6月14日(金曜日)、県立川崎図書館カンファレンスルームにて、第36回社史編纂サポートセミナー「『東急100年史』ができるまで」を開催しました。
「社史編纂サポートセミナー」は、実際に社史を編纂された企業の担当者から、これから社史をつくる方や現在編纂中の方に向けて、社史編纂に役立つ情報をお話しいただくセミナーです。新型コロナウイルス感染症の影響で、令和元年11月実施を最後に中断していましたが、久しぶりに開催することができました。
今回は、東急株式会社で50年ぶりの社史編纂を担当された竹内敏浩氏を講師にお迎えし、社史の作成が決定してから完成するまでの体験談をお話しいただきました。
私が驚いたことや勉強になったと感じたことを中心に講演内容を紹介します。
最初は、社史完成までの全体の作業スケジュールについてです。『東急100年史』は、2015年から2018年に仕込み、2018年から2022年に原稿づくり、2022年に仕上げ作業と約8年もの年月をかけて編纂されました。新型コロナウイルス感染症の関係で作業が思うように進まない時期もあったそうですが、社史は私が想像していた以上の年月をかけて作成されていることを知りました。
次は、執筆者の選定についてです。学識経験者(大学教授)と社史ライターそれぞれに依頼する際に、注意すべきことを教えていただきました。
学識経験者(大学教授)の場合は、時代背景などに造詣が深く文章の質が安定している一方で、執筆が夏休みと春休みに集中するため遅延のリスクが大きいことを挙げていました。
社史ライターの場合は、個人差があるため文章の質が担保されていないこと、時代背景も含めて資料を渡して細かく説明する必要があり、事務局の手間が増えることを挙げていました。
私は企業の担当者が全て執筆していると思っていたので、執筆を外部に依頼しているという話を聞いて驚きましたが、完成した社史のページ数を見て納得しました。
最後に、社史の内容の確認作業についてです。何を根拠に社史を作成したのかを説明できるようにしておくために、Wordの原稿データに根拠等の情報を書き込む作業を行ったそうです。効率よく作業を進めるために複数人でデータに書き込む作業をしたいのですが、Wordでは同時に複数人で作業することができません。
この対処としてMicrosoftが提供しているOneDriveを活用していました。このサービスを利用すると、インターネット環境があればどのパソコンからもデータにアクセスすることができ、編集を同時に行うことができます。
このように、各作業段階で直面した問題とその解決策についても、体験談をもとにお話しいただきました。
実務ベースのお話しを中心にしていただいたことで、アンケートには「大枠については調べていくと分かりますが、実際につくってどうだったのかという話は、直接ご担当いただいた方からではないと聞けない話で、特に工数検討の参考になりました。」など、「とても参考になった」との声が多く寄せられました。
今後も当館では社史コレクションを活かしたセミナーやイベント、展示を予定しています。
2024年12月4日(水曜日)から12月7日(土曜日)には、「社史フェア2024」を実施します。
「社史フェア」は、県立川崎図書館が所蔵する前年(今年は2023年)刊行の社史をまとめて展示するイベントです。詳しい内容については、県立川崎図書館ホームページでお知らせしています。
社史編纂に関わる方以外にも、企業研究や就職活動中の方にもおすすめです。皆様のご来館お待ちしております。
(県立川崎図書館:社史担当)