神奈川県立の図書館

『建築思想図鑑 THE VISUAL DICTIONARY OF ARCHITECTURAL IDEOLOGIES』松田達ほか/編著

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ここ紅葉ヶ丘に建つ県立青少年センター、県立音楽堂、そして前川國男館(県立図書館旧本館)が、前川國男という高名な建築家によって設計されたことはご存じですか?ル・コルビュジエに師事した、日本のモダニズム建築を代表する建築家です。
私自身、恥ずかしながら図書館で働き始めてからこのことを知り、今まで全く触れてこなかった建築というジャンルへの興味が湧いてきました。そこで、初心者にもわかりやすく、建築を見る目を養ってくれる本はないかと探し、出会ったのがこちらの本です。



『建築思想図鑑』本書では、紀元前から現代まで、建築家たちがどのような思想で建築物を作ってきたのかが、大まかな時代ごとに分類されて紹介されています。
建築思想というと難しいのではと身構えてしまいますが、本書を読んでいくと、むしろ何も意図せずに作られている建物はないのだなと気づかされます。それぞれの時代の建築家は、各々が新しいアイデアや建築への理想を持っています。しかしながら、イメージを形にするのは難しく、建築された建物ひとつひとつがその試行錯誤の現れであるように感じられます。


数々の思想の中から、ここでは本書の最初に掲載されている「調和比例論」という思想をご紹介します。古代ギリシアの数学者ピタゴラスは、宇宙の根源は数であり、万物は比例などの数的秩序によって成り立っていると考えました。その後14世紀から16世紀のルネサンス期において、ピタゴラスの数学的思想の影響を受けたウィトルウィウスの建築書が再評価され、実際の設計にも取り入れられました。音楽が比例に基づいて美しいハーモニーとなるように、数的秩序や円、正方形などの幾何学的構造を使用して設計することが美しい建築空間づくりにつながると考えられたのです。


前川國男に関連するものとしては、国立西洋美術館を設計した際の話が掲載されています。師匠のル・コルビュジエによるスケッチには具体的な寸法の記載がなく、前川國男ら弟子達は実際の図面に起こす作業に苦労したそうです。ル・コルビュジエは、従来のメートル法は人間が生活する建築空間にそぐわないとし、「モデュロール」という人体を基準とした新たな寸法体系を考案しました。国立西洋美術館では、基本的にはモデュロールを使用しつつも、日本の尺貫法も組み合わされています。これもまた、試行錯誤の現れなのかもしれません。

本書には、たくさんのイラストや写真が使われており、イメージしながら読むことのできる本になっています。本書を読み終わったら、ぜひ紹介されている実際の建築物を見に行ってみてください。いつもと少し違う視点で建築を楽しむことができるかもしれません。

『建築思想図鑑 THE VISUAL DICTIONARY OF ARCHITECTURAL IDEOLOGIES
松田達ほか/編著 寺田晶子/イラスト 学芸出版社 2023年
請求記号:520.1/110/ 資料コード:23513740 OPAC(蔵書検索)

(県立図書館:前川國男邸にも行ってみたい)