「水兵リーベ僕の船、七曲りシップスクラークか」。
元素の周期表を、この語呂合わせで覚えた方も多いのではないでしょうか。
この語呂合わせで覚えられる元素は水素からカルシウムまでの20個に過ぎませんが、現状、118個の元素が発見されています。
本書では、アジア初・日本発の新元素ニホニウム発見のドラマを主軸に、古代から現代にわたる元素発見の道のりを興味深くたどることができます。
古代ギリシャでは、元素は水、空気、火、土の四種類のみという四元素説が唱えられ、銅や鉄などの卑金属から貴金属の金を生み出そうとする錬金術が試みられていました。卑金属を金に変え、人間を不老不死にする賢者の石を追い求める人々。漫画『鋼の錬金術師』を思い浮かべてしまいます。『鋼の錬金術師』の英題はFullmetal Alchemist(フルメタルアルケミスト)ですが、錬金術の英語alchemy(アルケミー)から化学の英語chemistry(ケミストリー)が派生してできたという事実に心躍らされます。
ところで、ニホニウム以外にも国名に由来した名前の元素があるのをご存知でしょうか。
例えば、ポロニウムはマリー・キュリーが祖国ポーランドにちなんで命名し、フランシウムはマルグリット・ペレーが祖国フランスにちなんで命名しました。ニホニウムに続く日本発の新元素にどのような名前が付けられるのか、今から楽しみではありませんか。
2017年3月、ニホニウム命名記念式典で皇太子殿下(現天皇陛下)は
「高校二年生の時の化学の夏休みの宿題は元素の周期表を三〇枚以上手書きで書くというものでした」とお言葉を述べられたそうです。
化学者の元素発見への情熱は、元素の周期表を今後さらに長くしていき、化学の宿題を仕上げる時間がどんどん伸びてしまうのかもしれません。
『新元素ニホニウムはいかにして創られたか』 羽場宏光 著
東京化学同人 資料コード: 81765851 請求記号: 431.11/49 OPAC(所蔵検索)
(県立川崎図書館:Y.S)