この本は「科学がより身近に楽しくなる科学新書の決定版」(講談社ホームページより抜粋)として講談社から発行されている「ブルーバックス」シリーズの一冊です。音楽愛好家かつ文系で科学的知識には疎い私でも、楽器と音についての発展過程が分かりやすく説明されたこの本は、興味深く読み進めることができました。著者はフランス生まれのマリンバ奏者・作曲家のフランソワ・デュボワ氏で、1998年以来24年に渡り(本書発行時)日本に住んでいます。
第1楽章では楽器の種類について述べられています。学術的に世界共通といわれる4つの楽器分類法に、改良・工夫が施され、5つのカテゴリーから構成される「ホルンボステル=ザックス法」(HS法)が20世紀に定着します。このHS法が生まれるときに図書分類法である「デューイ十進分類法」が掛け合わされたそうです。我々日本の多くの図書館で採用している「日本十進分類法」はデューイの分類法を参考としているので思わぬところで共通点を発見しました。
第4楽章ではコンサートホールの音響について述べられていますが、特に「残響」についての話が印象に残りました。コンサートホールなどの室内空間では楽器など音の発生源(音源)を止めたあとも響きはすぐに消えず、残ったその響きを「残響」と呼びます。音源が停止してから音のエネルギーが100万分の1まで減衰する時間を「残響時間」といいます。
コンサートホール内の壁面ごとの吸音率と面積を掛けたものの総和を「総吸音力」といい、総吸音力が高いほど残響時間が短くなります。この総吸音力をいかに低くするかに音響技術者は注力することになります。私はコンサートに足を運ぶのが趣味ですが、ホールによって響きが違うと感じたことが度々ありました。一流の演奏家と最高のプログラムでも音があまり響かない、つまり残響時間が短いと思われるホールでは、第九のトライアングルの音が響かず、おもちゃのような音に聞こえてしまい残念だと感じたことがあります。逆にある教会での弦楽アンサンブルでは音がよく響いて、なんとも華やかで豊かな響きを楽しむことが出来ました。
普段、音楽を聴くときには意識しなかった「音」に関しては、科学的な裏付けがあり、歴史とともに基準音が定められ、それにより楽器や声楽の音域が安定しました。そして最高の響きを求める楽器を製作する職人、ホールを設計する音響技術者、たゆまぬ鍛錬を続ける奏者がいて、聴衆の我々が心地よく音楽を楽しむことが出来ることに改めて感心するのでした。
『楽器の科学 美しい音色を生み出す「構造」と「しくみ」』 フランソワ・デュボワ/著 木村彩/訳 講談社 2022年
資料コード:81772147 請求記号:424/49 OPAC(所蔵検索)
(県立川崎図書館:演奏鑑賞旅行に行きたい)
『楽器の科学 美しい音色を生み出す「構造」と「しくみ」』 フランソワ・デュボワ 著 木村彩 訳
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