表紙の写真が表すとおり、本書には豊富な図版や資料等が紹介されています。
江戸の食文化について、生活習慣や食材の食べ方、その生産と流通、調味料など、様々な観点から和食を読み解いていきます。
まず目を引くのがカラーの口絵です。取引額が日に千両もあったと言われた魚河岸の風景『日本橋魚市繁栄図(にほんばしうおいちはんえいず)』(歌川国安画)では、活気ある魚河岸で魚やタコ、サザエなどが商われている様子が描かれています。
また『太平喜餅酒多多買(たいへいきもちさけたたかい)』(歌川広重画)では、擬人化した酒と菓子の合戦が描かれています。江戸で人気のあった伊丹や池田の酒の銘柄をまとった酒軍と、鏡餅や安倍川餅、粽の部将などの餅(菓子)軍が、多多買(戦い)を繰り広げています。
江戸時代に親しまれていた酒、菓子の豊富さがみてとれます。
興味深いのは「番付拝見」の幕末の番付表です。伊勢の伊勢エビ、日向のシイタケなど各地の名産品が流通していたことがわかります。
また料理屋番付では上野広小路や深川、向島からなどの料理屋が並んでおり外食産業が盛んな様子が見られます。
豊かな食の様子に、江戸時代に何度も大きな飢饉が起きていたことを忘れてしまいそうですが、享保の飢饉の際は、青木昆陽らにより米に代わるものとしてサツマイモの栽培が普及しました。
天保の飢饉の際には、身の回りにある食用可能な植物と調理法を説いた、一関藩の藩医による『備荒草木図』がありました。
今につながる江戸の味として醤油、味噌、塩などがあります。醤油は元禄期(1688年~1704年)には高級品であったこと、江戸時代後期には銚子と野田で、江戸の人の口に合う上質の醤油が作られるようになり、今日に至るそうです。
江戸時代に発展、向上した食生活に思いを馳せ、受け継いでいく大切さを改めて感じました。
『江戸の食文化』 原田信男 編 小学館 2014年 資料番号:22809677 請求記号:383.81/133 OPAC(所蔵検索)
(県立図書館:マカロンロン)