アイルランドの人々は元々ゲール語を話していましたが、イギリスの統治下時代に英語を強要され、現在はほぼ英語を話します。
コネマラ地方ではゲール語が根強く残っていて、私のボスのようにゲール語と英語を話す方々が存在しますが、あまり多く有りません。
ですが現在ではまたゲール語を学校で教え始めたとのことです。その為、当然の如く図書館には英語とゲール語の本が並んでいますが、そんな理由も有りゲール語は児童書が多いです。
私はあまり英語が話せるわけではなく、違う国の図書館で働いてみたいという気持ちだけで行ってしまったので、ボスには呆れられてしまいました。
Galwayの図書館には、ボランティアはドイツなどからの図書館学を学んでいる学生が年に数名ほど来ていますが、アジア人は私が初めてで、おまけに意思の疎通も難しく、困り果てたボスはデューイ十進分類法で書架を整理する仕事を私に与え、最初の2ヶ月はひたすら書架を整理するだけでした。
そのうち、少しずつでもボスの指示や同僚の話がわかるようになり、Children's roomのカウンターを手伝うようになりました。
そして働き始めて4ヶ月が過ぎる頃、ボスから本部の仕事を手伝ってみないかと誘われ、週のうち3日間ほどHeadquartersの有るIreland Houseに出入りするようになりました。
Ireland Houseには本部と古くからのGalwayの郷土資料の部屋があります。郷土資料はセキュリティが厳しく、一般の方は予約をして1日1組程度しか入れません。
本部のスタッフもあまり多くはなく、やはり全員で10数名でした。
Ireland Houseはコリヴ川という川に面していて、窓から川を優雅に泳ぐ白鳥を眺めることが出来ました。また大聖堂に隣接し、昼休みに大聖堂を訪れることも出来ました。
ゴールウェイ州にある51ヶ所の図書館に本を送るのは本部の仕事です。首都ダブリンから送られて来る数々の本を一度本部で受け入れ、51の図書館に割り振ります。
それから本部で働いている運転手さんがそれぞれの図書館に運びます。明るくてお喋りで優しい方でした。

この時期、アイルランド政府は国民に対し、心身の健康を促すHealthy Irelandという活動を始めました。
公共の場所でイベントを開き、健康食や運動などの本を何回かにわけて出版しました。第1回は約60タイトル、第2回は約70タイトル、私が帰国した後も第3回、第4回と続きました。
そして本の出版後は著者を図書館に招いて講演会をしたりしていました。
私の仕事はHealthy Ireland関連の図書や児童書などを図書館に割り振るデータ作成と本の装備でした。送られて来る全ての本が51冊有るわけではないので、ボスから子供向けの本を多く所蔵している図書館や、大人向け、シリーズものの所蔵が有る図書館などを教わり割り振りました。
それぞれの図書館名が書いてある棚に本を置いておくと、運転手さんが配達してくださいました。

ゴールウェイ州は広く、コネマラ地方はあまり図書館が有りません。週に2度程度移動図書館用の車で地方を訪れ、田舎に住んでいても図書館のサービスが受けられるようにしていました。車内にはぎっしりと本が積み込まれ、本を選ぶことが出来るスペースも有りました。
また、デジタル大国でもあるアイルランドではデジタル本も多く、図書館カードさえ持っていれば、デジタル本の閲覧も可能でMobil Libraryと呼ばれていました。
(県立図書館:クリとポン)