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本館学び⇔交流エリア

神奈川県立図書館の新本館が開館したのは昨年の9月1日。厳しい暑さのなか、開館時刻の午後1時を前に、予想していた以上に多くの方々が、入口付近に集まっていた様子を思い出します。そして1年たった今も、早くから列に並んで開館を待っていただく。そんな日々が続いています。

ここで当館の歩みをごく短くまとめると、県立図書館としてはじめに開館(旧本館、現・前川國男館)したのは、遡ること69年前の昭和29(1954)年。その隣に旧新館(設置時は文化資料館、現・収蔵館)を建築したのが昭和47(1972)年。これまで蔵書が増えるに従い書架も増設し、閲覧室のレイアウト変更なども繰り返してきました。しかしながら施設の老朽化、狭隘化への対応に、一時しのぎの対策では限りがあり、また近年は、情報をめぐる環境の変化、生涯学習への関心の高まりといった状況も生まれてきています。そこで、こうした現状に対応するため、平成28(2016)年に、目指すべき県立図書館像として、これまでの「専門的」「広域的」図書館の機能に、「価値を創造する」「魅せる」機能を付加する再整備の考え方をまとめました。その方向性に沿って、令和4(2022)年に、まずは新本館を建設し、現在休館中の収蔵館、前川國男館は令和8(2026)年にかけて改修する予定となっています。

さて、新本館の閲覧スペースは、旧本館(現・前川館)、旧新館(現・収蔵館)の時と比べ、その雰囲気や機能が大きく変わっています。読書、学習、研究それぞれの目的に、より適った環境となるように、個室やラウンジ風のソファ、ロングテーブル席など様々な閲覧席を設けています。来館されている方々についていえば、若い世代の増加と、いわゆる自習のための席利用が目立っていることです。学生のころ勉強のためによく利用したという声は、旧館を知る年配の方からしばしば聞くことがあります。やはり図書館には、何よりも自己学習の場が求められているということなのかもしれません。

とはいえ、人生の一時期、特定の目的といった限られた期間や理由ではなく、生涯において学ぶという少し広がりのある見方をすると、学びのあり方は多様な形態があり得るし、そのプロセスも決まった形である必要はなさそうです。そこで自己学習ではなく、"ともに学ぶ"場として4階に「学び⇔交流エリア」を設けました。Lib活(リブカツ)という参加型のイベントもそのスペースで実施しています。

そして、何よりも図書館には本が置いてあるのですから、ぜひとも書架をみていただきたいと思っています。絶えず新たな知見が加わる棚、時の流れが止まったかのような全集の棚、表紙を見せて自己主張する棚、テーマやコメントが添えられ本が手に取られる機会を待っている棚など、書架に置かれた本のまとまりには、それぞれ特徴があります。庭づくりではありませんが、何らかの手が加わっており、そこは来館される方と図書館の静かな出会いの場所でもあります。

新本館を開館して1年。居心地のよい空間づくりや、展示、イベントなどでは新たな企画に取り組んできました。しかしその試みは途上にあって、前川館の改修を終え、当館の再整備が完了するのはまだまだ先です。

その時まで飽きられることなく、さらなる先まで長くご利用いただける図書館となるよう、魅力を高めていきたいと考えています。

(県立図書館:企画サービス部長 森谷芳浩)