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トピックスのとびら

図書館には図書、雑誌、地域資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.116 待ったなしの大学改革(2015年3月発行)

 2014年12月22日の中央教育審議会答申(「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」)での提言を受けて、文部科学省は2015年1月16日に、高校在学中に学習の到達度を把握する「高等学校基礎学力テスト(仮称)」や、大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」導入までの具体的なスケジュールなどを示した、「高大接続改革実行プラン」を策定しました。
 18歳人口は団塊ジュニアの多くが高校を卒業した1992年あたりをピークに、その後減り続けています。しかし大学の定員数は増加したままであり、かつて30%程度だった大学進学率は50%を超えるようになりました。大学の大衆化が進む中、社会は大学にどのような役割を期待するのか。求められる新しい大学像に向け、教育の内容だけでなく、入学者選抜制度も変わろうとしています。新入生がキャンパスを彩る4月を前に、これからの大学教育について考えてみませんか。

図書のとびら

紹介資料表紙 『あなたは自分を利口だと思いますか? オックスフォード大学・ケンブリッジ大学の入試問題』
ジョン・ファーンドン著 小田島恒志/小田島則子訳  河出書房新社 2011年 請求記号:376.8 154(22575690)公開

 本書のタイトル、実はケンブリッジ大学(法学)の面接試験で出された質問です。イギリスでは大学に入学するのに、17、8歳で受ける「Aレベル」という全国共通試験で、多くの場合3科目以上の「Aレベル」を取得する必要があります。加えてオックスフォード大学、ケンブリッジ大学を志望する学生には3、4科目、あるいは5科目もの「Aレベル」取得者がいるため、口頭試問によってふるい分けが行われます。問われるのは、思考力と基本的な討論力を身につけているかどうか。表題の他にも、オックスフォード大学(物理学)の「なぜ宇宙船の中ではキャンドルを燃やせないのですか?」や、ケンブリッジ大学(歴史学)の「歴史は次の戦争をとめ得るでしょうか?」といった個性的な問題の数々が取り上げられています。

紹介資料表紙 『ルポMOOC革命 無料オンライン授業の衝撃』
金成隆一著 岩波書店 2013年 請求記号:377.15 43(22717276) 公開

 2012年、アメリカで「大規模公開オンライン講座(Massive Open Online Courses)」の本格的な配信が始まりました。通称「ムーク(MOOC)」と呼ばれているこの講座は、大学の教材や講義ビデオの公開にとどまらず、受講生に宿題の提出や試験突破を求めるという双方向性をもっています。受講生は無料でハーバードやスタンフォードといった名門大学の一流講座を体験することができ、しかも提出した宿題や試験が水準に達すれば修了書ももらえるしくみとなっています。意欲さえあればだれでも、いつでも、どこからでも、もちろん日本からでも海外の名門大学の講座をウェブで無料受講できるというオープンエデュケーション。本書はその最前線を取材したルポルタージュです。

紹介資料表紙 『大学教育の変貌を考える』
三宅義和/居神浩/遠藤竜馬/ 松本恵美/近藤剛/畑秀和著 ミネルヴァ書房 2014年 請求記号:377.04 20(22725436)公開

 日本の大学の定員数は1990年代以降、団塊ジュニア世代のピーク層が18歳を迎えるのに合わせて増加された他、法的な規制緩和により新設大学や新学部が設置されるなど、拡大の一途を辿っています。その一方で進む少子化。現在、日本における大学・短大進学率は55%に上っており、2人に1人が大学に行く時代となりました。学費を賄える経済力さえあれば、大学への進学はあらゆる学力層から可能となっています。このような状況の中で学生を確保するために、AO入試や公募推薦入試など大学入試は多様化し、合わせて大学教育は変貌を余儀なくされています。本書では、大衆化・国際化・多様化というキーワードを中心に、大学教育が抱える諸問題について考察しています。

紹介資料表紙 『なぜ日本の公教育費は少ないのか 教育の公的役割を問いなおす』
中澤渉著 勁草書房 2014年 請求記号:373.4 131(22760748) 公開

 本書によると、日本では大学の教育費を社会が負担すべきと考える人は少数派で、個人や家族が負担すべきと考える人が8割を占めるそうです。また、「収入の少ない家庭の大学生に経済的な援助を与えること」は政府の責任ではないと考える人も、他国と比べ日本だけが一定数の比率を占めるという調査結果を紹介しています。戦後日本では、新しい制度として発足した義務教育、すなわち新制中学校の整備に公的支出を優先し、一部の人しか進まない大学の教育費は受益者負担となっていました。その伝統が既成事実化し、今では当たり前のこととして受けとめられています。しかし、高額な教育費の家計負担は、教育機会の平等を妨げる大きな原因となっています。

紹介資料表紙 『図表でみる教育 OECDインディケータ(2014年版)』
経済協力開発機構(OECD)編著 明石書店 2014年 請求記号:372 115 2014(22764047)公開

 経済協力開発機構(OECD)は毎年、教育に関して国際比較が可能なさまざまな最新のインディケータ(指標)を提供し、各国の状況を伝えています。日本の高等教育における学費の私費負担率は高いといわれていますが、2014年版での実際の数字では65.5%。チリ(75.8%)、韓国(73.0%)、イギリス(69.8%)に続く4番目の高さとなっています。また、国公立高等教育機関の平均授業料(米$5,019)も、比較可能な国のうち5番目の高さです。それにもかかわらず、他の奨学金、特に給与型奨学金を受けている学生の割合は低く、OECDは日本を、「授業料が高額で、学生支援体制が比較的未整備の国々」の一つとして分類しています。

雑誌のとびら

紹介資料表紙 「世界の大学 最新情報 ヒトとカネの流れを変える「知の大移動」が始まった」
『Newsweek』阪急コミュニケーションズ 23巻40号(通巻1124号) 2008年10月 p36-55 請求記号:Z051-197

 中東やアジアの各国が国を挙げて優秀な留学生獲得に乗り出し、名門大学の分校を次々と設立しています。特にペルシャ湾岸諸国が教育関連プロジェクトにつぎ込む政府資金の額は莫大で、たとえばアラブ首長国連邦が文化・教育事業に費やす金額は200億ドル以上。首都アブダビにはパリ・ソルボンヌ大学のほか、マサチューセッツ工科大学といった有名校が進出しています。またアジアでこの競争をリードしているのは中国です。留学生は過去6年間で3倍以上に増え、外国の大学との提携も熱心に行っています。欧米有名校が支配する世界の大学地図が変わりつつある、その現状を追った特集記事です。

紹介資料表紙 「大学入学者選抜制度改革と社会の変容 ―不安の時代における「転機到来」説・再考」
『教育学研究』日本教育学会 79巻2号 2012年6月 p194-204 請求記号:Z370.5-68

 大学進学率の上昇に伴う入学者層の変化に対応した大学入試の多様化・軽量化現象に対して、学力重視の改革を唱える議論と社会変動の兆候と捉える議論。中村高康東京大学教授は本論文で、この2つの議論が展開される背景には、ある種の不安心理が作用しているのではないかと指摘しています。変動の激しい社会では、どのような知識や規範が社会的に求められるのか明確ではありません。学力が高くても、知識が多くても、社会で役立つ仕事ができるとは限らない。現代日本社会では〈能力不安〉が常態化し、成人世代は将来の見えない何かを想定し、それに向けて子どもたちを社会化しようとしていると結んでいます。

紹介資料表紙 「キャメロン政権の大学政策と格差問題 学費高騰問題の変容を中心に」
『経済学論纂』中央大学経済学研究会 54巻5・6合併号 2014年3月 p37-62 請求記号:Z330-605

 イングランドでは、1997年まで大学の授業料は無料でした。しかしブレア政権時代の1998年から年間£1,000(約15万円)を徴収するようになり、キャメロン政権では巨額の財政赤字を背景に、2012年度から上限が£9,000(約135万円)へと大幅に引き上げられます。この政策はイギリスにどのような影響を与えたのか。学生たちによる大規模な抗議活動が行われたにもかかわらず値上げが決定されたことや、その結果、それまで増大傾向にあった大学志願者数が減少し、所得連動型の公的貸与補助制度が整備されたものの、一人あたり£5,000(約750万)という重い借金を背負うことから実学志向が強まったたことなどを、荒井智行中央大学助教が解説しています。

紹介資料表紙 「高大接続と大学入学者選抜のリアル」
『現代思想』青土社 42巻6号 2014年4月 p71-79 請求記号:Z105-9

 児美川孝一郎法政大学教授が、教育再生実行会議の第四次提言を受けて、大学入試の在り方について考察しています。英国の「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」誌の世界の大学ランキングにおいて3年連続1位となったカリフォルニア工科大学ですが、この大学の入学定員はわずか240名です。これに対して東京大学の入学定員は3,000名。しかも、カリフォルニア工科大学には、日本の大学には存在しないAO担当の専門職員が7名も常勤しているという事実をあげ、多様な資料を活用した丁寧な入学者選抜を行うには環境を整えなけれならず、それに比べて日本の大学は規模が大き過ぎると指摘しています。

新聞のとびら

コストの通信簿 大学は変われるか
(1)細る公費、奪い合い―国立・私学、背水の改革/(2)教育改革のジレンマ―かさむ出費、経営は綱渡り/(3)国立、研究力に赤信号―収入源多様化待ったなし/(4)きしむ「学費=家計負担」―奨学金拡大へ一歩ずつ

『日本経済新聞』 東京本社最終版 (1)2014年1月27日 朝刊 p1/(2)2014年1月28日 朝刊 p1/(3)2014年1月29日 朝刊 p1/(4)2014年1月30日 朝刊 p1
 18歳人口の減少、親世代の収入の伸び悩み、危機的な国家財政という三重苦を前に、大学はどう立ち向かっているのか。厳しい財政事情の中、限られたパイを奪い合い、改革に挑む各大学の現状を追った記事です。
 国際化を進めるために留学生用の宿舎を4億5千万円をかけて建てた名古屋大学や、約4,600人の新入生全員に習熟度別の8人制授業「英語ディスカッション」を受けさせる立教大学。破格の年棒2千万を用意し、世界に名だたる名門校から研究室を丸ごと招く「ユニット誘致」を行う京都工芸繊維大学。各大学は寄付金などでどうにか資金をひねり出し、生き残りをかけて新たな特色を打ち出しています。では改革のために、大学がもっと授業料を値上げすればよいかというと、それも難しいとあります。記事では、2012年にクレジット大手Visaが行った調査を紹介しています。親が授業料を全額負担する学生は日本73%、アメリカ29%。アメリカのハーバード大では年間380万もの授業料がかかりますが、豊富な政府資金や産業界からの寄付が手厚い奨学金制度を支えているため、高い授業料を全額払う学生は少ないそうです。日本では授業料のほとんどを親世代の収入に頼っており、これ以上の値上げは大きな負担となります。夜間部学生を対象に、奨学金と学内事務の非常勤嘱託で年収約200万円を保証する推薦入試を始めた東洋大など、独自の学生支援を始める大学も出てきていますが、少ない資金では対象が限定的と指摘しています。

インターネットのとびら

高大接続改革実行プランについて(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo12/sonota/1354545.htm
 「高大接続改革実行プラン」の内容がPDFファイルで掲載されており、実際にどのようなスケジュールで進んでいく予定なのか知ることができます。高等学校教育の質の確保・向上を図るための「高等学校基礎学力テスト(仮称)」については平成31年度から、大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」については平成32年度からの実施を目指すとあります。また、大学入試センター試験の改革だけでなく、一般入試、推薦入試、AO入試の区分を廃止し、新たなルール構築を目指すともあります。新しい時代にふさわしい高大の接続とはどのようなものなのでしょうか。