2024年1月26日(金曜日)、第5回「after5ゼミ」が開催されました。
今回は、ピープルツリー/グローバル・ヴィレッジ創設メンバーである村田薫さんに「"フェア"な暮らしが世界を変える」と題してお話いただきました。ピープルツリー広報担当の鈴木啓美さんにも加わっていただき、ファシリテーターの伊藤さんとの対話や、ゼミ生との意見交換を交えて進行しました。
(写真左から鈴木啓美さん、村田薫さん、伊藤達矢さん)
ピープルツリーのはじまり
村田さんは専門学校を卒業後、リフォーム会社勤務を経てロンドンに暮らし、環境や人権問題の解決に誰もが参加できる市民運動やフェアトレード、チャリティの精神など新たな文化に触発されました。
日本に戻り設計事務所で働いている時に、サフィア・ミニーさん※と出会います。
この出会いがきっかけとなり、環境汚染や貧困問題の現状を変えたいと考える仲間たちと創立したのがピープルツリーの母体NGOである「グローバル・ヴィレッジ」です。
※サフィア・ミニーさんは、のちのピープルツリー代表です。
1991年創立時の規約には「貧しい人や弱い立場の人々、世界の資源の地位や価値をおとしめ、搾取する社会構造、経済システムを問い、持続可能な発展を目指し、代替的なライフスタイルを提案、促進する。」という文言がありました。30年以上前から"持続可能"を目標に掲げていたことが分かります。
創立当時のエピソードに併せて、ボランティアメンバーと勉強会を開催している写真や、発行したニュースレターなどが紹介されました。
最初からフェアトレード事業を目指していた訳ではなかったといいます。同じ方向を向いた仲間たちと環境問題について発信し、周りの要望に応えているうちに思いがけない大きなムーブメントとなり、1995年にフェアトレード事業部門を独立させたピープルツリーが誕生しました。現在、村田さんは一線を退きアドバイザーとして事業に関わっています。
フェアトレードとピープルツリー
フェアトレードとは、貧困問題と環境問題をビジネスの中で解決しようという取り組みです。経済的・社会的に不利な立場にある人々に、能力を活かせる仕事と収入を得る機会をつくり自立を図ります。
ピープルツリーでは現在、世界18ヵ国、約145の生産者グループとパートナーシップを組んで貿易を行うほか、「フェアトレード10の指針」を掲げフェアトレードを広める活動を行っているそうです。
ロングセラーのチョコレートや手仕事のアイテムが投影されると会場から歓声があがりました。村田さんと鈴木さんが着用していた手編みのニットもピープルツリーの製品とのことで、その可愛らしさにもゼミ生のテンションが一気にあがりました。村田さんが10年着用しているというこのニットのように、長く大切に使うことも環境負荷を軽くする一歩だといいます。
作り手の暮らしとストーリーが見える製品を送り出すことで多くの人の自立を支え、いつか「フェアトレード」という言葉が必要ないくらいに全ての取引がフェアになり、清々しい関係が続くことが目標であると強調されました。
ラナプラザ崩落事故とその後
世界中で環境や人権問題に対する意識が大きく変化した「ラナプラザ崩落事故」についてもお話がありました。2013年、バングラデシュにあるビル、ラナプラザが安全管理のずさんさから崩落し、働いていた女性など1,100名以上が死亡、2,500人以上の負傷者が確認されました。このビルには「ファスト・ファッション」と言われる低価格の衣料品を手がける縫製工場が数多く入り、低賃金かつ劣悪な環境で労働者を働かせていました。
この事故にショックを受けたドキュメンタリー番組の監督アンドリュー・モーガンは『ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償』という映画を製作します。ピープルツリーが取材協力として参加したこの映画は、ファッションという身近な問題から変革を起こす重要性が提起され、人々の消費意識に変化を起こしました。
村田さんは「満足できる世界にしていくことは簡単ではありません。毎日少しずつ出来ることを積み上げ、仲間との時間を大切にしながら共に幸せになることが大切です。」と、無理なく継続することの大切さを繰り返し言及されました。
最後に、マーガレット・ミード(1901 - 1978 文化人類学者)の言葉が紹介されました。
「思慮深い 献身的な 市民の小さなグループが世界を変えられることを けっして疑ってはいけない。じっさい それが世界を変えてきた 唯一の方法なのだから。」
おふたりの話のあと、ゼミ生同士で率直な意見を交わしてもらい、質問や意見を伺う時間を設けました。
【フェアトレードの活動がなぜ一般的な企業に浸透していかないのか。なぜ対等に商品を買える世界にならないのか知りたいです。】
村田さん「目指しているのはまさにそこです。当社の前に大手コーヒーショップがあり、毎日スタッフが『フェアトレードコーヒーは置かないんですか?』と言い続けたら毎月20日がフェアトレードコーヒーの日になりました。少しずつですが変えることはできます。その日に変化が起こらなくても落ち込む必要はありません。」
その他にも、ゼミ生から「フェアトレードの商品やカタログを職場にさり気なく置いておくと、必ず見てくれる人がいます」という実践に基づいた提案が出るなど、時間が足りないほど話が広がっていきました。
第2期after5ゼミは終了いたしましたが、ご登壇いただいた講師の皆様、ファシリテーターの伊藤さん、ゼミ生の皆様のお力で、今期も有意義な時間を共有することができました。改めて御礼申し上げます。
ピープルツリー関連書籍
『NAKED FASHION ファッションで世界を変える おしゃれなエコのハローワーク』
サフィア・ミニー 著 サンクチュアリ出版 2012年
資料コード:23467889 請求記号:589.2/221 OPAC(所蔵検索)
(県立図書館:イベント担当)