本文へ移動

トピックスのとびら

 図書館には図書、雑誌、地域資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
 そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.114 日本財政健全化への道(2015年1月発行)

 アメリカの大手格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは2014年12月1日、日本の長期国債の格付けを「Aa3」から「A1」へ一段階引き下げました。巨額の財政赤字を抱える日本政府。消費税率引き上げの延期などで、財政赤字の削減目標の達成が不透明になったことが、その理由として挙げられています。
 急速に進む少子高齢化に伴う社会保障費の増大などにより、日本の普通国債残高は年々増加し、2014年度末で780兆円程度に上る見込みです。2014年度の予算においても4割強を借金でまかなっています。公的債務(対GDP比)は既に229.6%にも達しており、ドイツ(83.9%)はもちろん、イタリア(147.2%)、アメリカ(106.2%)と比べても深刻な状況です(財務省HPより,2014/12/19参照)。
 日本がギリシャやアイルランドのように実質的に財政破綻する可能性はあるのか。財政健全化にはどれくらいの増税が必要なのか。財政再建の問題は、日本をどのような国にしていきたいのかという私たち国民一人一人の意志と密接に関わってきます。

図書のとびら

紹介資料表紙 『日本経済図説 第4版』
宮崎勇/本庄真/田谷禎三著 岩波書店(岩波新書新赤版1447) 2013年 請求記号:332.10 128B(22702674)公開

 日本経済の全体像を知る入門書として最適な一冊です。初版から24年経って刊行されたこの第4版では改訂が全面的に行われ、バブル崩壊や失われた20年、規制緩和など、激変する国際的・社会的環境の中で、日本経済をどう位置づけていくのかといった内容も盛り込まれています。分かりやすい説明に加えて、見開きページの左側に表やグラフ、右側にその説明という視覚的にも把握できるような構成となっているので、初心者でも日本経済の全貌を理解することができます。明治維新、戦後の民主改革に次ぐ改革をどう実行していくのか、今後の日本経済の方向性と果たすべき役割を、広い視野から考えさせられます。

紹介資料表紙 『図説日本の財政 平成26年度版』
可部哲生編著 東洋経済新報社 2014年 請求記号:342.1 1 2014 (22756803)公開

 本書は日本財政の仕組みや現状について、図表を用いながら具体的に分かりやすくかつ幅広く解説したもので、1955年以降長年にわたって刊行され続けています。著者は冒頭で、財政とは国民が税金という形で負担したお金を原資に、国が国民に対して種々のサービスを提供していく活動であり、個々人の生活に縁遠いものではないと指摘しています。そして、税金に代わって財源を無制限に捻出できる「打ち出の小槌」も存在しないと。今後、私たちはどの程度の税金を負担しどのようなサービスを享受したいのか。国民一人一人の今と将来に直結する問題を考える上で必要な知識を身につけることができます。

紹介資料表紙 『OECD対日経済審査報告書 2011年版 日本の経済政策に対する評価と勧告』
OECD編著 大来洋一監訳 吉川淳/古川彰/牛嶋俊一郎/出口恭子訳 明石書店 2011年 請求記号:332.10 150 2011(22538615)公開

 先進国34か国が加盟している経済協力開発機構(OECD)は、加盟国といくつかの非加盟国の経済政策とその問題点について定期的に審査を行っています。日本経済に対しては一年半おきに審査が行われており、本書は2011年4月に出されたその報告書になります。日本の経済情勢は世界からどのように見られているのか、批判的な分析や提言が数多く盛り込まれており、問題点を考える上で非常に参考になる資料です。今回の報告書では日本の財政健全化を最優先事項として挙げており、赤字削減の大部分は消費税の引き上げによるべきだと指摘しています。ちなみに財政目標を達成するために必要な消費税率は、20%相当となる可能性があるそうです。

紹介資料表紙 『日本国はいくら借金できるのか? 国債破綻ドミノ』
川北隆雄著 文藝春秋(文春新書849) 2012年 請求記号:342.1 218(22571830)公開

 東京新聞の記者として20年以上にわたり財政を担当した著者が、国債の現状について分かりやすく説明しています。そもそも国債とはどういったものであるのか、国債の発行市場や流通市場はどうなっているのかといった基本的なことから、国債の価格と利回りの関係など、知っているようで実はよく知らない事象を理解することができます。日本の政府債務の対名目国内総生産(GDP)比は、現在どの先進国よりも悪い状態です。しかし、ロシアやアルゼンチンで実際に国債の債務不履行(デフォルト)が起きた一方で、日本国債の市場や長期金利は安定しています。その背景には何があるのか、そしてこのまま日本の財政は破綻せずにいられるのか考察しています。

紹介資料表紙 『財政赤字の淵源 寛容な社会の条件を考える』
井手英策著 有斐閣 2012年 請求記号:342.1 222(22631840) 公開

 なぜ日本は、先進国の中でも群を抜くほどの巨大な財政赤字を抱え込んでいるのか。本書はその原因と構造を歴史的アプローチから明らかにしています。戦後高度経済成長を迎えた日本では減税が繰り返され、公共事業による利益分配が重視されてきました。石油危機の影響もあり国債発行に拍車がかかった1975年度予算以降、公債依存度は急上昇していきます。財政再建のために増税を行おうとする試みも強い抵抗によって阻まれ、日本は「増税なき財政再建」という道を歩むことになりました。バブル崩壊後、経済が長期にわたって停滞していた時期においても減税と公共事業という経済政策のしくみは変わらず、債務の累計は避けられないものだったと分析しています。

雑誌のとびら

紹介資料表紙 「日本の財政は本当にヤバイ? 世界一の借金大国の真実」
『週刊ダイヤモンド』 ダイヤモンド社 101巻41号(通巻4503号) 2013年10月19日 p48-50 請求記号:Z330.5-49

 特集「日本国債のタブー」の中で取り上げられた記事です。財政破綻への懸念から日本の国債価格が暴落するというシナリオは、遠くない将来に起こっても決して不思議ではありません。実際のところ、その深刻さは一体どれほどのものなのでしょうか。日本は現在1,000兆円超という途方もない借金を抱えています。しかし日本国債の国内保有率は9割にも上り、借金の大半が国内で消化されているため、国債価格の暴落は回避されてきました。もし今後、国民の貯蓄が減少したり、海外に日本の借金を引き受けてもらわなければならないような状況になれば、暴落する可能性があると指摘しています。

紹介資料表紙 「日本は巨額債務を減らせる? 常套手段は財政緊縮かインフレ税」
『エコノミスト』 毎日新聞社 92巻22号(通巻4344号) 2014年5月6・13日 p24-25 請求記号:Z330.5-5

 政府債務は戦争と深く関わってきました。しかし「平時」の現在、先進国の財政状況は悪化し、日本やアメリカの政府債務残高の対国内総生産(GDP)比率は、第二次世界大戦終了時に匹敵する水準になっています。背景には多発する金融経済危機への対応、社会保障分野の給付の増加などがあり、2012年2月には先進国では戦後初めての債務不履行(デフォルト)がギリシャで起きました。記事では、政府が債務処理をするためにとれる手段は歴史上増税や歳出削減、インフレ、債務不履行(デフォルト)などそれほど多くないとしており、戦時並みに膨張している日本の政府債務残高について警告を発しています。

紹介資料表紙 「特集鼎談 経常赤字で日本経済は大丈夫か」
『Best Partner』 浜銀総合研究所 306号 2014年6月 p4-14 請求記号:Z335-789

 小川英治一橋大学教授、原田泰早稲田大学教授、そして東京新聞・中日新聞の長谷川幸洋論説副主幹の3人が日本経済の今後について語っています。1980年代以降、自動車や家電製品の輸出を背景に、日本では経常収支の黒字が続きました。しかし2008年のリーマン・ショック後は黒字額が急減。現在は海外からの輸入が増え、赤字が拡大しています。しかし3人の意見は、経常収支の赤字自体は大きな危機を招くものではないと一致しています。経常収支の赤字と財政赤字という「双子の赤字」を合わせて考えるのではなく、大事なのは日本の新たな経済成長と財政健全化であると語っています。

紹介資料表紙 「社会保障・税一体改革後の日本政治に求められる覚悟と決断 財政安定化に必要な消費税率は25%超」
『健康保険』 健康保険組合連合会 68巻9号 2014年9月 p16-21 請求記号:Z364.4-19

 2025年度以降、日本では団塊の世代すべてが75歳以上の後期高齢者となります。現在の医療費は約35兆円、介護費は約9兆円。それが2025年にはそれぞれ約53兆円、約19兆円にまで急増すると見込まれています。本記事では、2%程度のインフレを実現したとしても、財政安定化に必要な消費税率は最終的に25%超になるとした、アトランタ連邦準備銀行のブラウン氏と南カリフォルニア大学のジョインズ教授の試算を紹介しています。しかもその最終税率は2017年に一気に消費税を引き上げた場合での試算結果で、段階的に増税するシナリオの場合では、ピーク時には32%にまで達する可能性が高いそうです。

紹介資料表紙 「賃金上昇率の停滞を深刻に受けとめる必要がある 消費税率引上げなら金融緩和・減税・規制改革のパッケージを」
『週刊金融財政事情』 金融財政事情研究会 65巻41号(通巻3094号) 2014年10月27日-11月3日 p19-22 請求記号:Z338-507

 モルガン・スタンレーMUFG証券のチーフエコノミスト、ロバート・アラン・フェルドマン氏へのインタビュー記事です。消費税率8%への引き上げが、1997年に3%から5%へと引き上げた時よりも日本経済にインパクトを与えたことは事実であるとしながらも、10%への引き上げは実施せざるをえないとしています。財政再建に必要な調整額は国内総生産(GDP)の12%に相当する60兆円分、歳出総額180兆円の3分の1といわれています。社会保障費の大幅な削減によって歳出を減らすのは政治的に不可能なので、消費税の引き上げを行いつつ、その上で規制改革を重視した景気サポート策を実施するべきだと主張しています。

新聞のとびら

消費税延期と財政(上)(中)(下)
『日本経済新聞』 2014年12月4日 朝刊 p28/12月5日 朝刊 p27/12月8日 朝刊 p19(全て神奈川版)
 伊藤元重東大教授と国枝繁樹一橋准教授、伊藤周平鹿児島大学教授が、それぞれの主張を展開した連載記事です。2017年4月の消費税10%引き上げを見据えて、国内総生産(GDP)比でみた赤字を2020年度までに黒字化することを目指し、その上で社会保障改革を柱とした歳出見直しの強化を行えばいいとする伊藤元重氏。少子高齢化が着実に進むなかで財政再建全体のスケジュールを遅らせる余裕はないとし、今回の増税先送りの結果、より迅速な再増税や歳出削減の計画提示が必要になるとする国枝繁樹氏。社会保障の財源は消費税増税によるのではなく、富裕層や大企業への課税強化によって捻出できるとする伊藤周平氏。深刻な状況にある日本の財政健全化については、専門家の間でもさまざまな議論が展開されています。

インターネットのとびら

OECD Economic Survey of Japan 2013 ※英文
http://www.oecd.org/eco/surveys/economic-survey-japan.htm
 「図書のとびら」で紹介した『OECD対日経済審査報告書』の2013年度版です。ホームページは英文ですが、報告書の日本語版(PDF)も公開されています。日本銀行による 2%のインフレ目標及び「量的・質的金融緩和」の支持を表明しているほか、債務残高比率を2020年には安定化させることを目標に、 2015年までに消費税率10%への引き上げは実施すべきといったことなどを提言しています。

日本の財政を考える
http://www.zaisei.mof.go.jp/
 「日本の財政はどうなっているのか? 「調べて」「見て」「遊んで」日本の財政について考えてみよう。」と題した、財務省のホームページです。日本の財政状況について非常に分かりやすく説明しているほか、自分が財政大臣として財政改革を行い、財政安定化の指標となる基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字削減、黒字化を目指すゲームもあります。自分だったらどうするのかかなり考えさせられる内容です。