9とやのの(等夜乃野)つむがの(都武賀野)
二、霊峰「大山」 ― 相模嶺・相模川
長谷章久『万葉東歌の世界』によれば、「とやのの」は現在の津久井町鳥屋あたり、「つむがの」は愛川町ではないかと推測されています。
等夜(とや)の野に兎狙はりをさをさも
寝なへ児ゆゑに母にころはへ
(万葉集巻十四3529 よみびとしらず)
【意味】
とやのので兎をねらうようにろくに寝ていない。
あの娘のことで母親に叱られても(逢いに行く機 会を狙っている)。
「つむがの」の例歌には「上志田」とあります。現在の愛川町にはその字が残り、田野が広がっています。
つむがのに鈴が音聞こゆ上志田の
殿の仲子(なかち)し鷹狩すらしも
(万葉集巻十四3438 よみびとしらず)
【意味】
つむがのに鈴の音が聞こえる。上志田の殿の 次男が鷹狩をするらしいよ。

また、国土交通省のホームページ「全国の109の一級水系にまつわる和歌・俳句一覧」に神奈川県の川として名前が出ているのが「相模川」で、そこに次の歌が紹介されています。
夕月夜さすや川瀬の水馴(みな)れ棹
なれてもうとき波の音かな
(金槐和歌集 635 源実朝)
【意味】
夕月夜に川瀬を行く舟、その舟の棹が水によく
なじんでいるように、波の音は聞きなれている
のだがそれでもやはり疎ましくてならない。
