国民食とも言えるカレーライスは、明治時代に伝わったインド発祥の料理です。この本はカレーライスの誕生と開発に携わった技術者達の物語です。
インドの家庭料理だったカレーは、大航海時代にスパイスを求めてインドに来ていたイギリス人によって本国に持ち帰られます。C&B社がカレー粉として大々的に売り出します。これが日本に伝わるきっかけでした。
インドのカレーはサラサラしていて、今私達が食べているカレーライスとは少し違います。
明治の初め、日本で紹介されたカレーライスはとろみがついていました。とろみをつける調理法は中国人の工夫と言われています。その頃は舶来のカレー粉を使い、洋食屋で食べるご馳走でした。
明治36年には国産のカレー粉が販売され、以来普通の家庭でも作られるようになります。カレーライスに欠かせないジャガイモ、タマネギ、にんじんなどの西洋野菜が栽培され、現在のカレーライスに近いものになりました。
明治30年代中頃は、官民挙げて牛乳の普及を奨励した時期で、肉も調理に使うようになっていました。
大正時代にはカレーにコロッケ、トンカツが加わり三大洋食とよばれます。
軍隊生活を送った若者が故郷で広めたことで、いよいよカレーライスの人気は全国に広まります。
戦時中、食糧統制でカレー粉が軍用を除いて製造中止となり、空白の10年間となりました。
昭和20年11月、炒めた小麦粉とスパイスを合わせて粉末カレー状にした即席カレーが販売されます。
昭和34年には固形ルウが、昭和39年には甘口が販売され、昭和44年にはレトルトカレーが登場します。子供も大好きで、誰でも手軽に作れるメニューとなりました。
平成9年には宇宙飛行士の毛利衛さんが宇宙で食べています。カレーライスはまだまだ進化中なのです。
シンプルな調理法、一つの皿にご飯と具が乗り、ご飯の白、カレーソースの黄色、福神漬の赤と見た目も美しい、食べ方に作法はないなど、日本人を飽きさせない魅力がカレーライスにはあるのかも知れません。
『カレーライスの誕生』 小菅桂子著 講談社 2002年
資料番号 21491170 請求記号 383.81/34 OPAC(所蔵検索)
(県立図書館:辛口は食べられません)