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47都道府県女ひとりで行ってみよう 書影

ひとり旅をしたことがありますか?

本書は、「日本には47都道府県もあるのに、行ったことがない場所があるというのはもったいない」との思いから、全国をひとりで旅した益田ミリさんのエッセイです。都道府県別の47章からなり、各章の最後に旅で使ったお金の明細が10円単位で明記されているので、具体的に旅を想像することができます。ひとり旅に出る人は好奇心旺盛で、何事にも動じないアグレッシブな性格の人というイメージがありましたが、どうも違うようです。


最初の旅先である青森県で、「誰ともわかちあえないのは淋しい」と感想を記していますが、4番目の茨城県では、出発前から「はっきりいって、もう飽きている」ともらしています。

そして、終始「ひとり旅の女が淋しく見えないようにするにはどうすればいいのだろう?」と、自問自答しているのです。

また福岡県では、屋台のある中洲に行ってみるのですが、初対面の人やお店の人とおしゃべりすると思っただけで億劫で、足がすくんでのれんをくぐることができないのです。

「旅では名物を食べるべき」という固定概念がストレスだと気が付いた著者は、無理に好きでないものを食べるのはやめて、お惣菜を買って宿で食べるというスタイルになっていきます。

たしかに、私自身も無理して名物を食べていました。その呪縛から逃れると、旅が気軽になるような気がします。


そんな著者も、旅先で様々な体験をしています。

佐賀県の「唐津くんち」は、和紙でできた大きな兜や獅子の山車を曳(ひ)き回すお祭りです。夜はそれぞれに明かりが灯りとてもきれいだそうです。調べてみると、山車の中でも鯛の山車はなんとも愛嬌のある風貌をしています。山車を真剣に曳き回す姿はとても魅力的です。

熊本県の「いきなり団子」は、輪切りに切ったさつま芋とあんこを皮で包んで蒸してあるシンプルなもので、著者は23日で10個も食べたそうです。これはぜひ食べてみたい一品です。


本書を読んで、私も箱根へ日帰りひとり旅に行ってみました。何人かに話しかけられ、なんだか嬉しい気持ちになりました。

湯上りに、流れる川の音に耳を傾け、ゆれる草木を眺めていると、少し大人になったような充足感に満たされます。

ひとり旅に憧れているけれど勇気がでない方に、ぜひ読んでいただきたい1冊です。


47都道府県女ひとりで行ってみよう』 益田ミリ著 幻冬舎 2008年 資料コード:22264709

請求記号:291.09TT/647 OPAC(所蔵検索)


(県立図書館:青森のいちご煮も食べてみたい)