私は身近な人からよく「もっと笑ってポジティブな人間になった方がいい。」と言われ、日頃から"笑う"ということについて考えていました。そこで手に取ったのが本書です。
第1章から第4章までは、日本語と欧米諸国の言語における笑いやユーモアの意味合いの違いについて述べるとともに、これまで行われてきたユーモア研究について言及しています。
感情についてまとめられた 第5章の第3節「ネガティブ感情とポジティブ感情」は、大変興味深い内容でした。ネガティブ感情は大変強い感情であるため、ポジティブ感情と1対3以上の関係でないとポジティブ感情が強い状態にならないとありました。
ネガティブ感情の感じ方が強い例として「好ましいものに小量でも嫌悪すべきものを混ぜると嫌悪が優位になる。汚物に美味しいお菓子をそえても汚物への嫌悪感情は緩和されないが、美味しい食事に一滴でも汚物が混ざっていれば全体が台無しになる」(本文より)とあり、なるほど、と腑に落ちました。
最も惹かれたのは第6章「笑いとユーモアの効用を探る」です。
ある病床の患者が、笑いを治療に取り入れたことで身体の痛みを緩和させ、完治の可能性が500分の1と言われた状態から生還したというのです。
全ての病気に当てはまることではありませんが、笑いをポジティブ感情と捉え積極的に行うことで、ネガティブ感情に打ち勝つ可能性があり、気楽で明るい人ほど風邪やインフルエンザの発病頻度が低いという研究結果が記されています。
自分のためにも周囲のためにも、ポジティブでいる事がどれほど良い影響を与えるのか。
それを示してくれた本書に敬意を表します。
『笑いとユーモアの心理学』 雨宮俊彦著 ミネルヴァ書房 2016年
資料番号:22879084 請求記号:141.6/185 OPAC検索
(県立図書館:明るい人間になりたい)