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トピックスのとびら

 図書館には図書、雑誌、地域資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
 そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.94 サッチャリズムの光と影(2013年5月発行)

 今から34年前の1979年5月4日、英国総選挙で勝利した保守党の党首マーガレット・サッチャーが、先進国としては初の女性首相に就任しました。その後11年間にわたってさまざまな改革を行ったサッチャー。今年の4月8日、87歳でなくなった彼女の経済政策はサッチャリズムと言われ、経済活性化を成功させたと評価をされている一方で、失業率を悪化させたなどの批判もあります。サッチャーは規制緩和や民営化を強力に押し進めることで、それまでの大きな政府から小さな政府へとイギリスを大きく方向転換し、英国病と呼ばれた経済の長期低迷からの脱出を図りました。
 大きな変化を英国にもたらしただけでなく、アメリカのレーガン元大統領の「レーガノミクス」や日本の中曽根元首相の行政改革など世界にも影響を与えたサッチャリズム。今月は、サッチャリズムの光と影に迫ります。

図書のとびら

『現代イギリス社会史 1950-2000』
アンドリュー・ローゼン著 川北稔訳 岩波書店 2005年 請求記号:233.07PP-105(21833983)書庫3門
 20世紀後半に劇的に変化したイギリスの50年間を、さまざまな切り口から丁寧に読み解いたのが本書です。王室・教会・労働組合などの伝統的な権威が衰退する一方で上昇する生活水準。新たな貧富の差やマイノリティ・女性の社会進出。データを引用しつつ展開されるわかりやすい説明は、変化するイギリス社会の実態を知る手助けとなり、サッチャー政権が誕生した時代の流れをつかむことができます。

『サッチャー時代のイギリス』
森嶋通夫著 岩波書店(岩波新書) 1988年 請求記号:312.3X-206(20009627) 書庫3門
 2004年に亡くなった著者は、経済学者としてイギリスのエセックス大教授、ロンドン大教授を歴任し、現地でサッチャリズムがもたらす変化に接しました。サッチャーが首相の座について以来イギリスはどのように変わったか、まさにリアルタイムで分析しているのが本書です。経済的な問題だけでなく、サッチャーが強大な権力を握る背景となったイギリスの政治体制の状況や、具体的な政策に関しても論じられています。

『サッチャリズムとブレア政治-コンセンサスの変容,規制国家の強まり,そして新しい左右軸-』
小堀眞裕著 晃洋書房(立命館大学法学部叢書第8号) 2005年 請求記号:312.33PP-26(21818299)公開
 イギリスでは戦後、保守党と労働党という二大政党の間で一定の「コンセンサス」政治が形成されました。イギリス現代政治の研究者である著者は、この「コンセンサス」政治にサッチャリズムが何をもたらしたのか、そして長い保守党政権の後登場したブレア労働党政権はサッチャリズムとの間にどのような「コンセンサス」を形成したのか、その変容を描き出しています。

『サッチャ-私の半生』
マ-ガレット・サッチャ-著 石塚雅彦訳 日本経済新聞社 1995年 請求記号:289.3-1703-1(21855762) 書庫2門
 イギリス初の女性首相となり強烈なリーダーシップを発揮したサッチャーが育ったのはどのような環境だったのでしょうか。全世界でベストセラーとなった『回顧録』の後を受けて出版されたのが、サッチャーが首相になるまでを綴ったこの自伝です。家族経営の雑貨店の娘として生を受けたサッチャーが、市長にまで上りつめた父を尊敬し政治を志した少女時代。結婚、初当選、そして保守党党首への挑戦。変わらぬ信念に生きた日々を語っています。

『サッチャ-回顧録 上・下 ダウニング街の日々』
 マ-ガレット・サッチャ-著 石塚雅彦訳 日本経済新聞社 1993年 請求記号:312.33BB 上巻91(20627071)下巻92(20627089)書庫3門
 ダウニング街とはイギリスの首相が住む官邸の所在地であり、官邸、またはイギリス政府を指す意味でも使われています。サッチャーは英国経済の低迷という難題に立ち向かうために、強い意思でもって自分の考え、政策を実現しようとします。自ら確立した確固たる政治哲学、そしてその思想に対する自信が伝わってくる自伝です。国内問題に留まらず、欧州共同体や共通通貨に関することなど当時の状況が窺え、非常に興味深い内容です。

『ブレア回顧録 上・下』
トニー・ブレア著 石塚雅彦訳 日本経済新聞出版社 2011年 請求記号:312.33-36 上巻1(22561310) 下巻2(22561328) 公開
 サッチャリズムによる改革がもたらした社会の歪。行き過ぎた効率主義を修正するべく、長年にわたる保守党から政権を奪回し、「第三の道」を掲げて新党首となったブレア元首相。サッチャーと同じように、約10年続く長期政権を率い、「ニュー・レイバー」の時代を作り上げた著者が何を考え、いかにさまざまな問題を乗り越えたのか、振り返っています。

雑誌のとびら

「英国中等教育における若者の教育・訓練政策-サッチャー政権以降の展開と新政権における改革方針-」
『アカデミア 人文・自然科学編』(南山大学紀要) 2号[2011年6月]p71-82 請求記号:Z051.6-30-4
 教育行政学、教育制度学を専門とする清田夏代氏が、英国の中等教育制度において、若者の教育・訓練政策がどのように変遷してきたのかということを論及しています。サッチャー政権は1988年教育改革法を制定し「ナショナルカリキュラム」を定め、イギリスにおける教育の中央集権化と市場原理を導入しました。英国の教育の歴史において、国家と公教育との理念的な関係を根本的に変えるようなサッチャーの改革はどのような影響を与えたのでしょうか。

「政治とは国の物語をつくる仕事 サッチャー、ブレア、キャメロンまで 英国リーダーが描いた戦略ストーリー」
『週刊東洋経済』東洋経済新報社 6302号[2011年1月8日] p66-67 請求記号:Z330.5-2
 「特集 ストーリーで戦略を作ろう Part2 人物編」で取り上げられたうちの一つです。国の本当の戦略力は成熟、衰退局面のときにこそ試されるとし、英国は戦略ストーリーを学ぶ格好のモデルであると述べています。サッチャリズムの福祉の切り捨てを、ブレア政権は教育医療への投資の大幅拡大によって修正しました。そしてリーマンショックにより、キャメロン政権は政府がこまで担ってきた仕事の一部をNPOや社会企業家にまかせようとしています。このような英国の戦略から、日本は何を学ぶべきなのでしょうか。

「レーガンとサッチャー、指導者たちの絆」
『中央公論』中央公論新社 127巻9号(通巻1542)[2012年6月]p118-123 請求記号:Z051-4
 国際政治学者である村田晃嗣氏が、レーガンとサッチャーという長期政権を築いた2人の信頼関係が、1980年代の米英の「特別な関係」を支えたと考察しています。ともに「小さな政府」と反共主義を掲げた二人は、1980年代の象徴でもありました。そして今、当時の政治指導者たちが映画化され注目されているのは、逆に今日の政治指導者たちに対する時代の苛立ちと警鐘なのではないかと問題提起しています。サッチャーとレーガンの政策は無条件に賞賛されてはいません。しかし、当時の指導者たちの絆、そして強い使命感がもたらしたものを考えさせられます。

「東奔政走 サッチャーに学ぶ再チャレンジ 首相官邸も再任組で固め、路線を模索」
『エコノミスト』毎日新聞社 91巻15号(通巻4280)[2013年4月2日]p98-99 請求記号:Z330.5-5
 毎日新聞政治部専門編集委員である山田孝男氏の記事です。2月28日の施政方針演説で、安倍首相がサッチャーの回顧録の中からフォークランド紛争の一節を引き、「何よりも国際法が力の行使に勝たなくてはならない」と訴えたことを取り上げています。アルゼンチンとのフォークランド諸島をめぐっての紛争は、サッチャー首相就任3年で起きました。サッチャーは戦勝によってさらに8年続く政権の基盤を固めます。筆者はこのようなサッチャーから学ぶことは多いとしながらも、彼女の経済政策の評価は混濁しており万能の手本ではないと加えています。

新聞のとびら

英財政、18年ぶり黒字に、サッチャリズム身を結ぶ-先進諸国によい刺激-
『日本経済新聞』1988年1月30日朝刊 7p
 サッチャーが首相に就任して9年目、英国の実質経済成長率が日本、米国を上回ったときの記事です。目標である財政健全化に大きく近づいたとサッチャーを評価し、日本や米国もサッチャーのような中期的な視点で問題にあたる重要性を学ぶべきだと結んでいます。サッチャリズムが一定の成果を出し、それが認められた時期であることを感じさせます。

サッチャー路線どう継承<上><下>
『日本経済新聞』1990年11月29日 朝刊9p/1990年11月30日 朝刊9p
 1990年11月27日、長きにわたってイギリスを指導したサッチャーの後継者として、同じく保守党のメージャー新政権が誕生した直後の記事です。欧州統合の潮流の中どう英国の発言力を強めていくか、湾岸危機に向けて英国はどのような態度を取るべきか、サッチャリズムを受け継ぎつつも修正していく舵取りを求められたメージャー新政権の今後を<上><下>の2回にわたって解説しています。

快走する英国 1~4
『日本経済新聞』1997年11月20日 朝刊8p/1997年11月21日 朝刊8p/1997年11月22日 朝刊6p/1997年11月23日 朝刊5p
 好調な英国経済を特集した4回の連載記事です。長年にわたるサッチャリズムは高い失業率や、炭鉱や造船などの産業の切り捨てといった社会の歪みを表出させていました。そして、それまで約18年にわたって政権を率いてきた保守党に代わり、1997年労働党のブレア新政権が誕生します。ブレア首相の元、サッチャリズムが破壊した階級社会から生まれた、大衆資本主義と規制緩和の申し子、「新英国人」と呼ばれる新しい中流階級。そして労使関係の協調路線への転換。サッチャリズムから新たに踏み出した英国を分析しています。

インターネットのとびら

BBC ※英文
http://www.bbc.co.uk/
 正式名称はBritish Broadcasting Corporation。イギリス公共放送局のホームページです。豊富なコンテンツを誇り、イギリス国内の情報はもちろんさまざまなニュースを提供しています。