公開

an・anの嘘書影 『an・an』(アンアン)は、ファッションやカルチャーなど多彩な内容で人気の女性誌です。

あとがきに「六十代以下の日本女性であれば誰しもが一度は手に取ったことがあるに違いない雑誌、アンアン。」と書かれている通り、私も高校生のときに手に取って以来、アンアンが提案するライフスタイルに憧れ、恋愛や占い特集について友人と熱く語り合ったことがありました。

いつも話題の中心にいたアンアンの嘘とは何なのか、気になり手に取った1冊です。


本書は、創刊号(1970年3月)から2000号(2017年4月)までの46年の変遷をひもとき、アンアンが女性たちに与えた影響を客観的に検証した歴史書のような作品です。

「異性ウケより自分ウケ」「スピリチュアルな時代」「欲しいのは幸せオーラ」等の特集記事をもとにした章立てと、表紙や紙面の画像も掲載してあり、時代の移り変わりがわかりやすい構成になっています。


著者は、辛口ながらユーモアのある文章が人気のエッセイストで、ベストセラー『負け犬の遠吠え』など女性の生き方をテーマにした作品を執筆されています。本書でも、女性の恋愛観や結婚観の変化を鋭く分析しつつ、丁寧な文体でわかりやすく語りかけています。


アンアンが創刊された1970年からの四半世紀は、高度経済成長期やバブル崩壊など、社会情勢に大きな変化がありましたが、女性を取り巻く環境も揺れ動いていました。

男女雇用機会均等法によって社会進出が促進されましたが、仕事や結婚などの難しい選択に悩み、生き方を大きく変えないと前に進めない女性も数多くいました。


本書を読むと、アンアンも同じように、進むべき道を模索しながら迷走していたことが分かります。

「モテ系の雑誌であれば、『女の幸せは結婚』という思想は、創刊からどれだけ時が経とうと変わるものではありません。しかしアンアンの場合は、女性の生き方と幸福の尺度が時代と共に変化する度に、『このままでいいのか』という迷いが生じる。それは日本において、自分というものを強く持って生きようとしてきた女性が、常に感じざるを得なかった迷いなのではないでしょうか。」と、著者は問いかけます。


いつの時代も迷ったり突っ走ったりを繰り返しながら、アンアンは私たちに新しい選択肢を示してきました。

その選択肢は"嘘"だったかもしれないけれど、どんな道を進もうとも私たちを応援してくれている、そのことは"ホント"なのだと思います。


一読者であった私は、自分の人生を重ね合わせ、懐かしく振り返りながら読むことができました。

アンアンが示してくれた夢や理想が嘘だったのか実だったのか、それは私たち読者の受け取り方次第なのかもしれません。

ぜひ、「嘘に隠されたホント」を覗いてみてください。


『an・anの嘘』 酒井順子 著 マガジンハウス 2017

資料コード:22944995 請求記号:051.7/133 OPAC(所蔵検索)


(県立図書館:こぱんだ)