公開

2023年12月16日から2024年5月8日まで、企画展示「こんな本、見たことある?」を開催しています。

以前は「お宝紹介」など書庫の中を案内するツアーが人気で、その中で変わった装丁の本の紹介などもしていましたが、コロナ禍でイベントを行わなかった期間などもあり、書庫内の本を紹介する機会が減っていました。

その後、一昨年に新しい本館が開館したことにより、広くて明るい展示スペース(ギャラリー)ができたことから、このたび当館で所蔵する装丁に特徴のある本を展示することになりました。

本展示では、3つのテーマから資料を紹介しています。

1.変わった素材の装丁

入り口を入ってすぐ目の前の展示ケースに、『俳諧深川集(はいかいふかがわしゅう)』があります。

これは、裏付ける資料はありませんが、装丁家の斎藤昌三(さいとうしょうぞう)の『書物の美』の中で紹介されている、貝を漉き込んだ和紙を使用した本と思われます。

表紙をよく見ますと、細かい貝の破片がちりばめられておりキラキラ輝いて見えます。展示ケースの下の方からのぞくように見上げますと、より一層輝きをご覧いただけます。

俳諧深川集

その隣の展示ケースには、蛇皮で装丁された『欽定楽譜野村風工工四(きんていがくふのむらふうくんくんしー)』があります。

工工四とは三線の楽譜であり、本に使われている蛇皮の種類はアミメニシキヘビです。蛇皮の同定には、神奈川県立生命の星・地球博物館の学芸員に協力していただきました。

本を開くと中はどうなっているのか、また三線とは何なのか、といった疑問にお答えするために、楽譜や三線の写真を用意しました。

さらに三線の音を聴いていただくために、島唄で有名なミュージシャン宮沢和史監修のCD『唄方~うたかた』を、閲覧スペースに響かない程度に音量を絞って流しています。

楽譜や三線
そのほかの展示ケースには、インスタントラーメンのパッケージを模した装丁の本や、開くと書見台になる本があり、また、アルミが縫い付けられている本や、黒や赤の漆をダンボールに塗って表紙にしている本、ベルリンの壁の破片が付いたCDなどがあります。

ダンス元年など

2.斎藤昌三のゲテ本

番傘やタケノコの皮、ミノムシを使った本3冊と、その他さまざまな「ゲテ本」と呼ばれている本10冊を展示しています。

斎藤昌三は明治20(1887)年座間に生まれ、茅ケ崎に住んだ編集者、随筆家、装丁家です。

当館の草創期の整理課長、沓掛伊佐吉(くつかけいさきち)と交流があり、その縁で収集した資料が多く収蔵されています。

「ゲテ本」とは斎藤が担当した異質な装丁の本を指します。この言葉は、番傘の油紙で装丁した斎藤の著書『書痴の散歩』を前に、民俗学者の柳田國男が「ゲテモノ趣味もここまで来ては頂上だ」と評したことに由来します。

三線のチカラ

3.装丁に関する本


ブックデザイン関係の本を10冊、白い台の上に並べて自由に手に取って利用できるようにしています。2段になっている書架の上段には装丁家の本を集め、下段には斎藤昌三関連の本を並べました。

沖縄県立博物館・美術館の特別展図録『三線のチカラ』は、三線についてとても分かりやすく書かれています。

その隣に『毒をもつ生きものたち』という飛び出す絵本を飾っています。三線の蛇つながりと洒落て、蛇が首をもたげているページを開いて置いてあるのですが、よく利用されているのか、蛇ではないページが開かれていることもあります。飛び出す絵本は貸出しできませんが、請求記号ラベルが青色の本は展示期間中も貸出しできます。

本展示では、ただ珍しい本を紹介するだけではなく、その本がなぜこのような装丁になったのか、当時の人々はどう思っていたのか、ということにも着目しキャプションや説明の準備をしていました。正直なところ不明な点も多いと感じました。こうした本が作られた詳しい事情をご存じの方、あるいはこの展示をご覧になって興味や疑問を抱き、調べたところ新たな知見が得られたといった方がいらっしゃいましたら、情報をお寄せいただければ幸いです。

こんな本、見たことある?見たことない!県立図書館が所蔵する資料の貴重さと面白さをどうぞご堪能ください。

(県立図書館:展示担当)

展示期間 令和5年12月16日(土曜日)から令和6年5月8日(水曜日)まで

ただし月曜日(祝休日は開館)、第2木曜日(令和6年1月11日、2月8日、3月14日、4月11日)、年末年始、資料総点検期間は休館

開館時間 9時00分から19時00分まで ただし土曜日・日曜日・祝休日は17時00分まで

会場 県立図書館本館1階 ギャラリー(入場無料)