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荷物がすべて運び出された旧事務室

昨年12月、県立図書館の収蔵館に仮囲いがかけられました。これからいよいよ収蔵館の改修工事が本格化します。

収蔵館の改修工事は、施設・設備の老朽化や、資料の収蔵スペース不足などの課題に対応するために、今年度(令和5年度)から令和6年度にかけて行われます。工事に先駆けては収蔵館の中身を空っぽにする必要がありますので、昨年の夏に、建物内のありとあらゆるモノとヒトの引越しが敢行されました。その一端をご紹介します。

左の写真:空になった収蔵館事務室

収蔵館の改修に向けた検討や準備は、令和4年9月の本館開館の準備と並行して進められました。検討の柱は大きく2つ、「所蔵資料の引越し」と「事務室の移転」です。

昭和47年に開館した収蔵館(当時は文化資料館として開館)には、地上4階・地下3階の各フロアの書架に、約70年かけて収集された資料が所狭しと並んでいました。一口に「資料」と言っても、いわゆる「本」の形態のものだけではなく、一枚ものの地図や絵図、軸物、製本していない新聞の原紙、CDやレコード等の視聴覚資料など、その形態や大きさは多岐にわたります。改修工事の期間中、一部の資料は隣接する前川國男館に移動させますが、前川國男館の収納スペースにも限りがありますので、多くの資料は外部書庫に預けることになります。

何を手元(前川國男館)に残して、何を外部書庫に預けるか。利用者の皆様のご不便を最小限に抑えることを優先しつつ、資料の内容や形態、前川國男館の収容能力等の様々な観点から、引越し後の資料の配置を検討しました。その結果、当館で利用が多い分類の図書をはじめとして、CDやレコード、一部の雑誌を前川國男館に配架し、その他の資料を外部書庫に移動させることになりました。

なお、外部書庫に預け入れた資料のうち、取寄せによりご利用可能な資料も多くありますので、詳しくは図書館ホームページの案内等をご覧ください。

資料の引越し作業そのもの(梱包作業や運搬作業等)は、業者に委託して行われました。しかし、そこに至るまでのあらゆる準備作業は、我々図書館職員の手で行います。資料を内容や形態ごとに細かくカテゴリ化した上で、それぞれがどのぐらいの量で、書架長(書架に配架した際の長さ)はどれぐらいなのか、移動に際して配慮するべき点はあるのか...などを細かく記録していきました。こうした調査によって得られる情報は、今回の引越しのために用意する箱のサイズや量、スケジュール等を決定するために必要なものですが、さらに収蔵館の改修後に、今回移動させた資料を収蔵館の書架に再配架する際にも重要なデータとなります。

巻き尺を持って何度も書架に足を運び、確認作業を行いました。

実際に資料の移動作業が始まったのは、6月下旬です。業者の方々の手によって次々に資料が梱包され、まずは館内に設けられた集積場所に集められます。その後、建物の入口前に横付けされたトラックにどんどん箱が積み込まれ、外部書庫に旅立っていきました。その数は実に26,000箱近くに上ります。前川國男館には、収蔵館で空になった書架の一部が移設され、少しの空きスペースも無駄にせず、収蔵館から移動させる資料が次々に収められていきました。

収蔵館の資料がすべて搬出されると、書庫には空になった書架だけが残されました。こんな光景を見る日が来るとは...と、しみじみしたものです。

しかし感慨に浸る暇もなく、次は事務室の移転日が迫ります。収蔵館内の大きな事務室では、多くの職員が執務を行っていました。その事務室を引き払い、前川國男館内に設ける仮事務室に移動します。資料の引越し作業が続くなか、文書類や事務用品等の片付けと梱包作業が急ピッチで進められました。

空になった書架

9月上旬の事務室移転当日。前川國男館の、元は利用者の皆様に閲覧室としてご利用いただいていた吹抜け空間には、書架の間を縫うようにして事務机や家具が運び込まれ、仮の事務室として仕立てられました。前川國男氏が現在の様子をご覧になったら、開館当時とのあまりの違いに、とても驚かれることでしょう。

一連の移転・引越し作業は、ひとまずは9月いっぱいで一段落しました。しかし、県立図書館の再整備はまだしばらくの間続きます。収蔵館の改修工事が終わると、次は前川國男館の改修工事が始まります。

既に館内では、収蔵館の改修工事終了後の再度の引っ越しに向けた準備や、前川國男館のレイアウト等についての具体的な検討を進めています。再整備がすべて終了するまでは、工事に伴う資料の移動で、その都度ご利用いただけない資料や期間が生じてしまいます。

利用者の皆様には大変ご迷惑をおかけいたしますが、新たな魅力を備えた図書館としてグランドオープンする日まで、お待ちいただければ幸いです。

(県立図書館:資料部職員)