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普段、私たちが何気なく使う言葉の中には、お笑い芸人や噺家によって広められた言葉が数多くあります。
長年、バラエティ番組「探偵!ナイトスクープ」をプロデュースしてきた著者は、「お笑い」から発信されてきたと考えられる日本語の新しい表現方法について、独自の調査を始めました。


本書で取り上げられている言葉は5つ。

「どんくさい」から始まり、「マジ」「みたいな。」「キレる」「おかん」の調査へと続きます。

中でも「おかん」の項目は大変興味深いものでした。「おかん」は、今は誰でもそれが「お母さん」を意味する言葉だと知っていますが、この呼称が全国に知れ渡ったきっかけは、ダウンタウンのシリーズコント「おかんとマー君」だと言われています。「おかん」の歴史は戦前から続いていて、大阪の下町で働く母親たちの呼称であったと明らかにしています。


同項では「おじん」「おばん」という言葉についても触れています。

私は「おじん」「おばん」という言葉を初めて目にしたのですが、調査によると、「おじん」「おばん」は関西と関東で意味が異なり、関西では「おじいさん」「おばあさん」、関東では「おじさん」「おばさん」という意味で伝わっているそうです。

この言葉が広まったきっかけは、おじいさんの様な若者を「おじんくさい」と表現して流行した横山やすし・西川きよしの漫才です。テレビを通してこの漫才を見た関東人は、「おじん」に馴染みが無く、言葉が似ている「おじさん」と捉えて後世に伝わりました。

関西と関東の文化の違いによって、同じ芸人のネタを見ても意味が異なってしまう事に驚きました。


著者は、辞典や雑誌記事等の文献調査のほかに、お笑い芸人、噺家等様々な人にインタビューを行い、言葉の実態調査を行っています。
徹底的に掘り下げて言葉の歴史を探るその工程や、取材時の話はいずれも興味深く、「お笑い」から発信される言葉に耳を傾けたくなりました。


『「お笑い」日本語革命』 松本修著 新潮社 2010年

資料コード:22472120 請求記号:814.7/126 OPAC(所蔵検索)


(県立図書館:お笑い番組が好き)