神奈川県立の図書館

第4期after5ゼミ第3回 宮崎成悟「ヤングケアラー 当事者の人生から考える支援のあり方」

公開

伊藤達矢さん、宮崎成悟さん2025年9月26日(金曜日)に、第3回「after5ゼミ」が開催されました。今回の講師は、一般社団法人ヤングケアラー協会代表理事の宮崎成悟さん。「ヤングケアラー 当事者の人生から考える支援のあり方」と題して、ヤングケアラーだったご自身の経験と共に、ヤングケアラーの概要や支援のあり方についてお話しいただきました。
(写真左からファシリテーターの伊藤達矢さん、講師の宮崎成悟さん)

宮崎さんは15歳から約17年間、難病のお母様のケアを担ってきました。高校3年生の時に、お母様の辛そうな様子や夜間のケアによる寝不足で苦しむも、担任の先生に状況を打ち明けることができず、支援に繋げてもらうことができませんでした。
大学進学を諦めて介護に専念する中、お母様から「死にたい」と言われることが増えとても辛く、外出するだけで吐き気を感じるようになってしまいましたが、20歳の時に周囲の支援を受けて予備校に通い始めました。
当時を振り返って宮崎さんは、「孤立はしましたが、親戚や母の主治医が気にかけてくれたことで孤独ではありませんでした。高校3年生の時に先生が支援に繋げてくれていたら、孤立せず大学進学を諦めずに済んだかもしれません。学校と行政の連携が大事です。」また、「物理的な支援ももちろん大事ですが、気にかけるということも大切な支援になります。」と話されました。

大学ではケアのため授業に出られず、単位を落とし、就職活動にも苦労しました。就職後、お母様の体調悪化を機に転職し、難病支援ボランティアに参加したことで「ヤングケアラー」という言葉に28歳にして初めて出合い、自分と同じ境遇の人が多くいること知りました。ヤングケアラーについて調べるうちに、ヤングケアラーは心身ともにネガティブな影響は出てしまうが、一方で強い責任感や生活能力が養われている傾向があるとの研究結果に触れ、自分のケアに専念した期間は空白ではなく意味があったのだと思えたそうです。
そこからヤングケアラーを支えたいと考え、ヤングケアラー支援に関する多角的な事業を展開するヤングケアラー協会の活動に繋がっていきました。宮崎さんは、「自分の人生は色々な偶然に助けられましたが、偶然ではなくきちんと支援に繋がる社会にしていかなければいけません。」と語られました。

現在、日本でヤングケアラーは「子ども・若者育成支援推進法」により、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義され、18歳未満の子どもに加えて概ね30歳未満の若者も国・地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象としています。
ヤングケアラーは、介護や手話通訳や幼い弟妹の世話など様々なケアを、複合的に行っていることが多いそうです。宮崎さんは、ケアそのものは悪いことではないが、過度になってしまうことで学業や将来などを諦めざるを得なくなる点が問題であると話されました。その問題の背景には、ケアを必要とする人が増える一方で、核家族化や共働き世帯の増加により家庭内にいる大人が減り、子どもや若者に負担が集中しやすくなっていることがあります。

そのようなヤングケアラーへの支援をどのようにするべきなのでしょうか?
まず、ヤングケアラーではなくなることを目指すのではなく、ヤングケアラーだったとしても健やかに暮らせる社会にするにはどうするか、という考えを持ちながら支援をすることが大切です。
そして、様々な事情を抱えたヤングケアラーの周りに多種多様な"支援の糸"を垂らしていくことが、ヤングケアラーの選択肢が増え適切な支援に繋がっていくのだといいます。そのためには、学校の先生はもちろん、近所の人などたくさんの周囲の人が気にかけることが大事だとし、受講生に向けて、「今日のゼミをきっかけに、どうやったら"支援の糸"が垂らせるのか考えてほしいです。」と締めくくりました。

(第3回ゼミの会場の様子)

ゼミの様子ゼミの様子2
【関連著書】
『ヤングケアラーわたしの語り 子どもや若者が経験した家族のケア・介護』澁谷智子/編 生活書院 2020年 資料コード: 23202625 請求記号: 369/642/ OPAC(蔵書検索)

【関連情報】
「一般社団法人ヤングケアラー協会」(外部サイト)(2025年12月5日確認)


「ヤングケアラーを知っていますか?|ヤングケアラー特設サイト」こども家庭庁(外部サイト)(2025年12月5日確認)


(神奈川県立図書館:イベント担当)