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トピックスのとびら

 図書館には図書、雑誌、地域資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
 そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.99 日本スペイン交流400年(2013年10月発行)


 1613(慶長18)年、当時の仙台藩主伊達政宗がスペインに派遣したのが慶長遣欧使節団です。フェリペ3世への謁見を果たした彼らは、日本がスペインに公式に派遣した最初の使節団でした。2013年から2014年にかけてはその400周年にあたり、神奈川県立図書館でも「スペインの歴史と旅」をテーマにした図書館カレッジを11月に開催します。
 日本とスペインは、両国を隔てる地理的な距離にも関わらずお互いの関係を深めてきました。スペインが日本に与えた影響をを今に伝えるものはたくさんありますが、たとえばカステラは、カスティリアというスペインの地名が由来であると言われています。またスペインにおいても、ハポン(japo'n)という、スペイン語で日本を意味する姓をもつ人々がコリア・デル・リオという地に暮らしていたりします。現在にも、スペインのサッカーチーム「レアル・マドリード」やカジュアルブランド「ZARA」は日本でも大人気。「クレヨンしんちゃん」が2001年スペインで放映されると日本ブームが起こり、マンガファンや日本語学習者の増加、日本食(スシ)人気を引き起こしています。文化交流の扉はいつの時代も開かれています。

図書のとびら

 『異國叢書 第9卷 ドン・ロドリゴ日本見聞録』
村上直次郎訳註 駿南社 1929年 請求記号:210.18 28 9(10365922) 公開

 ドン・ロドリゴは当時スペイン領だったフィリピンの元総督で、1609年に召喚命令を受けメキシコに帰る途中、千葉県の岩和田に漂着した人物です。本書に描かれているのは、岩和田の貧しい人々が漂着した自分たちに乏しい食料を分け与え、親身になって助けてくれたことや、会見した徳川秀忠が駿河に隠居した家康に常に伺いを立てていたことなど。ちなみに日本酒についてロドリゴは、「予は葡萄にて製したる物の次には此酒に及ぶものあるを知らず」と書くほど気に入ったようです。村上氏はスペイン語で書かれた原文を和漢混合文で訳しており、またスペインはイスパニアという、より発音に近い表記が用いられています。

『スペインと日本 ザビエルから日西交流の新時代へ』
坂東省次編 川成洋編 行路社(イスパニア叢書5)2000年 請求記号:210.18JJ 224(21289970) 公開

 1549年8月15日、教科書に載っている肖像画があまりに有名な、聖フランシスコ・ザビエルが鹿児島に渡来しました。ザビエルの生誕地は、彼が6歳の時アラゴン王フェルナンド2世によって征服されたナバラ王国であり、したがって彼は日本の地を踏んだ最初のスペイン人ということができます。本書では、日本に文化的な衝撃を与え一大変革をもたらしたザビエルの渡来を中心に、スペインと日本の交流史を研究者や作家がそれぞれの視点から語っています。巻末に掲載されている「日本・スペイン交流史文献」の一覧は非常に充実したものであり、知識を深めたい人は必見です。

『イダルゴとサムライ 16・17世紀のイスパニアと日本』
フアン・ヒル著 平山篤子訳 法政大学出版局(叢書・ウニベルシタス693) 2000年 請求記号:210.5KK 586(21341417)公開

 本書は、大航海時代に日本とイスパニア(スペイン)の間で起きた歴史的事件を、主にイスパニア語の史料を通して詳細に描いた研究書です。大転換期にあたるこの時代はイスパニア・日本間を非常に高いレベルの外交使節が初めて往来した時期でもありました。イダルゴとはドン・キホーテの肩書で有名な、イスパニアの爵位を持たない下級貴族、また貴族階級と平民の間に存在した身分を指しています。著者はイダルゴとサムライといった通俗的なイメージに留まらない、新たな歴史像を読者に語りかけています。

『近世日本とルソン ―「鎖国」形成史再考―』
清水有子著 東京堂出版 2012年 請求記号:210.5 843(22597793)公開

 当時のスペイン領フィリピン諸島のルソン島に置かれたルソン総督府は、スペインによるアジア統治の窓口であり、近世初頭の日本に大きな影響を与えました。にも関わらずポルトガルに比べて軽視されてきたことに著者は異議を唱え、日本とスペインの濃密な関係を本書で浮かび上がらせています。キリスト教の宣教だけに留まらないルソン総督府の日本への関心は、外交上のどこにあったのか。江戸幕府の鎖国政策のきっかけともなったルソンとの対立は、実は幕府とスペインではなく、幕府とキリシタン民衆の対抗軸だったのではないか。膨大な史料に裏づけられた考察は、好奇心を刺激してやみません。

『フランコと大日本帝国』
フロレンティーノ・ロダオ著 深沢安博ほか訳 晶文社 2012年 請求記号:236.07 119(22582605) 公開

 強国と肩を並べるまでに登りつめた国から、禍や不吉なニュースをもたらす野蛮で凶暴な国へと180度転換したスペインの日本に対するのイメージ。1936年から1945年にかけたわずか数年の間に、対日宣戦布告をしようとするまでに日本とスペインの関係は転変しました。著者はその理由を、内戦、日中戦争、第二次世界大戦を背景にしたスペインの対アジア外交を論ずることで明らかにしようとしています。
 ちなみにタイトルは、実は日本のことをよく知らなかったフランコ将軍にちなんでつけられたとのこと。もっと相手のことを知るべきだという著者のメッセージが伝わってきます。

雑誌のとびら ~スペインのいまを知る~

「世界経済の新常識 欧州ドミノ倒し スペイン経由"中国直撃"の恐怖」
『AERA Biz』朝日新聞出版 24巻17号(通巻 1279号) アエラ臨時増刊 [2011年4月15日]p70-74 請求記号:Z051-203

 スペイン・ショックが起こり、欧州経済が混乱する可能性はどれくらいあるのか。そしてその影響はどこまで広がるのか。記事では各証券会社による分析を軸に、今後考えられるシナリオを想定し解説しています。
 いつ起きるのかはまったく見通せないスペイン・ショックですが、もし起きればユーロ内のドミノ倒しだけに終わらないかもしれません。スペインをはじめとした欧州の国債を多く保有する中国もまた、スペイン・ショックに巻き込まれるだろうと指摘しています。

「欧州 ギリシャ、スペイン不安は続く 経済は依然厳しい状態に」
『エコノミスト』毎日新聞社 91巻1号(通巻4266号)[2013年1月1・8日]p36-37 請求記号:Z330.5-5

 特集「2013年 世界と日本 大予測 ; 世界経済」の一つで、欧州経済はみずほ総合研究所ロンドン事務所長の吉田健一郎氏が解説を担当しています。
 現在欧州債務危機が小康状態にあるのは、まったなしの状況に後押しされる形で、危機発生後の安全網と発生予防策の二つの面でいくつか進展が見られたからだと述べています。しかしギリシャ、スペイン両国の債務状況が改善されたとは言い切れず、さらに内需が非常に弱いことなど、未ださまざまなリスクを抱えているとしています。

「イタリア、スペインの国債と銀行」
『立命館国際研究』立命館大学国際関係学会 25巻3号(通巻86号)[2013年3月]p643-664 請求記号:Z319-523

 金融・証券市場のグローバリゼーションを研究している代田純氏の論文です。ギリシャ、アイルランド、ポルトガルに続き、イタリア、スペインもまた財政赤字と金融不安を抱えているヨーロッパ。代田氏は本稿で、特にイタリアとスペインの政府債と銀行の厳しい現状を専門的に分析しています。欧州中央銀行信用の拡充によって金融恐慌の発現がなんとか抑止されているという状況の危うさは、巨額の財政赤字を抱え際どい綱渡りをしている日本も同じであり、考えさせられる内容です。

「スペインに拡がるオルタナティブ経済「時の銀行」への取り組み お金がなくても豊かに生きる」
『金曜日』金曜日 21巻29号[2013年7月26日]p52-54 請求記号:Z051-522

 経済危機に喘ぐスペインでは2011年5月15日に起きた大規模なデモをきっかけに、市民運動「15M」が生まれました(スペイン語で5月はMayo)。人々は「住民議会」と呼ばれる住民グループを作り、お金に頼らない人の輪を急速に広げています。記事では住民同士がお金を使わずにサービスをやりとりする「時の銀行」などを取り上げ、人々が互いに知り合い、誰もが人の役に立っているという自信を深める社会のしくみを取材しています。

「ルポ スペイン 行動する市民が築く民主主義」
『世界 』岩波書店 845号[2013年7月]p280-287 請求記号:Z051-3

 米国の「ウォール街を占拠せよ」に先立つスペインの市民運動「15M」は、人々に新しい政治文化と希望を与えました。今スペインの市民は、医療や福祉、教育予算の削減等を強いる既存の政治に対抗し、人と社会のネットワークに支えられた新たな民主主義を創りだそうと行動しています。ジャーナリストの工藤律子氏は、悪化する公教育や公立病院の経営の民営化などと戦う人々の様子を取材し、日本においても市民がもっと課題を議論し明確にした上で政治家に突きつけるくらいの行動力が欲しいと結んでいます。

視聴覚資料のとびら ~ギター発祥の地スペイン・名ギタリストの演奏を聴く~

アンドレアス・セゴビア(1893~1887年) スペイン
『SP盤に聴くギターの巨匠たち アンドレス・セゴビアの芸術』

アンドレス・セゴビア演奏 1949年 ギター協奏曲 第1番 ニ長調 作品99(カステルヌオーヴォ=テデスコ),タランテラ(カステルヌオーヴォ=テデスコ),南国風ソナチネ(ポンセ)他 請求記号:CD12(41033598)視聴覚資料室公開
 亡くなる94歳まで生涯現役のギタリストであり続けたセゴビアは、「ギターの神様」と呼ばれた20世紀最大の巨匠です。それまで一般的に低い地位にあったギターの水準を独学で飛躍的に高め、コンサート楽器として世間に認められるまで引き上げました。「セゴビア・トーン」と呼ばれた音そのものの魅力、豊かな「歌」にあふれた演奏のすばらしさは世界中の人々に讃えられ、晩年スペイン国王からサロヴレーニャ公爵の位を贈られています。

ナルシソ・イエペ(1927~1997年) スペイン
『禁じられた遊び イエペス』

ナルシソ・イエペス演奏 1960年 禁じられた遊び(ロマンス),メヌエット(ラモー),ソナタ ホ短調(スカルラッティ,D),スペイン組曲(サンス),メヌエット第5番ニ長調(ソル)他 請求記号:CD13 イエヘ(41036088)視聴覚資料室公開
 フランス映画「禁じられた遊び」の音楽をギター1本で担当し、世界中の人々を感動させたのがイエペスです。彼が映画の主題曲に選んだ《愛のロマンス》のメロディが耳に残っている人も多いのではないでしょうか。より現代的、知的なギター芸術を創造するために表現の可能性を追求し、6弦ギターから10弦ギターを開発し弾くようになったイエペスは、セゴビアの「情」に対して「知」のギタリストとも言われています。

ジョン・ウィリアムス(1941年~) オーストラリア
『ロドリーゴ:アランフェス協奏曲』

ジョン・ウィリアムス演奏 フィルハーモニア管弦楽団 ルイ・フレモー指揮 1984年 アランフェス協奏曲,ある貴顕紳士のための幻想曲(ホアキン・ロドリーゴ)他 請求記号:CD12 ロトリ(41258419)視聴覚資料室公開
 現代最高峰のギタリストであり、「キング・オブ・ギター」として世界に君臨している存在です。彼の完璧な技巧、すばらしい表現力は、17歳でデビューした当時、師であるセゴビアからも「ギターの貴公子」として認められるほどであり、以後世界中で絶賛され続けています。また彼はクラシック音楽の枠を飛び越え、ポップスやワールドミュージック、現代音楽との交流も図りました。年内での引退表明がなんとも残念です。

ペペ・ロメロ(1944年~) スペイン・アメリカ
『スペインの夜』

ペペ・ロメロ演奏 1993年 グラン・ホタ(演奏会用大ホタ)(タレガ),幻想曲ニ短調(ソル),組曲《特性的小品集》作品92:第12番《朱色の塔》(アルベニス)他 請求記号:CD13 タレカ(41043456)視聴覚資料室公開
 フランコ独裁政権から逃れアメリカに移住したセレドニオ・ロメロが、3人の息子と共に結成したのが「ロメロ・ファミリー四重奏団」です。彼らはスパニッシュ・ギターの王族とも呼ばれ、ギター四重奏団として優れた演奏活動を世界各地で行いました。ペペ・ロメロはその「ロメオ・ファミリー」の次男です。彼の風格と深みのある演奏は人々を魅了し、世界的なソリストとしても名声を博しています。

パコ・デ・ルシア(1947年~) スペイン
『THE GUITAR TRIO』

パコ・デ・ルシア演奏 アル・ディメオラ演奏 ジョン・マクラフリン演奏 1996年 ラ・エスティバ, ビヨンド・ザ・ミラ-ジュ, ミッドサマ-・ナイト他 請求記号:CD25(41055195)視聴覚資料室公開
 従来は歌や踊りの伴奏に過ぎなかったフラメンコ・ギター。1879年スペイン・マドリードに生まれたラモン・モントーヤによってソロ(独奏)が開拓され、以後続々と名手が生まれています。パコ・デ・ルシアはその流れを汲む、現代を代表するフラメンコ・ギターのカリスマです。彼は、モダンなスタイルを取り入れた現代的フラメンコを新しく創り出しており、紹介しているアルバムでも組んでいるのは、ジャズ・ギタリストの2人です。

※参考文献:CDでわかるギターの名器と名曲 濱田滋郎・村治佳織著 ナツメ社 2011年(請求記号:AV763.55 5)