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トピックスのとびら

 図書館には図書、雑誌、地域資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
 そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.86 カワイイ(2012年9月発行)

 『広辞苑』(岩波書店)をひくと、(1)いたわしい。ふびんだ。かわいそうだ。(2)愛すべきである。(3)小さくて美しい。という意味が掲載されている「かわいい」ですが、近年、より複雑で広い意味をもって使われているようです。
 外務省は、2009年に若い女性のファッションリーダー3名をポップカルチャー発信使(「カワイイ大使」)に任命し、広報活動を委嘱しています。また、「kawaii」が今世紀に入ってもっとも世界に定着した日本語である、日本のポップ・カルチャーを象徴するキーワードとして世界に通用する言葉となりつつある、と述べている文献も目にします。逆に、「カワイイ」だけでは生き残れないのでは、という文献も目にします。
 そんな議論がされている「カワイイ」についての資料を集めてみました。

図書のとびら

『「かわいい」の帝国』
古賀令子著 青土社 2009年 請求記号:383.1UU-309(22326763)
 「かわいい」とは何か?に始まり、今や日本が世界に誇る「かわいい」カルチャーの歴史・秘密に迫っています。日本の女の子発の「かわいい」モード、「かわいい」価値観が、日本の男の子や大人だけでなく、世界に浸透しつつある、と論じています。著者の勤務する大学の授業で2003年に行われた「かわいいのはどっちだ?調査」が紹介されており、「あいうえお」対「かきくけこ」、「ひらがな」対「カタカナ」では、「「あいうえお」がかわいい」が94%、「「ひらがな」がかわいい」が96%と圧倒的勝利を収めています。「かわいいの素を見つける」目的のこの調査、丸い、柔らかいイメージのものが「かわいい」と捉えられている様子がわかります。

『私に萌える女たち』
米澤泉著 講談社 2010年 請求記号:367.21-249(22453716)
 1970年の「anan」創刊で登場した日本の女性グラビア・ファッション誌を教科書にしてきた日本の女性たちが変わってきているそうです。女子大で教えている著者は、現代の若者はファッション誌を読まず、大人も若者も「カワイイ」を目指していると論じています。「自分の気分」を最も大切にしている若者たちは、自分が自分に満足すること、「私萌え」のために装っている、と述べています。女性誌の変遷を通して、「大人かわいい」「ズルかわいい」を目指す女性たちについても分析しています。

『キャラクター精神分析』
斎藤環著 筑摩書房 2011年 請求記号:361.5-770(22524375)
 「マンガ・文学・日本人」のサブタイトルがついています。日常に浸透し、定義したり本質をつかんだりすることが困難となっている「キャラクター(キャラ)」について、その本質を事例に基づいて考察する試みがなされています。
 その中で、サンリオのキャラクターとディズニーのキャラクターを比較し、サンリオのキャラクターは人間くささがなく、共感性が低いところに「かわいい」理由がある、と述べています。

『日本的想像力の未来』
東浩紀編 NHK出版 2010年 請求記号:361.5-756(22445571)
 「クール・ジャパノロジーの可能性」のサブタイトルがついています。マンガ・アニメなど、世界に浸透している日本のポップカルチャーについて、「クール・ジャパン」現象が映し出すものについて、多角的に検討した国際シンポジウムの記録です。 社会学者の宮台真司氏は「「かわいい」の本質」の中で、最初は「みんなに好かれる」という子どもに対する形容詞であった「かわいい」が、「大人だけど大人ではない」という文脈で大人に使われるようになり、その後大人に使われる「みんなに好かれる」になり、最終的には「僕だけの」という形容詞と置き換え可能な「かわいい」になる、と述べています。

『日本はアニメで再興する』
櫻井孝昌著 アスキー・メディアワークス 2010年 請求記号:シ778(22466791)
 生涯学習情報センターで所蔵している資料です。世界における日本のポップカルチャーを研究し、世界各国で文化外交活動を実施している著者が、アニメやマンガがきっかけとなって日本が愛されている現状を現地取材から詳らかにしています。 その中で、「カワイイ」という言葉が、自分にとっての価値判断を含んだ意味で、日本的、東京的であるものに対して使われていると述べています。また、「カワイイ」は日本の重要な肩書であると述べています。

雑誌のとびら

特集 ニッポンの「かわいい」
『芸術新潮』 2011年9月号 p.10-96 請求番号:Z705-1
 本来の出自である少女文化圏をはるかに超えて増殖、進化しつづける「かわいい」。じつはもともと日本文化は「かわいい」にあふれていたのではないか、日本美術の過去と未来を眺めると、はにわからハローキティまで、「かわいい」ばかり・・・ということで大特集が組まれています。
「キティ?キティ?キティ? ハローキティアート展とわたし」
「女子大生と選ぶかわいい?日本美術30選」
「ハローキティ以前 抒情画における「可愛い」の変遷」
「「かわいい」をもっと考える 古美術篇 東アジアの中の「かわいい」 」
「「かわいい」をもっと考える 現代アート篇 ”移行対象”の手触り」
というラインナップです。

「かわいい日本」の衝撃
『外交フォーラム』 2009年7月号 p.42-47 請求番号:Z319-222
 特集「魅力ある日本の発信をめざして 日本を売り込む!」の1編です。著者は京都大学准教授の小倉紀蔵氏。韓国における日本文化受容の意味について、現代思想から読み解いています。韓国人の女の子たちも「かわいい」と頻繁に言うそうです。
 「外交フォーラム」(現在休刊)は外交専門誌で、特集の表紙は、2009年2月に任命された「カワイイ大使」の写真になっています。

「図書館かわいいプロジェクト」
『専門図書館』 2012年5月号 p.36-39 請求番号:Z018-27
 「もっとみんなに愛される「かわいい図書館」を目指して」のサブタイトルがついています。1人の図書館員のTwitterでの発言からスタートしたプロジェクト。「図書館をかわいくすることによって、図書館を世の中のより多くの人に愛される存在にしたい」という目標だそうです。
 プロジェクト設立の経緯、実施した企画、今後の展望などが述べられています。

「かわいい文化」の背景
『尚絅学院大学紀要』第59号 2010年7月 p.23-34 請求番号:Z051-776
 ポップカルチャーとしての「かわいい文化」について「かわいい」という記号が持つ意味や機能、「かわいいアニメ」が果たした役割、「かわいい」に対して若者が持つイメージ、世界に広がる「かわいい文化」について、記号論とコミュニケーション学の視点から分析しています。

幼さの程度による”かわいい”のカテゴリ分類
『人間科学研究(広島大学大学院総合科学研究科紀要1)』第6巻 2011年 p.13-17 請求番号:Z051-849
 「かわいい」という感情を抱く対象として、動物行動学者のLorenzが提唱した「ベビースキーマ」(幼い生物がもつ身体的特徴の集合)だけで説明できるか、幼さとかわいさの関係について大学生への質問紙調査を行って研究しています。
 幼さとかわいさには中程度の正の相関があるが、一方で、幼いとは評価されないがかわいいと評価されるものもあり、個人的な趣味や状況に依存した”かわいい”も存在することが考察されています。

新聞のとびら

「かわいい」世界へ
『神奈川新聞』 2012年3月23日(金)朝刊 23p
 日本独自の感覚「かわいい」のさらに先をいく現代アートを発掘する「第1回Kawaii+(カワイイプラス)大賞展」のグランプリに、横浜市在住の大学助手が選ばれ、ヨーロッパでの個展開催権を獲得した、という記事です。
 「Kawaii+大賞展」は、東日本大震災から1年を機に、世界中の人々に幸せを届けようと企画されたようです。

「かわいい」って何だ
『日本経済新聞』 2012年7月30日(月)夕刊 9p
 「女と男はなぜ違う。職場で、家庭で、日々繰り返されるこまごまとしたすれ違いをテーマに、読者の皆さんも一緒に語り合いましょう」という「女と男のいい分イーブン」欄で30代既婚男性とアラフォー既婚女性が、それぞれの「かわいい」について語っています。
 女性は「色々な意味をぎゅっと圧縮して抽出して使っている」と言い、男性は、自分の周囲の女性の「かわいい」を使う言語能力について「時に神秘的だ」と述べています。

インターネットのとびら

インターネットで読める「カワイイ」についての論文をご紹介します。

論文:「かわいい」の構造
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/154741
 あいだ哲学会(京都大学大学院人間・環境学研究科篠原資明研究室)発行の「あいだ/生成 = Between/becoming」第2号(2012)に掲載された論文です。京都大学学術情報リポジトリ内のページです。
 著者は篠原資明氏。「かわいい」の構造について、大きさや形の問題ではなく、「着る」-「着せる」-「飾る」という系列への関連や広がりがあれば「かわいい」のである、と論じています。

論文:低炭素社会における〈カワイイ文化〉とその可能性に関する一考察
http://kgur.kwansei.ac.jp/dspace/handle/10236/9269
 関西学院大学社会学部社会学研究科発行の紀要「Zero Carbon Society 研究センター紀要」第1号(2012)に掲載された論文です。関西学院大学リポジトリ内のページです。
 著者は工藤保則氏。私たちにとって身近で、しかも低炭素社会と関係するとはなかなか思えない「カワイイ」の言葉・感性を手掛かりに、低炭素社会における新しい文化とその可能性について議論を行っています。