令和5年11月3日(金)、子ども読書活動推進フォーラムを開催しました。
このフォーラムは、読書の大切さについて理解を深め、県内の優れた読書推進の取り組みを知っていただくことを目的として、平成16年度より開催しています。
一昨年度から、主な対象を中学生~大学生とし、司書教諭、学校司書、子どもの読書活動に関心のある方などにもご参加頂いています。
今年は、文字・活字文化への関心と理解を深めることを目的とした「文字・活字文化の日」の記念講演会を兼ねた開催となりました。
第1部では、令和4年度子供の読書活動優秀実践校文部科学大臣表彰を受賞された、相模女子大学中学部・高等部図書委員会の事例発表が行われました。
当日は文化祭と日程が重なり、会場にお越し頂くことはできませんでしたが、事前に作成して頂いた活動紹介動画を上映しました。
動画では、学級文庫、ブックトーク、廊下を使った校内展示など、読書になじみのない生徒も、自然と本に出会えるような取組が紹介されていました。
また、近隣の学校や公共図書館と連携してイベントを実施したり、読み聞かせボランティアを講師に招いて園児に読み聞かせを行うなど、学外の方とも関わりながら、楽しく活動している様子が伝わってきました。
第2部は、児童文学研究家・翻訳家の金原瑞人先生を講師として、「翻訳の言葉、言葉の翻訳」と題した講演が行われました。
金原先生は、1980年代よりヤングアダルト部門に着目して翻訳を始められ、今までに翻訳された作品は600冊を超えています。
講演の冒頭では、ヤングアダルト世代に向けて翻訳家になった経緯をお話しになり、早くに進路を決めなくとも色々な道がある、というメッセージをお送りくださいました。
その後、「翻訳」とはどのようなものかお話いただきました。「翻訳物」は、その当時の「現代語」が使われていることから、すぐに「言葉が古くなる」とのこと。例として、明治時代に翻訳された『不思議の国のアリス』のタイトルが、『愛ちゃんの夢物語』であったことが紹介されると、会場から笑いがおきました。
また、「吾輩は猫である」が英語では「I am a cat」以外に訳せないことや、英語の「I」に対する日本語が100種類以上あることなど、言語の違いがもたらす翻訳の難しさをご紹介頂きました。
講演の最後には、言語によって様々な違いがある中、翻訳を通して原作の面白さが伝わるのか、というお話がありました。書評を見ると、原作を読んだ外国の読者と、翻訳作品を読んだ日本の読者の感想は似ており、「面白い」ものは「面白い」と伝わっているとのことです。
言語の違いや制約を乗り越え、原作の持つ魅力を伝えていく「翻訳」の奥深さを感じる講演となりました。
金原先生の著作一覧はこちら
今年は、会場とオンライン(Zoom)合わせて100名以上の方にご参加いただき、盛況のうちにフォーラムを無事終えることができました。
相模女子大学中学部・高等部のみなさん、金原先生、ご協力頂いた関係者の方々、ありがとうございました。
(県立図書館:令和5年度子ども読書活動推進フォーラム担当)