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Wikipediaブンガク イベント会場の様子

みなさんは、普段「ウィキペディア」を使っていますか?ウィキペディアは、誰もが使えるインターネット上の百科事典です。ウィキペディアの記事の執筆・作成は、世界中のボランティアの共同作業によって行われています。

県立図書館では、4月14日(日曜日)に共催イベント「Wikipediaブンガク11 橋本治」を開催しました。「図書館とウィキペディアに、どんな関係が?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

ウィキペディアの記事を編集するにあたっては、「中立的な観点」、「検証可能性」、「独自研究は載せない」の3点が内容に関する最も重要な方針として掲げられています。こうした方針に基づく記事を執筆するためには、図書や雑誌などの複数の資料を参照することが必要です。

そこで役に立つのが、豊富な資料を有する図書館です。図書館の資料を活用することにより、信頼性の高い記事を執筆し、世界に発信することができます。

今回のイベントは、県立神奈川近代文学館で開催中の特別展「帰って来た橋本治展」に合わせて、小説家・橋本治(1948-2019)に関する記事を執筆し、ウィキペディア上の情報を充実させることを目的として行われました。

橋本治は、1977年に小説『桃尻娘』でデビューしてから、様々なジャンルの小説、エッセイ、評論などの多彩な執筆活動を行い、膨大な著作を残しました。イベントの参加者は、学芸員によるギャラリートークを聞いてから特別展を観覧したあと、県立図書館に移動し、ウィキペディアに関するレクチャーを受け、記事の執筆作業に入りました。

執筆に活用できそうな図書館資料は、私たち司書の職員があらかじめ準備しておきます。著作はもちろんのこと、橋本治が解説を担当した資料や、橋本治について書かれた資料なども集め、その数は200点近くになりました。幅広い分野で活躍した橋本治らしく、当館で所蔵しているのも小説だけではなく、イラストや編み物に関するもの、古典文学の翻訳、社会を論じたエッセイなど、多岐にわたっています。

また、関連資料の中に、雑誌のバックナンバーや、当館が収集する「男女共同参画関連資料」が含まれることも特徴的で、当館のユニークな資料を数多くご紹介することができました。

当日は、ウィキペディア上の「橋本治」、「徒然草」、「源氏供養」などの記事に加筆がなされました。ウィキペディアには、橋本治の業績の中でも、特別展で大きく扱われていたイラストや編み物、古典の翻訳に関する記述があまり見られませんでした。イベントの中で、これらについて図書館の資料を使って調べ、信頼性の高い情報を追加できたのは、大きな成果でした。また、和やかな雰囲気の中で参加者同士の交流が活発に行われ、会話の中から執筆のヒントを得るような場面もありました。

図書館の資料を活用してウィキペディアの記事を執筆し、発信する参加者のみなさんの姿は、県立図書館の本館が掲げる「価値を創造する図書館」という理念を体現しているように感じました。

県立図書館には多種多様な資料がありますので、ウィキペディアに限らず、自分で何か書いてみようかな、と思ったときには、ぜひご活用ください!

(県立図書館 「Wikipediaブンガク」担当)

Wikipediaブンガク 会場に用意された関連資料

関連するウェブページ

神奈川近代文学館 「特別展「帰って来た橋本治展」」(外部リンク)

司書の出番「「Wikipediaブンガク松本清張」開催しました」

山本 真帆「神奈川県立図書館でのウィキペディア編集イベントの開催報告」
『神奈川県立図書館紀要 第14号』神奈川県立図書館編 2020 p.19-40)(PDF)