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トピックスのとびら

 図書館には図書、雑誌、地域資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
 そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.87 和算(2012年10月発行)

 明治時代にもたらされた西洋の数学に対して、日本独自に発展してきた数学をさす「和算」。江戸時代に吉田光由の『塵劫記(じんこうき)』が出版されたことをきっかけに広く普及し、「算聖」と称された関孝和が大成したといわれています。明治時代に西洋の数学が導入されると急速に衰退し、歴史的な存在にとどまってしまった和算ですが、その世界は奥深く、関孝和の業績の中には、西洋よりも早い発見もあったようです。自ら考えた問題と解法を板に書いて主に神社に奉納する「算額」も全国に広がっていたようです。
 学問の秋、江戸時代の娯楽として学者から庶民までみんなに楽しまれ愛されていた和算について学んでみませんか。

図書のとびら

『明治前日本数学史 新訂版 全5巻』
日本学士院日本科学史刊行会編 野間科学医学研究資料館 1979年 請求記号:410.2-3A-1~5 1(11223062),2(11223070),3(11223088),4(11223096),5(11223104)
 日本の科学の発達のあとをあきらかにする「明治前日本科学史」の一つとして昭和29年から昭和35年にかけて刊行された『明治前日本数学史』の新訂版です。
 第1篇「中国数学摂取時代」(第1巻)、第2篇「日本数学の樹立」(第2巻・第3巻)、第3篇「日本数学の発展普及」(第4巻・第5巻)の内容で、第5巻の巻末には人名索引と書名索引が付いたとてもしっかりした資料です。

『増修日本数学史』
遠藤利貞著 恒星社厚生閣 1960年 請求記号:419.1-5(11230628)
 太古から明治初年に至るまでの日本における数学の歴史をまとめた大著。初版は明治29年(1896)に出版された「大日本数学史」です。増修版の序で教育者の沢柳政太郎が、明治年間に著作出版された図書の中で後世に伝えるべき三種の一つに挙げています。
 人名索引、書名索引、件名索引、和算関係者卒年表、刊本暦算書年表が付いています。

『塵劫記』
吉田光由著 塵劫記刊行三百五十年記念顕彰事業実行委員会 1977年 請求記号:419.1-112-1~5 上(22283139),中(22283147),下(22283154),現代活字版(22283162),論文集(22283170)
 『塵劫記』発刊350年にあたる昭和52年(1977)に、吉田光由を顕彰する事業として復刻された資料です。初版の寛永4年(1627)版ではなく、整理しなおされよくまとめられた寛永8年(1631)版(3巻本)を復刻しています。和装本です。
 「あとがき」に、日本人の計算能力、数学の考え方は『塵劫記』によって開発されたとあります。また、『塵劫記』は数学まかりでなく江戸時代に出版された数多くの教科書の手本となっており、その影響は大きかったようです。
 現代活字版と論文集がセットになっています。

『神奈川県算額集』
天野宏著 1992年 請求記号:419.1-104(20608030)
 神奈川県の和算史を研究する著者が、県内各地の神社を巡って算額を探し、県内の22の算額と、神奈川県関係者が他県で奉納した8の算額について、掲額場所、掲額者、読み下し文、解説を紹介しています。

『和算家の旅日記』
佐藤健一著 時事通信社 1988年 請求記号:419.1-20(12536702)
 第1章「算額奉納」、第2章「遊歴算家」、第3章「遊歴雑記」という内容です。各地に残る算額の紹介、遊歴しながら数学を教え歩いていた遊歴算家の活動などが読みやすい文章でまとめられています。ところどころに「和算関係ひと口事典」が掲載されています。

『和算小説のたのしみ』
鳴海風著 岩波書店 2008年 請求記号:419.1TT-111(22179758)
 江戸時代の数学をテーマにした和算小説を多く発表している著者が、和算や和算家を題材にした歴史小説・時代小説を和算小説と呼び、それらの作品の楽しさを紹介しています。
 巻末に著者の選んだ「和算小説一覧」が掲載されています。

『乾坤独算民』
浅田晃彦著 群馬県立土屋文明記念文学館 2002年 請求記号:918.6-662-18(21634878)
 『群馬文学全集 第18巻 群馬の作家・下』p.161~216に収録されている浅田晃彦著の作品です。前出の『和算小説のたのしみ』で紹介されています。第60回直木賞候補になったものの受賞は逃したようですが、和算が盛んだった上州を舞台に、数学者の本質的な姿を描写している作品です。

『算学奇人伝』
永井義男著 TBSブリタニカ 1997年 請求記号:913.6FF-1409(20934022)
 こちらも『和算小説のたのしみ』で紹介されています。和算が、サイコロ賭博の確立計算や、算額の幾何問題に大金の隠し場所が秘められているという使われ方をしています。著者は、和算や和算家が小説の題材として馴染みがないことに目をつけて執筆したと「あとがき」で書いています。この作品で開高健賞を受賞しています。

『算法少女』
遠藤寛子著 岩崎書店 1973年 請求記号:913-エ(13120803)
 安永4年(1775)に出版された和算書『算法少女』に想を得た物語です。『和算小説のたのしみ』で紹介されています。「少年少女歴史小説シリーズ」の1冊ですが、和算の特徴がしっかり書き込まれ、忠実な時代背景の中で展開する物語は、大人でも十分楽しめます。

『きりしたん算用記』
遠藤寛子著 PHP研究所 1976年 請求記号:913-エ(13168240)
 『和算小説のたのしみ』で紹介されています。著者は『塵劫記』を読み、初期の和算家に対して宣教師がもたらした西洋数学の影響について想像をめぐらせながら、江戸初期の京都を中心としたキリシタンの人々の世界を描いています。

雑誌のとびら

特集 日本の数学者たち ―和算から現代数学まで
『現代思想』 2009年12月号 p.67-219 請求番号:Z105-9
 150ページほどの特集です。1件の討議と10本の論文からなっていますが、和算については、「討議 数学者たちの到達点 和算から現代数学まで」「関孝和の数学のルーツ」で触れられています。

達人対談 和算の達人 佐藤健一×ビートたけし
『新潮45』 2006年8月号 p.118-129 請求番号:Z319-222
 「数学は庶民の「遊び」だった?」というサブタイトルがついています。和算研究所理事長の佐藤氏とビートたけしの対談です。中国から数学が入ってきた飛鳥時代から庶民が道楽として数学を楽しんだ江戸時代、数学が苦手な人が増えた現代まで、語り合っています。

和算家たちの「芸」と「理念」
『図書』 2002年7月号 p.38-42 請求番号:Z023.05-6
 著者は電気通信大学で数学史を研究している佐藤賢一氏です。和算家が神社仏閣に奉納し、全国に700面以上も現存している算額について、和算家にとって自己表現の機会であり、現代社会に例えると個人のHP開設に相当するのではないかと例えています。

驚異の和算術
『言語』 1999年10月号 p.56-59 請求番号:Z805-5
 特集「世界を”数える” 数詞から見たことばの不思議」の中の1本です。著者は数学者の野崎昭弘氏です。日本の数学の歴史に触れたあと、「数える」ことについて、和算の特徴は「ひ、ふ、み、よ、…」の数詞であろう、と述べています。

新聞のとびら

広角 美しき数学エンターテインメント 世の中の成り立ち学びたい
『産経新聞』 2012年9月13日(木) 朝刊18p
 2010年の本屋大賞を受賞した『天地明察』(冲方丁著)の映画化(2012年9月)に合わせるように数学がクローズアップされていることを紹介する記事です。原作に江戸時代の天文学者渋川春海と算聖・関孝和が登場することに関連して、数学(和算)は江戸時代の娯楽であり、庶民も楽しんでいたものであったことが書かれています。

インターネットのとびら

江戸の数学
http://www.ndl.go.jp/math/
 国立国会図書館の電子展示会メニューの一つで、平成23年12月に提供が開始されました。
 江戸時代に日本で独自に発達した数学「和算」について、歴史概説やコラムとともに、国立国会図書館が所蔵している和算関係資料を展示・解説しています。見応えたっぷりです。

NPO和算
http://www.wasan.org/
 和算の普及や魅力を伝えるために、現代数学と和算の架け橋となる資料や冊子の作成や、イベントを行っている特定非営利活動法人です。和算に関するリンク集では、和算隆盛の地として知られ、毎年和算の問題を現代風にした「和算に挑戦!」を行っている岩手県の一関市博物館などが紹介されています。