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青いガーネットの秘密書影
2021年末、63年ぶりに誕生石が新たに追加されたのはご存じですか?

さてさてどんな宝石が仲間入りしたのかと調べてみると、アイオライト、スフェーン、アレキサンドライトなど10種類が増えていて、ほとんどの月が数種類の宝石から選べるようになりました。

そんな中増えず変わらず、たった一つの宝石のままの月があるのです...。

それは1月、誕生石はガーネットです。

今回は1冊まるまるガーネットの魅力に迫ったこちらの本『青いガーネットの秘密』をご紹介いたします。


この本のタイトルにもある「青いガーネット」は『シャーロック・ホームズの冒険』の短編の一つ、「The Blue Carbuncle(ザ・ブルー・カーバンクル)」の日本語訳です。

物語では、カギとなる宝石のカーバンクルが「目のさめるようなブルーの石」として描かれています。

しかし本来カーバンクルとは、燃えるように赤く光る美しい石、古くはガーネットを表す言葉なのです。

ガーネットは和名で「柘榴石(ざくろいし)」として親しまれており、鉱物学ではガーネットに青い色のものはないというのが常識だそうです。


小説の中で起きた事件はホームズの華麗なる推理により解決されたものの、著者の心の中には一つの謎が残りました。

「しかしこれでいいのだろうか?何だか府に落ちなくはないだろうか?なぜなら、話の鍵になる青い宝石の素性が知れないから。」(p13 5-6行目 本文まま)

この謎を紐解くべく、地球科学のあらゆる観点から切り込んでいくこととなるのです。


そもそもガーネットとはどのような石なのか、鉱物はどのようにして出来上がるのか、鉱物はなぜ色づくのか、産地から青いガーネットの正体はわかるのか、青いガーネットを人工的に作り出すことはできるのか。

各章には専門的な知識がぎゅっと詰め込まれています。時折難しく感じる部分もありますが、根っからの文系でも楽しみながら読めてしまうのがこの本の素敵なところです。合間のカラーページには図鑑さながらに鉱物や宝石の美しい写真がたくさん載っていて、眺めるだけでもワクワクします。


この本を読み終える頃には、きっとガーネットの魅力に気付いていただけるのではないでしょうか。

1月の誕生石がたった一つであることにも納得できるかも、しれません。

そしてきっと博物館などで宝石や鉱物を見ることがもっともっと面白くなっているのではないかと思います。

青いガーネットの正体やいかに。是非この本を手に取って世紀の謎解きをお楽しみください。


『青いガーネットの秘密』 奥山康子著 誠文堂新光社 2007

資料コード:81273633 請求記号:459.7/5 OPAC(所蔵検索)


(県立川崎図書館:「耳をすませば」の宝石に魅せられた石好き)