オーケストラの開演前、演奏者がそれぞれの楽器を持ち、着席していく。全員が揃ったところで、オーボエが音を鳴らしチューニングが始まる。次々と楽器を鳴らし、会場中にラの音が響き渡る。これから演奏が始まるという高揚感が徐々に高まっていく。全員の音が合ったところで、指揮者が登壇し、さあ開演だ!
オーケストラのコンサートに行ったことはありますか?この本は、表舞台から裏側、楽器や作曲家のことなど、挿し絵や写真で丁寧にわかりやすく記載されているので、オーケストラを色々な視点から隅々まで楽しめるようになる一冊です。
まず、私が驚いたことは、楽器の配置が今と昔では違うことです。普段、私たちが目にする第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンはとなりに並んでいますが、昔は左右に分かれる対向配置でした。第一ヴァイオリンのメロディを際立たせるためだったと思われます。
ですが、弦楽器のまとまりとアンサンブルを重視したことから、1930年頃ストコフスキーという指揮者の提唱によって、今日のような横並びの配置になりました。1930年以前の作曲家達、例えば、ベートーヴェンやブラームスなどは、対向配置を前提として作曲していたので、作曲された当時と現在では聞こえ方が違います。そこで、最近では、当時の響きに近づけようと、曲によって対向配置にする指揮者もいるそうです。
また、チェロの下から突き出ている棒をエンドピンといい、床に立てるのですが、「本体から床に伝わる振動が音に大きく影響する。床のどこに立てるか気を使う」そうです。床に立てる位置で音が変わるとは驚きです。チェロの演奏者はまず、床を確認するのでしょうか?これから、また違った楽しみ方が増えそうです。
オーケストラの裏方には、私達と同じライブラリアンがいるそうです。大きいオーケストラでは何千もの楽譜の管理やボーイング(弦楽器の弓のアップダウン)の記入などをしています。他にも、ステージ・マネージャー、インスペクターなどが活躍されており、表からはみえない支えがあるからこそ、観客は素晴らしいコンサートを楽しめ、演奏者も演奏に没頭することができるのでしょう。
県立図書館には、たくさんの演奏会の情報や、約11万3千点もの視聴覚資料、小林研一郎のCDも所蔵しています。図書館は、実はオーケストラの楽器の共鳴のように、みなさんのドキドキ、ワクワクが響き合っていると日々感じます。
1冊の本から興味が広がり、本の世界から飛び出して、楽器を実際に触ってみたり、演奏会に出向いたり。より一層調べたくなり、また本に戻ってくる。このように図書館をフル活用していただけると、司書として嬉しいかぎりです。
『小林研一郎とオーケストラへ行こう 旬報社まんぼうシリーズ』 小林研一郎/著 旬報社 2006年
請求記号:764.3RR/182 資料コード:22005441 OPAC(所蔵検索)
(県立図書館:NO MUSIC,NO LIFE)
公開
私のオススメ本