
2025年7月25日(金曜日)第4期after5ゼミ「子どもを社会で守るには」の第1回ゼミが開催されました。今回は、ACHAプロジェクト代表の山本昌子さんから「児童虐待をなくすためにできること」と題し、社会的養護を受けて育ったご経験と、養護施設出身者を支えるご活動についてお話しいただきました。
(写真左からファシリテーターの伊藤達矢さん、講師の山本昌子さん)
山本さんは生後4か月から19歳まで乳児院、児童養護施設、自立援助ホームで育ちました。家庭的養護を行う施設で、四季折々のイベントや、みんなで話しながら食べる夜ご飯の時間が楽しく、幸せだったそうです。しかし、当時は18歳で施設を出なければならず、孤独感と怒りを感じ死にたいとさえ思ってしまいました。山本さんは「もし私が死んだら先生たちは自分を責めてしまう。それはいけない。私のために生きてくれた人たちが生きている限りは、元気に見える姿でいたい」と考え、先生たちが積み上げてくれた愛情と時間が強さを与えてくれたと気が付きました。
さらに、立ち直るきっかけが二つありました。一つは、保育の専門学校で生い立ちを整理したことです。「自分は色々な人と生きてきた。親に愛されなかったことって重要?」と思えるようになり、「手に入らなかったものより、今あるものを大切に生きたい」という考えに至りました。もう一つは、学校の先輩アチャさんが、成人式の振袖を着せてくれたことでした。山本さんは「生きてきてよかった」と感じたそうです。この経験により、施設出身者に無料で振袖を貸出し、写真を撮って「生まれてきてくれてありがとう」と伝える「ACHA(アチャ)プロジェクト」をはじめました。
しかし、プロジェクトはコロナ禍で一時休止します。山本さんは、孤立を深めてしまう施設出身者が多いことを危惧し、オンラインの居場所を作りました。そこで聞いた「虐待は大人になって終わりじゃない」という声は、インタビュー映画「REAL VOICE」制作のきっかけになりました。さらに映画を深掘りし、書籍『親が悪い、だけじゃない 虐待経験者たちのREAL VOICE』にまとめ、警察や支援機関が関わっても救われない人がいる実態を、世の中に問いかけました。親から虐待を受けてきたにも関わらず「親を助けてほしかった」という声を受けて、タイトルが付けられました。
専門家によると、虐待経験者が抱える心の傷は、薬や治療では「完全には治らない」けれど、環境を整えることで「対応できる」そうです。山本さん自身も、感情の整理ができず暴力的になってしまった時も、施設の先生が自分を否定せず、助けを求めてもいいと思わせてくれたことで、ポジティブになれたと振り返っていました。
最後に、ゼミ生から「私にできることは何か」と問われ、次のように答えてくださいました。
「虐待を受けた当事者に伴走することは、相当の覚悟が無ければできません。けれども、SNSやニュースで虐待の話題に触れた際に「虐待ってよくないよね」と話してもらうことが、社会を変えることにつながります。また、「助けて」と言えない人もいます。ただただ自分の身近な人との関係性を丁寧に続けることも大切だと思います。」と結ばれました。
(写真 after5ゼミ第1回ゼミの様子)(ブッククラブの様子)
【関連著書】
『親が悪い、だけじゃない 虐待経験者たちのREAL VOICE』山本昌子/著 KADOKAWA 2024年
資料コード: 23637739 請求記号: 367.6/479 OPAC(所蔵検索)
『虐待の子だった僕 実父義父と母の消えない記憶』ブローハン聡/著 さくら舎2021年
資料コード: 23638844 請求記号: 369.43/82 OPAC(所蔵検索)
【関連情報】
「ACHAプロジェクト」(外部サイト)(2025年9月9日確認)
映画「REAL VOICE」企画・監督:山本昌子 2023年(外部サイト)(2025年9月9日確認)
「虐待を受けた児童・生徒の SOS 発信に関するアンケート調査結果」ACHAプロジェクト山本昌子 2022年
PRTIMES「児童虐待、先生に相談することができた児童・生徒は 4 人に 1 人。相談後の変化は、「何も変わらなかった」が最も多かった。虐待当事者へのアンケートで判明。」(外部サイト)(2025年9月9日確認)
(県立図書館:イベント担当)