2025年、日本が終戦を迎えてから80年となります。当館では、戦後80年という節目に合わせ、企画展示「戦後80年 戦時文庫と戦時下の図書館活動」を開催しています。
今回、「戦後80年」というテーマで展示の企画をするにあたって、当館ならではの展示をしたいと考え、特別コレクション「戦時文庫」を扱うことにしました。「戦時文庫」は、数奇な運命をたどって当館に所蔵されることとなった、戦前・戦時中に発行された図書などのコレクションです。「戦時文庫」の来歴は、神奈川県の図書館活動の歴史と深く関わっています。
「戦時文庫」は、第二次世界大戦中の「貸出文庫」の活動で用いられた資料から構成されています。この活動は、戦意高揚を目的として、国の主導で進められました。当時、県立図書館がなかった本県では、実際の運営を県立金沢文庫が担う形で「貸出文庫」を設置し、県民への貸出を行いました。
戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により、軍国主義的な図書の没収指令が通達され、金沢文庫においても軍国主義的図書の整理処分が始められました。このころ、金沢文庫の職員が、資料として後世に残すべきという考えから、須弥壇(仏像を安置する台座)の下に隠したと思われます。
須弥壇の下に隠された1,570冊の資料が発見されたのは、1969(昭和44)年のことです。その後、県立教育センター(現・県立総合教育センター)図書室の地下書庫での保管を経て、1979(昭和54)年に当館で一括して受け入れることが決定されました。こうして、当館の特別コレクション「戦時文庫」が誕生しました。
今回の展示では、「戦時文庫と神奈川の図書館活動」「戦時中の価値観を知る」「戦時中の子どもたちは何を読んでいたのか」「戦時中の女性の心得と教養」の4つのテーマのもと、「戦時文庫」の資料や関連資料をご紹介いたします。また、関連資料として、戦後の当館の自動車文庫の活動を映したニュース映画、『野越え山越え』(神奈川ニュース映協 制作 1960年)を上映します。当時の自動車文庫活動の様子や、現在再整備を行っている県立図書館本館(現・前川國男館)の姿が記録されています。
今回展示した「戦時文庫」の資料は、コレクションのうちごく一部です。現在、当館では図書館の再整備を行っており、収蔵館の改修工事に伴う資料移転のため、「戦時文庫」の資料は一時的にご利用いただけない状態ですが、令和8年度以降に再びご利用いただけるようになる予定です。
また、今回は、他館のデジタルアーカイブなどへのリンクのQRコードを各所に配置しています。この展示をきっかけに、学びを広げ、深めていただければ幸いです。
時を越えて資料を受け継いでいくことは、図書館の重要な役割の一つであると考えます。図書館活動の歴史を体現する「戦時文庫」の資料を、ぜひご覧いただければと思います。
※収蔵館改修工事後の資料の利用再開時期は、工事等の進捗により前後する場合があります。利用をご希望の方は、必ず事前にお問い合わせの上、ご来館ください。
展示案内はこちら(神奈川県立図書館HPリンク)
(県立図書館:展示担当)