手芸とひとくちにいっても、色鮮やかな刺繡の民族衣装やタペストリー、繊細に編まれたレースのアクセサリーやかご、ユニークな表情の指人形までその種類は様々です。本書では、その手仕事が生まれた文化や生活をひもときながら、世界の国々に伝え、つなげていく仕事をしている女性たちの活動が紹介されています。
一目見ただけでも作品の美しさに魅了されるのですが、さらにその背景を知ることで、芸術的でありながらも、日々の暮らしや生きることと直結している様子がわかり、その土地の良さも厳しさも受け止めて、一つ一つに作り手の思いが込められているのを感じることができます。効率や採算を求められる現代社会で、時間と手間をかけて丁寧に作られた手仕事と呼ばれるものに心惹かれるのは、その点が大きいのではないかと思います。
そして作り手も、それを世界に伝える活動をしている方も、自分の仕事に誇りをもっている姿が印象的です。きっかけは様々ですが、いいものに出会ったら感動を分かち合い、共有したい、それが行動する原動力にもなっているというのは、ほかの分野でも通じるところがあるかもしれません。好きな作家やアーティストを見つけたり、素敵なお店や美味しい料理に出会ったりすると、モチベーションが高まったり、力の源となってくれたりします。さらには誰かに伝えたくなったりすることもあるのではないでしょうか。魅力ある手仕事が途絶えないよう、伝える技術と共に、作り手側とのコミュニケーションを大切にし、お互いを尊重しあうことも欠かせません。
本書では手芸を通して様々な国の技術と文化に触れ、実際に現地に行くことは難しくても、タイトルの通り、旅をした気分を味わうこともできます。美しい色とりどりのモチーフを眺めていると、作り手のエネルギーも伝わってきます。本書で取り上げられているのは海外の手工芸ですが、日本にも全国各地にたくさんの伝統工芸があります。なかなか知る機会がなかったり、技術を継承する人がいなかったりするのが現状ですが、展示会やイベントで気軽に参加できるワークショップが開催されていたりもするので、興味を持たれた方は訪れてみてはいかがでしょう。
『世界手芸紀行 毛糸だま特別編集 アジア、アフリカ、ヨーロッパ、中米の手仕事をつなげる日本人女性たち HANDICRAFTS around the world 新装版』 日本ヴォーグ社 2023年
請求記号:594/107 資料コード:23488430 OPAC(所蔵検索)
(県立図書館:自家焙煎に憧れる)
『世界手芸紀行』 日本ヴォーグ社
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