神奈川県立の図書館

『世界の図書館を巡る 進化する英知の神殿』gestalten編

公開

『世界の図書館を巡る 進化する英知の神殿』書影

偶然手にした本が印象深く、大切な一冊となった経験はありませんか。

日頃から海外の図書館やブックホテルの美しい写真を、ガイドブックのように楽しんでいます。

ある時見つけた本書には、知らなかった多くの図書館が世界中から選りすぐられていて、次はどんな興味深い図書館に出会えるのだろうとわくわくしながら読み進めました。それは新たな発見や知らなかった世界へと誘われたからに違いありません。写真に驚きその美しさにため息をついてしまう、ほかの誰かに伝えたくなるようなこの本をご紹介します。

本書を開くとまずそれぞれの図書館建築に圧倒されます。細部にわたるデザインや、歴史・環境に見合った貴重な図書を未来にどう受け継ぐべきかという努力がしのばれ、創意工夫に富んだ管理方法はとてもおおらかでユニークです。

ポルトガルのジョアニナ図書館は、輝く装飾とフレスコ画の天井が芸術作品のような建築ですが、夜になるとこうもりが飛び交い、紙を食べる虫を捕食し貴重な蔵書保護に貢献しています。

モーリタニア共和国シンゲッティ図書館群の日干し煉瓦積み建築(世界遺産)は、紀元前からその形を変えずに環境に合った資料保存努力を今日まで続け、気候変動の脅威から1300点超の写本(羊皮紙の古書)を守っています。

本書は、図書館がそこに集う人々やコミュニティとの向き合いかたの要となることも教えてくれます。

ブルンジ共和国ムインガの図書館は、インクルーシブスクール(視聴覚障がい)の為の図書館として、巨大ハンモックや階段フロアで自由に楽しむ交流・文化伝承の場になっています。図書館の成り立ちや歴史をたどれば、創設の意義から当時の人々の思いが伝わり、「知識」の力を為政者がいかに恐れ大切にしていたのかよく分かります。

ジ・アンセンサード・ライブラリー(検閲なき図書館)は、世界最大級のコンピューターゲーム「マインクラフト」内に作られた情報規制と戦うバーチャル図書館(デジタルライブラリー)です。

「独立した情報へのアクセス」と「自由な情報の発信」を掲げ、安全なサーバー上に存在しており、世界中どこからでもアクセスできます。検閲で閲覧不可となった記事が集められ、各エリアのデザインは真の情報に辿り着く難しさを、迷路や鉄格子・怪物を使ってシニカルに表現しています。

本書に登場する図書館は、過去から積み重ねた情報を広く未来に残す方法を考え、現在の技術を最大限に使い、どうすれば時間や地域に関係なくアクセスできるのかを模索しています。

はるか昔の希少な資料から、未来につながる想像力の種にまで手が届く情報を保存しているのです。

また、各図書館の取り組みこそ未来の国力につながるという信念が具体化されていると感じました。

私も本書を通じて各国の印象が一変し、図書館の独自性に新たな可能性も感じました。

図書館というワンダーランドを知る最適な一冊です。

『世界の図書館を巡る 進化する英知の神殿』 gestalten編 マール社 2023年

資料コード:23490352 請求記号:010.2 120 OPAC(所蔵検索)

(県立図書館:未知との遭遇)