神奈川県立の図書館

『ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人』萬屋健司 著

公開

『ヴィルヘルム・ハマスホイ静寂の詩人』書影絵画や写真は、一瞬にして人を深くひきこむ力を持っています。


気分が塞ぐようなことがあると、ハマスホイの静かな画を眺めています。
まるで画の中に入り込んだかのように、あるいは画家と同じ立ち位置で画に対峙しているかのように、不思議な臨場感があるのです。
同じ視線を画家と共有しているような気持ちになり、くつろぎを感じます。


本書は、デンマークを代表する画家ヴィルヘルム・ハマスホイ※
(Vilhelm Hammershøi 1864-1916)の生涯を辿りながら、彼の作品世界を紹介する画集です。デビュー作から貫かれた画風の特徴とその背景を、時代を追いながら考察し、同時代のデンマーク美術の紹介も織り交ぜて構成されています。
著者は、2020年に東京都美術館と山口県立美術館で開催された「ハマスホイとデンマーク絵画」展を企画監修した研究者です。


コペンハーゲンの自宅である古い建物の室内を繰り返し描いたハマスホイは、インタビューに応えて次のように語っています。
「私はかねてより、古い部屋には、たとえそこに誰もいなかったとしても、独特の
美しさがあると思っています。あるいは、まさに誰もいないときこそ、それは美しい
のかもしれません。」(p8,98)


彼の作品は、灰色をベースにしたモノトーンの抑えられた色調と繊細な光で表現されています。室内に描かれているのは、人物がいたとしてもクラシックな部屋そのものです。
建築物や風景、肖像画も描いていますが、精密に描きこまれた室内画が秀逸です。後ろ姿の妻イーダ、開かれた白い扉、窓、家具調度を描いた作品に特徴がみられます。
霧がかかっているようなタッチや、扉、壁、額絵等によってつくられる直線を強調しバランスよく配した構図。そこには音のないかのような世界が広がり、煩雑な日常から離れ、画と対話する余白や想像の余地を鑑賞者に与えます。
掲載作品は86点。ページ全体にズームインした作品もあり効果的です。サイズはB5判で、画集としては広げるのに程よい大きさです。


見ていると静けさに包まれていく画。ヴィルヘルム・ハマスホイの洗練された美意識と精神性を、本書を通して感じていただけると思います。


鑑賞者の心を惹きつける美しい画。
神奈川県立図書館3階のザ・リーディングラウンジで、画集を手に取る静かな時間をお過ごしになるのはいかがでしょうか。


※Hammershøiは、「ハンマースホイ」や「ハマースホイ」とも表記されます。


(県立図書館:ブルーフルーテッド)


『ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人 ToBi selection Vilhelm Hammershøi』
ヴィルヘルム・ハマスホイ /[画] 萬屋健司/著 東京美術 2020年
請求記号:723.38/33 資料コード:23125305 OPAC(所蔵検索)


『ハマスホイとデンマーク絵画 Vilhelm Hammershøi and Danish painting of the 19th century』 東京都美術館/編 山口県立美術館/編 読売新聞東京本社文化事業部/編 読売新聞東京本社 2020年
請求記号:723.38/36 資料コード:23323090 OPAC(所蔵検索)


国立西洋美術館は、「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」を所蔵しています。常設展で観覧が可能な場合があります。
国立西洋美術館 所蔵作品検索 「ピアノを弾く妻イーダのいる室内 Interior with Ida Playing the Piano」(外部サイト)(2025年11月4日確認)