学生時代に読んで面白かった小説を、娘に薦めたくて先日改めて読み返してみたのですが、当時全く気付かなかった違和感に驚きました。主人公は10代の兄妹ですが、男らしさ・女らしさの描写に少し引っ掛かりを覚えたのです。
服装や髪形、公共の場での立ち居振る舞い、選択的夫婦別姓の問題や商業広告デザイン、ドラマの設定...これまで日常に埋もれていたジェンダーに関する問題は、SNSの広がりなどを受けて、一部の人々の問題ではなくなってきています。
しかし、多くの問題があることは分かっていても、説明できるほどの確かな知識が自分にはありません。
引っ掛かりを感じるようになった自分の変化をきっかけに、もっと知識を深めてみたいと思いました。
本書は2017、18年度一橋大学社会学部のジェンダー研究ゼミの課外活動として刊行された、ジェンダーに関する様々な問いとそれに対する回答集です。
問いは「日常生活における素朴な疑問」、「LGBT」、「フェミニズム」、「逆差別」、「性暴力」の5つのカテゴリーにまとめられ、それらを受ける回答は初心者向けの「ホップ」、およその知識は持っている中級向けの「ステップ」、ジェンダー研究の最新動向を理解している上級者向けの「ジャンプ」の三段階で提示されます。三段階はきっちり分けられているわけではなく、「ホップ」から順に読み進めていけば自然と「ジャンプ」の知識にまでたどり着くようになっています。
様々な問題について当たり前だとされてきたことは本当に当たり前なのか、自分と異なる人を尊重しながら連帯していく世の中について考えてみましょうと、隣でそっと見守るような穏やかな口調で回答へ導きます。
とはいえ問題部分にはしっかりと切り込んでいて、「素朴な疑問」の中の「男女平等っていうけど、女性も『女らしさ』を利用しているよね?」の項では、私が「女子力」という言葉に感じていたモヤモヤを、スカッとほどいてくれました。
刊行は2019年、すでに2年たっていますので、最新のジェンダー問題の動向にもアンテナを張りつつ、日々自分をアップデートしていきたいものです。
『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた-あなたがあなたらしくいられるための29問』
佐藤文香監修 一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同著 明石書店 2019年
資料番号:23089352 請求記号:367.1/435 OPAC検索
(県立図書館:元大学生)