神奈川県立の図書館

令和7年度 第1回図書館アドバイザー・レクチャー実施結果

日時

令和7年12月11日(木)14:00~16:00

会場

県立図書館本館4階 学び⇔交流エリア

及びZoomによるオンライン開催 (県立川崎図書館 カンファレンスルーム)

参加人数

44名(県立図書館24名、川崎図書館16名(オンライン)、生涯学習課4名(現地3名、オンライン1名))

アドバイザー紹介

青山学院大学 教育人間科学部長・教授 野末 俊比古 氏

青山学院大学教育人間科学部長・教授。同大学革新技術と社会共創研究所副所長・近未来の図書館と新しい学び研究プロジェクトリーダー。学術情報センター助手、文部省社会教育官、青山学院大学専任講師・助(准)教授、国立情報学研究所客員助(准)教授、英国シェフィールド大学visiting lecturer(客員准教授)などを経て、現職。

国立国会図書館科学技術情報整備審議会基本方針検討部会長、日本図書館協会図書館利用教育委員会委員長、東京都立図書館協議会議長、調布市立図書館協議会委員長等、国・自治体・学校等における委員や講演・研修講師などを数多く務める。

専門分野は図書館情報学・教育情報学、関心領域は情報リテラシー教育・学習資源(教材)開発など。202410月「令和6年度東京都功労者(教育功労)」を受賞。

レクチャーテーマ

AI/DX時代における公共図書館のモデルづくり

ー"学び(合い)"による課題解決に向けてー

レクチャー概要

1.はじめに

 AIやDXと図書館との関係が私に与えられたテーマである。図書館のあり方、とりわけ、都道府県立図書館のあり方が問われているが、答えはそれぞれでみつけるしかない。神奈川県には神奈川県のあり方がある。それを考えるための素材や方向性を示すのが私たち研究者の役割と考える。私は、実践に役立つことが研究の価値であるという考えを持っており、めざしたいと思っている。AIを含むテクノロジー(ICT)は、いまや"道具"ではなく"環境"である。図書館はいま、やることが明らかに増えているが、予算、人手、リソースが十分にあるわけではない。テクノロジーでできるところはテクノロジーで解決していくことと、図書館以外と協働していくことが必要である。その前提として、理念や概念を見直すべきところもあるだろう。国立国会図書館科学技術情報整備審議会基本方針検討部会長を務めているが、来週、審議会があり、そこで最終的な提言が決まる。画期的なことが書いてあるので、ぜひご覧いただききたい。AIDXの時代において図書館のリソースを拡張していくことに言及している。

 審議会の部会における議論の進め方として、利用者の視点から考えた点は特徴的であった。利用者が何の目的でどのように使うのかということを考えないと、図書館のあり方は決まらない。利用者が変われば、当然、図書館も、根本は変わらないにせよ、あり方は変わる。本日は、図書館のあり方について、利用者をベースにしてテクノロジーをどう使うかということで考えたい。

2.デジタルネイティブと"新しい学び"

 デジタルネイティブやZ世代とは、もはや若い世代という意味ではなくなってきている。私たちの世代も、デジタル化の影響を受け、デジタルネイティブ化、Z世代化している。よって、デジタルネイティブの特徴を考えるということは、これからの図書館利用者を考えることである。デジタルネイティブの"情報世界"にはいくつかポイントがある。まず、トランスメディア的な視点を持っていること。メディアの種別が何か、ネットかリアルかといったことは気に留めない。また、「遍在のなかの偏在」、いわば見えない偏りがある。ネットの世界は無限に情報が広がっているが、しかし接する情報には偏りがある。フィルターバブルとかエコチェンバーと呼ばれるものである。さらに、ネットの世界は、自分にとって役に立つ、近いだろう、使えるだろうというものを集めてくれているという感覚の中にいる。図書館の言葉でいえば、「検索」ではなくて"おすすめ"ということになる。あらかじめ価値付けしたものを使いたいということであり、これは図書館の出番、役割である。つまり、何か情報を得たい、調べたいときに、「これがよい」という資料や文献、ニュース、サイト、施設などを提示することである。自分で全部調べればよいのではないかというのは、一昔前の「検索」的な考え方である。検索は大事だが、学生の卒業研究のように、網羅的に文献を渉猟し、必要なものから順番に読んでいく必要性がある人がどれくらいいるか、あるいは必要性のある場面がどのくらいあるか、図書館としてもより自覚的であるほうがよい。「検索」は利用者が価値判断をするが、"おすすめ"は図書館側が価値判断をする。だから、いままで以上に情報あるいは情報源の信頼性や妥当性を判断する力が図書館に必要になる。つまり、図書館にとってはより厳しいものになる。AIは、例えば8割程度は正しいことを言うが、責任を取らない。そこにAIと人間の明確な区別がある。これが人間による"おすすめ"である。

 「検索」については、二次資料、目録や書誌や索引を用意して、必要な情報に利用者自身がたどり着けるという考えで図書館界はやってきたし、図書館情報学もそれを目指してきたが、もう一歩先をめざし、「困ったり悩んだりしていて情報を探しているなら、これがおすすめです」という対応をもっと進めていってはどうか。レファレンスサービスが近いが、基本的には待ちのサービスである。先取りして、前もって用意していくところを増やしていきたいということである。

 デジタルネイティブの世界は、映像を早送りで見る、先に結末を見る、というように、タイパを重視している。SNSでもYouTubeでもインスタでも、最近の動画は、最初に結論やあらすじが来るようにつくってある。図書館のおすすめも、いわゆる書誌データを示すだけでなく、世の中で要約サービスが流行っているように、結論はこれだということも提示することができるだろう。すべての人に提供すべきというわけではなく、結論・あらすじを手がかりに文献や情報を探そうとする人に対して提供していくことがこれから求められるだろう。

 すべてを図書館だけでやるのは難しいので、協働を進めるという話になる。例えば書評とはいかないまでも、コメントや感想を書き込めるOPAC機能を使うとか、ポップでもいいが、利用者の力を借りて、あるいは専門家の力を借りて、本の内容や感想、さらには「この本はこんなときに読むとよい」「この本を使ってこんな卒論を書いた」「こんな企画書を作った」といった付加的情報がつくといったところに価値を見出せる。

 現行の学校教育においては"新しい学び"が拡がっている。子どもたちがどういう学び方をしているかというと主に3点がある。まずは"一人一台"、つまり、タブレット、パソコンなどがネットワークにつながっている。国が推進しており、常にそういう環境で学んでいる。二つ目は、主体的な学習、探究的な学習、協働的な学習である。三つ目は、実践的・現代的な学習内容、例えば主権者教育、理数教育、消費者教育など、世の中の課題が取り入れられていること。こういう環境のなかで子どもたちがどんどん育っていて、図書館にそれを求めてくるという状況になっている。

 ここで、近年の、特に若手の図書館利用者について以前と変化したと思うことがあるかを会場に伺いたい(リアルアンケートシステム「イマキク」による)。では、回答を確認していく。

回答:インターネットにないものは存在しないと思っている。

講師:初学者は検索するためのキーワードがわからない。ここに図書館で本を探すときの難しさがある。いわゆるキーワードマッチング型の検索の限界である。だから"おすすめ"がいる。

回答:ChatGPTで得た回答が正しいか、図書館で確かめたいという利用者がいる。

講師:ある意味で正しい姿勢である。ChatGPT、生成AIは例えば8割程度は正しいことを言うが、根拠が曖昧なこともあり、責任を取らない。

回答:学校司書をしていたとき、「この本ありますか?」とTikTokの画面を見せてくる生徒がけっこういた。

講師:これは"おすすめ"の本が流れてくるという話であろう。私たちが全国の老若男女に行なった調査によると、とくに30代、40代の働き盛りの人の半分以上は図書館に行かないし、本も読まない。有名なティックトッカーやインフルエンサーによるおすすめや、新聞の書評によって読んでみようかとなる。本来は、図書館こそがやりたいことなのだが、ティックトッカーに負けずに、図書館業界、学校図書館業界には本に詳しいプロが多数いるのだから、がんばっていきたい。

回答:研究者とおぼしき方からのレファレンスで、司書をAIのように使おうとしているものがあった。

講師:極論すれば、レファレンスカウンターにAIを置くことが解決策になる。学習データが最新化され、ChatGPTでもジェミニでも相当に正確に答える。概要がわかればよいならAIでも対応できる。そのかわりに人間はAIにはできないことをする。人間が責任を持って担当する部分を明確していき、利用者が使い分けるべき時代になりつつある。

 図書館には利用調査や利用者調査といった伝統的な分野がある。いわゆる潜在的利用者も含めて、どういう利用者が、どのような課題、ニーズを持っていて、図書館をどのように使うのか、利用者の"解像度"を上げていくことが求められている。利用者のカテゴライズやセグメント化については、伝統的な年齢、使用言語、課題といったものだけによるのではなく、それ以外、例えば「本をどのくらい読むか」といった軸も有効だと思われる。「本を読まない人」は、本を探したり選んだりするときに何で困っているかというと、「自分に合った難易度や分量のものがわからない」「誰かの評価を知ってから読みたい」といった特徴がある。そうした情報はOPACにはないので、別で補うしかない。例えば「1時間で読める本」や「高校生の学力で読める本」の棚やマークをつくるとかいった情報があれば、困っている人が本を手に取るだろう。図書館のリソースを使ってもらえる可能性が高まる。

3.問題解決としての情報探索・利用

 利用者が図書館を使うには何らかの理由がある。それを私は問題解決と呼んでいる。「問題」とは「現状」と「理想」のギャップのことで、ニーズと呼んでもよい。図書館は、資源を使って、情報を提供して、問題を解決につなげる、という支援をしていることになる。

 利用者の"解像度"を上げるとは、利用者が図書館で何をめざしているかをもう少し細かく見ていくことである。いまニーズという言葉を使ったが、ニーズとディマンズは異なる。ディマンズは要求している、つまり欲しいということであるが、ニーズは必要であるということである。要求するものと本当に必要なものは違うことがある。図書館は、必要があり、要求のあるものは当然、対応する。要求もされてないし、必要でもないものは対応する必要はない。問題は「本人は要求していないが必要なもの」である。それを見極めて対応するのが「人を対象にした専門職」である。図書館司書が専門職として、世の中にさらに認められるためにやるべきことはこの点であり、"おすすめ"の話につながっている。まさに人間しかできないことである。

4.活動の場としての図書館

 図書館は何を目指してきたのか、理念と主なサービスモデルで整理する。貸出型サービスによって、利用者と資料を結ぶという伝統的な図書館のあり方は、70年代、80年代、あるいは90年代くらいまでは主流であった。やがて利用者と情報を結ぶため、課題解決型のサービスが始まり、教科書的には"禁止事項"であった法律や医療などに関する情報提供を積極的にやり始めた。もちろん、責任の範囲を明らかにしたうえで行い、必要があれば別の専門家につなぐものだった。

 現在は、一歩先の、利用者と活動を結ぶという段階に来ている。資料や情報自体が大事なのではなく、資料・情報を使って問題を解決すること、つまり活動こそが大事である。資料・情報を実際の活動に結びつけていくことが図書館の役割である。滞在型の図書館が増えている。神奈川県立図書館もそうである。全国で新館建築、建て替えが行われているが、中央館はほぼ百パーセント、複合施設で滞在型となっている。まさに活動の場としての図書館がめざされている。一方で、遠隔型のサービスが増えているが、図書館ではなく、まさに活動している場所に情報を届けるということである。最近は、出張型のサービスも見られる。いわば出前図書館のようなものであるが、移動図書館も見直されている。まちなか図書館、まちライブラリーなどもある。どれも図書館が活動を支援するという大きな流れに位置づけられる。

 図書館利用者の活動をめぐっては視点・視野の転換がある。これまで図書館は、インプット、つまり情報を入手するところだったが、これからは、入手したものをどうするか、それをどう使って、どう発信していくかというスループットとアウトプットを含む情報利用ー学びと呼び変えてもよいと思うがーのプロセス全体を見据えるということである。「点」で捉えるのではなくて、「線」で捉えるように視点が変わってきているといってもよい。図書館にとっては資料が大事であることは変わらないが、資料をどう準備しておき、どう探索、入手してもらうかというところにいままでは視点があった。しかし、図書館の資源はそれだけではない。

 図書館には、情報資源、空間資源、物的資源、人的資源がある。教育の世界でいう教材、教室、教具、教師にあたる。この四つの資源をうまく使っていくと「よい学び」が実現できる。図書館においても、四つの資源をうまく組み合わせたときに、「図書館ならでは」のよい活動ができる。

 さらに、協働による拡張も大切である。情報資源、つまり資料としては、購入や寄贈で集めたものだけではなくて、利用者が何かを調べたとか学んだとかいった成果も貴重なものである。例えば、地域でボランティアをやっている人たちが、こんな本を読んで、こんな活動をした、ということがわかるだけでも便利であろう。活動の成果を共有していくところが協働である。利用者もどんどん取り込んでいくということになる。

5.地域(利用者)の課題と"学び(合い)"による発見・解決

 「県立図書館の利用者はどういった目的で利用しているか」「どのような課題(ニーズ)を持っているか」「課題を発見・解決するにはどういったサービスが必要・有効か」を考えてみてほしい。すでにあるものでも、こんなことをやってみてはどうかというものでもよい。

 いま、この本館にはそれが散りばめられている。グループで使える部屋があり、寛いで本が読めるスペースもある。LLブックや大活字が置いてある共生コーナーについては、そうした資料を知らない人がLLブックや大活字本というものがあると知り、困っている皆さんがいるということを知ることに大きな意味がある。利用者同士が将来、コミュニケーションを取っていくとき、相手のことを知っているか知らないかは重要な点である。

6.図書館の理念とサービスの再構築

 図書館には、資料を選択・収集し、組織化し、保存し、提供するという四つの機能があると教科書には書いてある。例えば、情報資源、つまりコンテンツはとても大事であるが、根本的なところから一度、考えてみてはどうか。例えば、選書とはどうあるべきか。従来のやり方の効果と効率を上げる方法があるかもしれない。都道府県立図書館として所蔵しておかなければならないものと神奈川にあるから持つべきものは違う。その区分がつけば、他の図書館とよりよい協力ができるかもしれない。いまAIで選書ができるかという研究もあるが、私見では難しい面があると感じている。選書は、やはり人が見ないといけないところがある。

 資料組織法、つまり分類、排架、目録などもいままでのやり方だけでない方法があるかもしれない。先ほど利用者の解像度と言ったが、利用者が課題を解決することを考えると、例えば、排架の仕方も、それぞれの課題ごとに読むべきものを、読むべき順に並べる、といったこともできるかもしれない。

 課題に応じた利用者のセグメント化については、年齢とか使用言語とか、あるいはビジネスとか子育てのような課題ごとではなく、別の切り口があるかもしれない。例えば、読書や図書館利用の頻度が挙げられる。読書をあまりしない、図書館にほぼ来ない人には、特徴的なニーズがある。そういったニーズに対して、例えば、選書、排架の仕方やレファレンスサービスをどうあるべきかを考えていきたい。

 テーマ別排架の例として、札幌市図書・情報館はよく知られている。テーマは、レファレンス質問の先取りだという。棚を絶えず入れ替えるため、本を選ぶプロセスを、パスファインダーならぬ、実際の棚でやるわけで、担当職員は大変だが、チーム制にすることで実施を担保している。同館にある「ハコニワ」に相当するものとして、県立図書館には「司書箱」があるが、とてもよいと思う。

 那須塩原市図書館みるるは、18万冊の蔵書に対して、広々とした空間を持ち、書架にも余裕がある。いわゆる面出し、面見せも多い。「本との思わぬ出会い」は図書館に求められるものであり、書架はその出会いの場であると考えているからで、見せるための排架をしている。また、「コミュニケーションや交流を通じて、利用者の知識や活動の成果を蓄積する」というコンセプトも興味深い。利用者が行なったことも図書館の資源とし、それを次の人が使っていくという循環である。

 鳥取県立図書館では、課題を解決するための「お困りごとナビ」を作っている。パスファインダーの一種だが、DVや離婚など、カウンターでは聞ききづらいものなので、館の入口の外に置いている。関連する本や資料だけでなく相談窓口も紹介されている。「お困りごとナビ」は図書館の重要な機能は情報提供機能であるという理念に基づいている。課題を解決してもらうことが重要で、そのために相談の窓口に行ってもらうのがよいと考えているのである。ビジネス支援、子育て支援、医療健康情報サービスなども早くから取り組み、先駆的なサービスと思われているが、情報提供機能を重視した"ザ・図書館"をめざした結果である。

7.図書館員の役割と県立図書館への期待

 「図書館とはこういうものである」という図書館観について、変えてはいないところもあるが、変えてよいところ、変えるべきところがある。その仕分けをいま私たちは求められている。図書館ごとのビジョン、つまり図書館一般ではなくて神奈川県立図書館のビジョンは何かが大事である。ビジョンは、やはり利用者からスタートするべきである。

 今後、求められる図書館員の役割は、学習コーディネーターであると考えている。利用者が学ぶ、換言すれば問題を解決する、あるいは情報を利用するとき、それをサポートするという視点に立ち、サービスを組み立てるということである。そのためには、図書館員は、主題の知識、教授・学習法の理解を身に着けるべきであろう。図書館利用者の問題解決、情報利用あるいは学習を支援・促進する、つまりコーディネートしていく、そのために四つのリソースを使う、という大きな理念、モデルを図書館としてつくっていくことが求められていると思う。

質疑応答

Q いまの若者のなかには、困ったことがあったときに図書館に行けばよいという発想があまりないように思う。当県立図書館でも、若者が使うSNSやインスタグラムをやっているが、多分知られていない。県立図書館として若い人たちに図書館をもっと知ってもらうためにどういうことをしていけばよいか。何か例があればご教示いただきたい。

A 一例を挙げる。先ほどのみるるでは、インスタグラムを活用した写真展をやっている。地域の写真を撮ってハッシュタグをつけてインスタに投稿してもらい、その写真を実際に図書館で掲示する。利用者が作った写真展である。ポイントは参加型であること、若者などの潜在的利用者に参加してもらう仕組みを作るということにある。図書館は、来館して利用すればその利便性がわかる。とにかく一回来て利用してもらうためにどんな手段でもよいと思う。

 また、富士通Japanと一緒にAIを開発した経験からすると、システム的にやる方法もある。図書館以外のウェブサイトから図書館のウェブサイトに飛ぶことが考えられる。つまり、利用者が調べそうな自治体のウェブページに関連する本のリンクを貼る。一個一個、人手で対応するのは大変なので、AIに任せて関連する本を表示しておいて、図書館のOPACに飛ぶ仕掛けである。もちろん、AIをかまさなくてもできるとは思う。来てほしい若者たちが見るようなサイト、SNSからリンクを貼って誘導するような仕組みを作ることも考えられる。

Q 利用者に対する解像度を上げる話について、アンケートなど来館利用者に対する解像度を上げる努力はかなりしていると思っている。非利用者、非来館者に対する解像度の上げ方について、ご教示いただきたい。

A 来館利用者のニーズは、どの図書館もきちんとリサーチしている。さらに、図書館を利用してどういう成果が出たかというところまで何らかのかたちでつかめるとよい。事例でいえば、例えば鳥取県立図書館は、ビジネス支援を受けて成功した事例を「図書館で夢を実現しました大賞」として表彰し、漫画にして図書館に展示している。エピソードをうまくつかんで共有すると、「なるほど、図書館はこういうふうに使えるのだな」と皆がそれに続いていく。図書館には来ていない皆さんにもそれを伝えていくというのはひとつのやり方である。

 図書館に来ない人のなかにも、「図書館を使ってもらったらいいな」「図書館に来てくれればいろいろわかるのに」という人たちがたくさんいる。この人たちも、相談などには、図書館以外のところ、例えば、役所、公的施設、企業、学校などには行っている。利用者を直接につかむのではなくて、その利用者が属している、関わっている、出かけている、相談しているところをうまくつかんでいくことが有効である。例えば、県庁だけでもいろいろな部署にそういう人が来ている。それぞれのところに聞くと、どのような利用者がいるのかがわかり、そのなかに図書館で対応できるニーズはあるはずである。非来館者の解像度を上げることにつながると思う。

Q いまAIと協働していくために、司書はどんな勉強、研鑽をしていけばよいか。

A AIと協働するためにはAIをある程度は理解しなければいけない。AI、特に生成AIはーむかし新人類という言葉があったがー「何を考えているかよくわからないが、特定の仕事がよくできる新入社員」である。新入社員が入ってきたら、確認することは二つ。一つは、知識・経験、つまり何を学んできたか、どんな知識を持っているか、どんな資格を持っているかなど。これは、AIでいうと学習データにあたる。もう一つは性格で、AIでいう"振る舞い"である。きちんと根拠のあることしか答えないAIもあるし、学習したなかで多分こうだと答えてしまうAIもある。知識と性格という二つを、各AIについて理解していくことである。AIを使いこなすまでは必要はないと思う。AIを深く掘り下げるのはエンジニアの役割であり、私たちはできあがったものを使えるくらい、あるいはできあがるためにもっとこうしてほしいといえるくらいに、知識と性格について把握しておく程度でよいだろう。むしろ人間にしかできないこと、例えば、どうしたら責任を持って"おすすめ"できるか、パスファインダー的な棚をどうつくればよいか、といったことに時間を使ったほうがよいだろう。司書だからできること、図書館の資源を使ってしかできないことだからである。

Q "おすすめ"のかたちのサービスをやっていきたいが、伝統的な図書館学で叩き込まれた「良書の推薦はしません」が気になる。ずっと矛盾を感じていて、もうそれを言わなくてよいのではないか、もしくは言い回しを変えたいと思うが、いかがか。

A 私ももうよいと思う。「良書」という言葉が一人歩きしてしまっている。おすすめするということは「これがよい」と選んでいることであり、おそらくレファレンスサービスなどではすでにそう選んでいるはずである。ポイントは、なぜこれを選んだかという判断・価値基準を一緒に添えることである。これは人間だからできることである。AIはなぜそう考えたかを言えないのが"定義"なので、基準を示すことができない。「ここでいう"良書"とはこういうものだ」ということができれば、堂々とおすすめしたらよいと思う。とはいえ「良書」というと嫌う人もいるので、それにかわるかっこいい言葉を作ってもよいかもしれない。

Q AIを利用して目録を作成したりデータベースを整備したりすることはできる、もしくは今後できるようになるのだろうか。

A できるまでには当分かかると思う。例えば、本を開いたとき、ここが柱だ、ここがノンブルだ、ここが見出しだ、といった読み取りも、じつはいまの技術でも完全には難しく、人間は高度な判断をしている。本によって千差万別、表示の仕方が一定でないためである。同様に奥付の情報を読み取って、目録のデータをつくるのもなかなか難しい。ある程度はできるが、本当に実用的なものにするには人間が絡まないとできないと思う。