神奈川県立の図書館

『キーボード配列QWERTYの謎』 安岡孝一+安岡素子/著

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『キーボード配列QWERTYの謎』安岡孝一+安岡素子/著

県立川崎図書館は「ものづくり技術」に特化した図書館で、館内中央の書架には「コンピュータ・情報・通信」分野の図書が並んでいます。このエリアは「コンピュータ・情報クラスタ」分類表を導入し、日本十進分類法では離れていた資料を調査や閲覧しやすいように配架しています。
技術書が多い中、私は『キーボード配列QWERTYの謎』という本が気になり、手に取ってみました。
本の背にあるラベルには「情B0」と書かれています。分類表を見ると、「部門B:コンピュータ・システム」、「区分0:コンピュータ・システム全般」に分けられ、キーワードには「コンピュータの仕組み、解説、歴史等」と書いてありました。つまりこれはキーボードの歴史について書かれた本です。


キーボードがどうして左上からQWERTY...の順番に配列されているのかご存知ですか?
本書i~iiiページの「まえがき」を読むと、「タイプライターのキーボードが QWERTYだったから、コンピュータのキーボードもそれをまねた」というのは「答の一部にしかすぎない」そうです。
では、タイプライターはどうしてこのような配列になったのでしょうか。著者は「タイピストのスピードが上がるにつれて、タイプライターの性能がついていけなくなり、印字をおこなうアーム同士が絡まるトラブルが増えていった。そこで、アームの衝突を防ぐために、タイピストがなるべく打ちにくいようなキー配列をデザインした」という説は誤りであると述べています。


では、本当の理由はなんでしょう。どうして誤った答えが流布されているのでしょうか。
これらの謎を明らかにするべく、本書は9つの章を通し、「タイプライターにおいて、QWERTY配列が成立するまでの歴史」、「タイプライター市場において、QWERTY配列が独占的な地位を得るまでの歴史」、「タイプライターを離れ、QWERTY配列がコンピュータのキーボードに採り入れられていく歴史」を辿ります。


第1章は、タイプライターを開発、製作したクリストファー・レイサム・ショールズの生い立ちから始まります。
彼は1819年、ペンシルバニア州生まれで新聞編集者をしていました。1859年に、サミュエル・ウィラード・ソレーが発明した「新聞に宛先を印字する機械」と出会ったことがきっかけとなり、ソレーとともに新聞に印字をする機械の開発を進めることになりました。その後、レイサムとソレーにカルロス・グリデンを加えた3名は、紆余曲折を経て「タイプ・ライター」を製作、レイサムの知人であるジェームズ・デンスモアの協力により、1868年に特許を取得しました。さらにデンスモアの奮闘により電信学校への売り込みが成功し、授業に採用されることになりました。
ここまで非常に順調な滑り出しと思われましたが、その結果は「惨憺たるものだった」そうです。


第2章では惨憺たるものだった「タイプ・ライター」の改良、そしていよいよQWERTY配列の誕生について書かれています。元々アルファベット順に並んでいたタイプライターのキーが、どのような変遷を辿りながらQWERTYの順になり、そしてキーボードの配列へ定着し、日本に渡ってきたのでしょうか。以降の章も必見です。


本書は495件の参考文献を基に1840年代から1980年代の約140年にわたるキーボードの歴史を詳細に掘り下げています。また、124点の豊富な引用図版によって農機具会社が作成した1870年代の「当時のミシンにかなり似ている」タイプライターの試作機や、現在使用されているキーボード配列の日本とアメリカの微妙な違いなどもその目で楽しむことができます。
キーボード配列にご興味のある方は、手に取ってみてはいかがでしょうか。


『キーボード配列QWERTYの謎』 安岡孝一+安岡素子/著 NTT出版 2008年
資料コード:81293045 請求記号:情B0/548.21/6 OPAC(所蔵検索)


(県立川崎図書館:本の海を泳ぐクジラ)