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シャーロック・ホームズの建築書影

小学生の頃から、シャーロック・ホームズが好きでした。どんなきっかけで手に取ったのかは覚えていません。

でも『赤毛連盟』『まだらの紐』など、それぞれの事件によってコミカルだったり怖かったり、何より本から感じられるホームズとワトソンの世界が大好きになりました。一つの事件が解決すると2人でオペラを観に行ったり、バイオリンを聴きに行ったり。2人の住むベイカー街221Bの下宿や事件の度に訪れる家の描写も細かく書かれていて、イギリスとは遠く離れたアジアの国に住む小学生の私には本から2人の世界を想像するしかありませんでした。

長編から短編まで全て読み、いつかベイカー街に行ってみたいと思う様になりました。

ホームズの19世紀とは時代が違っても、イギリスという国に行って空気を感じたいと思ったのです。

数年後、その願いは叶いました。ベイカー街はとても広く大きな通りで近代的なビルが立ち並んでいましたが、それでも名探偵ホームズとワトソン博士の時代から残っているのではと思うような家も数多くありました。

2人の住む下宿の部屋を忠実に再現した部屋の有るパブにも、もちろん行きました。私の想像とはかけ離れた素敵な部屋で、読むだけではわからなかった空気を感じることができ、本当に来られて良かったと思いました。

あれから数十年が経ち、ホームズの物語に登場する建築物を美しくイラストに再現した本書に出会いました。
原作に忠実と言われるイギリスのグラナダTV制作のドラマでもわからなかった部屋の詳細な間取りまでわかります。

アーサー・コナン・ドイルが小説に書いたバスカヴィル館、アビィ屋敷などの建物を、細かく図面で再現しているのです。
現代からホームズとワトソンの19世紀の世界へ一瞬で引き戻されるようです。

私のようなシャーロック・ホームズのファンでなくても、19世紀のイギリスの建物に興味がある方には楽しい本ではないかと思います。

本書に描かれた100年以上も前の建物を眺めながら、当時に生きたイギリスの人々の暮らしを想像しその世界を旅するひとときを過ごすのも良いかもしれません。

『シャーロック・ホームズの建築』 北原尚彦 文 村山隆司 絵・図
エクスナレッジ 2022年 資料コード:23340383 請求記号:930.26/288 OPAC(所蔵検索)

(県立図書館:ホームズファン)