2020年初旬のコロナ流行をきっかけに、腕時計型ウェアラブル端末を購入しました。体温測定機能付きで、何時でもどこでも数秒で測れます。それまでは脇で挟む体温計で10分程掛かって測っていたので、朝の忙しい時間にもササッと測れるようになり大変便利です。
でも測定結果を見ると、普段使っている体温計で測るより数値が高い。そもそも手首から数秒で測る体温は正確なの?心拍数や血圧測定機能もあるけど、これは何をどうやって測っているの? いったいどのタイミングで測るのがいいの?
答えを知りたくて手にした本が、この『からだを測る』です。さっそく第1章「体温を測る」を読んでみると、電子体温計はセンサによってサーミスタ方式と赤外線方式の2種類あることが分かりました。
それぞれ、「サーミスタは熱によって抵抗値が変化する素子です。電子体温計では、サーミスタが測温部と呼ばれる体温計の先の部分に埋め込まれています。身体から伝わってきた熱で測温部が温まるとサーミスタの抵抗値が変化します。その変化をコンピューターで測定し、温度に変換して表示します。(中略)正確な体温を測るためには、体温と体温計が同じ温度になるまで待つ必要があります。」、「赤外線による体温測定では、サーモパイルという温度を電圧に変換する素子を使って赤外線の量を測ります。サーモパイルが組み込まれたセンサ部を額や鼓膜に向けると、それらの表面から発生する赤外線の量が電圧に変換されます。コンピューターで電圧を測定し、それを温度に変換して体温を表示します。」と説明があります。
また本書には、「測るタイミングも重要です。運動や入浴、飲食から30分以上経過してから測ります。起床後に測る場合は、起きて動き出す前に測るか、動き出して30分以上経過してから測ります。」と正しい測り方が載っていました。
私が今まで使用していた、脇で挟んで測る体温計はサーミスタ方式です。最近購入したウェアラブル端末は、どの方式で体温を測っているか取扱説明書に記載がありませんでした。そして測っていたタイミングは、脇で挟む体温計で測る時は朝食を食べ終えて座りながら、ウェアラブル端末で測る時は朝食の準備をしながら立った姿勢で行っていました。
「体温を測るだけだから、数値が違う理由は簡単に分かるだろう」と思って読み始めたのですが、知れば知るほど「明確な答え」から遠ざかっている気がします。
今まではなんとなく画面に表示された数字を見て、「変わらないなぁ」「低いな」と思う程度でした。それは「医療機器ではないので正確な数値ではない。だからただの気休めで測っている」という意識からでしたが、本書を読んで、センサの精度の重要性と、それを踏まえた上で「ものさし」として活用するという考えを知りました。
本書では、体温の他に、血圧、体組成、歩数、睡眠の測定について、その原理、どのような測定方法があるか、正しい測り方、一日のうちどう変化しどのタイミングで測るのが良いのか、数値を何に活かすかが分かりやすく解説されています。さらに、グラフや図、測定機器の写真なども豊富で、読みやすい内容となっています。
みなさんも本書を読みながら、自宅にある体温計などの「からだを測る」機器の仕組みについて考えてみませんか。いろいろな気づきがあって楽しめる一冊になると思います。
『からだを測る』 澤野井幸哉・志賀利一著 電気学会 2020年
資料番号:81737934 請求番号:492.8 60 OPAC(所蔵検索)