公開

明けましておめでとうございます。

この文章を作成中においても、世界各地で変異株が席巻し始め、未だ不安な気持ちが拭い切れきれませんが、今年こそ、大手を振って多くの方に来館いただき、少しでも皆様方の研究などに役立てるよう、館員一同、強い思いでおります。今年もどうぞよろしくお願い致します。

当館は、工学、産業技術、自然科学分野の専門書や社史、特許・規格、専門誌を有する「ものづくり情報ライブラリー」ですので、私の大好きな映画の原作は通常の図書館より少ないとは思いますが、印象に残った所蔵図書と関連する映画について、少し長くなりますがお話しさせていただきます。

第1章『われはロボット』

この図書は、ロボット工学、哲学、心理学、倫理学など様々な観点から読むことができ、人類の未来を予言している読み方もできる小説です。映画は小説の中で掲げられている「ロボット工学の三原則」(注1)をモチーフにし、5人に1人はロボットを所有する2035年のシカゴを舞台にした見事なサスペンスアクション映画となっています。

当館では、初心者向けロボットの作り方から、ロボット制御学、日本ロボット工業会の機関誌「ロボット」など、豊富な資料を所蔵しています。その中で『ロボットセンサーフュージョンの基礎と分析手法』(渡邊睦著 科学情報出版, 2021年)においては、2016年度のロボット市場は約2.6兆円、知能ロボットが占める市場は約4,250憶円で16%だが、2035年度には、世界ロボット市場が約28.4兆円、知能ロボットが占める市場は約14.5兆円となり、51%まで増加すると予想されているとのことです。映画が現実となるか? そのように映画を見ていただくとますます手に汗を握ることとなると思います。

注1:ロボット工学の三原則
    • 第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
    • 第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
    • 第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

第2章『不都合な真実』

アメリカの元副大統領アル・ゴアがライフ・ワークとして各地で地球温暖化の危機を訴えた講演の様子を2006年に映画化し、翌年に書籍化しました。

ゴアは世界のあらゆる地域で起こっている温暖化の影響を自分の足で確認し、本の中で紹介しています。加えて17年後、2024年に生きている子どもや孫たちと対話ができたら、「あなたたちは、自分のことしか考えていなかったから、地球環境の破壊を止められなかったの? 止めようとしなかったの?」の問いに、私たちの答えは、どのようなものになるだろう? と書いています。

ところで、2021年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書も「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない。」と断定しました。時を同じくして2021年、真鍋淑郎博士が、気候研究分野においてノーベル物理学賞を受賞しました。IPCCの評価報告書の支柱でもある数値モデルの興隆につながったことが大いに評価されたものです。地球温暖化に科学的結論が出た2021年。ゴアが対話する2024年はもうすぐです。

第3章 『風をつかまえた少年』

2001年、アフリカの最貧国、マラウイで、学費を払えず退学になった14歳の少年が、図書室で借りた図書を頼りに、風力発電をつくり、家に明かりをともしたというノンフィクションです。映画は原作に忠実に制作されています。図書では風力発電の原理などについても記述されており、科学に関心のある方にもおすすめの図書です。マラウイという国において、飢餓に苦しむ状況を追体験せざる得なく、痛く、差し迫る作品ですが、1人の少年の人生を変え、一つの国を世界に知らしめるきっかけとなった、小さな図書室と司書の存在意義が再認識できる話です。

エピローグ

  • 図書『刑務所のリタ・ヘイワース』 (『ゴールデンボーイ』スティーヴン・キング著・朝倉久志訳 新潮社, 1988年に所収)
  • 映画「ショーシャンクの空に」(アメリカ ティム・ロビンス主演 1994年)

残念ながら当館所蔵図書ではありませんが、図書館が印象的に登場する大好きな映画を最後に紹介します。

冤罪で有罪となった主人公が絶望的な状況の刑務所の中で、懲罰覚悟で音楽を流したり、図書館を囚人仲間で充実したりする場面があります。「希望は素晴らしい。何にも変え難い。希望は永遠の命だ」「希望はいいものだ。多分最高のものだ。素晴らしいものは決して滅びない。」今のコロナの状況と重ね合わせても見ることができるこの映画で、図書館は希望のシンボルとして登場しています。

結び

当館は冒頭にも紹介しましたが、専門的な図書館です。皆さんのお役にたつことのできる図書などの資料収集、そして、研究などに没頭できる落ち着いた空間作りに、館員一同日々全力投球をしています。ぜひお越しください。

何よりも皆様が健康で、良き1年となることを願い、新年の挨拶とさせていただきます。

神奈川県立川崎図書館 館長 日比野典明


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