館・音楽堂の建設時の様子を撮影した映像を、藤原先生にご解説いただきながら、みなさんで視聴しました。
約70年前の建設現場を観ることのできる、大変貴重な映像です。職人さんたちが手作業でこだわって作り上げた部分も多いというお話を聞き、様々な人の思いが込められた建物であるということをあらためて実感しました。
(画像出典) 『神奈川県立図書館・音楽堂30年のあゆみ』
後半のご講義は、前川國男がル・コルビュジエの下で学んだ時代のお話から始まりました。
その後、前川國男が県立図書館・音楽堂で目指したものについて、写真などの豊富な資料を示しながら、「近代」、「民衆のための建築」、「エスプラナード(都市広場空間)」、「テクニカルアプローチ」の4つのテーマについて解説していただきました。
最後に、藤原先生が設計に携わった図書館を例に挙げながら、これからの図書館についてお話しいただきました。
前川國男や、前川の下で県立図書館の設計を担当した鬼頭梓の考えを踏まえつつ、それらを発展させて、これからの図書館について考える藤原先生のご講義は、アンケートでも「図書館のあり方について、考えるきっかけがもらえてよかった」、「一挙に目の前が開けた思い」といったご感想をいただき、大変好評でした。
今回はオンラインの講座となりましたが、機会がありましたら、県立図書館へご来館いただき、建築の素晴らしさを感じていただければと思います。また、ご来館が難しい方は、図書館のホームページに写真集をご用意しておりますので、ぜひご覧ください。
県立図書館では、今後、新棟の開館や、現本館・新館の整備が予定されています。
これからの県立図書館にも、どうぞご期待ください。
(県立図書館:図書館建築講座担当)