「セーラー服」といえば、女子中学生・高校生が着ている学校制服、というイメージが強いかと思います。
セーラー服の発祥はイギリスで、もともとは海軍水兵の軍服であったことは有名ですが、実は日本でも、もともとは男子の制服として着用されていました。女子生徒の服としても、当初は「袴」に代わる「運動服」として用いられていました。
女子学生の「通学用制服」としての日本最初のセーラー服は、著者の研究によれば、実際には名古屋の金城女学校が大正九年に制定した制服が起源ではないかとされています。(p.7)
2021年で、セーラー服は制服として採用されて、百年を迎えています。本書では、全国900校以上の高等女学校のセーラー服を研究対象とし、その普及の歴史についてさまざまな角度から述べられています。
例えば、四年生の先輩が縫った制服を三年生が着ていた(埼玉県・児玉高女)、セーラー襟の後ろに垂れる部分が四角形ではなく、三角襟であった(東京・大妻)、姉妹校ではないのに、横浜の共立女学校の制服を参考にして、制服が作られた(福井・北陸女学校)など。
一つ一つのセーラー服の制定に歴史があり、都道府県によって普及率の差があったことも紹介されています。
セーラー服はやがて、日中戦争の長期化によって原材料の輸入が困難になったこと、また日本古来の服装文化ではなかったことから、着用に制限がかかり、文部省標準服の制定が求められるようになります。
そんな状況下でも、「セーラー服を守りたい」という女子生徒たちの思いが、今日まで引き継がれてきた学校制服としての「セーラー服」の歴史を作ってきました。彼女たちは学校側や国から「強制」されたわけではなく、自分たちの意志で好んでセーラー服を着用していた、と本書では述べられています。(p.305)
現在は制服がブレザーの中学校、高校も多くなっていますが、セーラー服姿の学生を見かけた際には、セーラー服の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
『セーラー服の誕生 女子校制服の近代史』 刑部芳則著 法政大学出版局 2021年
請求記号: 383.15/26 資料コード:23307176 OPAC(所蔵検索)
(県立図書館職員:かつてはセーラー服を着ていた)