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トピックスのとびら

 図書館には図書、雑誌、地域資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
 そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.111 農業ルネサンス(2014年10月発行)


 食糧自給率の低い日本は、その多くを輸入に頼っています。たとえ出荷時は国産品であっても、必要とする肥料や飼料などの供給は海外に依存しているのが現状です。しかし、農産物の輸送による環境負荷を計るフードマイレージという指標があるように、農産物を遠く離れた場所から私たちの手元に運ぶと大量のエネルギーが消費されます。そこで注目されているのが、国内農業の復権です。
 今日本では、都市住民が農作業を体験できる市民農園が人気を集めています。他にも、休日に農家の手伝いをするボランティア活動や、バカンスを農村に滞在して過ごすグリーン・ツーリズムも広がりつつあります。スーパーに整然と並んでいる商品を買うだけでは見えてこない、農業や食に関わる人々への理解と感謝の気持ち。身近で採れる旬の農産物を大切にすることは、地域の農業を活性化させフードマイレージを減らすだけでなく、私たちに季節の移ろいを舌で感じる喜びをもたらします。実りの秋、収穫の秋に農業について考えてみませんか。

図書のとびら

『写生画帖 菜蔬 高松松平家博物図譜』
香川県立ミュージアム編 香川県立ミュージアム 2012年 請求記号:721.6 115(22596712)公開

 『写生画帖』は、博物学好みで知られた高松藩第5代藩主松平頼恭の命により、18世紀中頃に作られた植物図鑑です。本図録ではその中の一つ、「菜蔬」(さいそ,青物・野菜の意味)に収められている全図を収録しています。細部まで精緻に描写された数々の野菜たち。にんじんは葉の一枚一枚、とうもろこしは毛の一本一本まで丁寧に描かれ、「ながなすび」、「あをなすび」、「なすび」、「しろなすび」は、それぞれどのように実がなるのか違いがよくわかるようになっています。ちなみに、製作には江戸時代の奇才、高松藩出身の平賀源内も関わったのではないかとのこと。野菜本来の美しい姿に目が奪われる一冊です。

『野菜の時代  東京オーガニック伝』
瀬戸山玄著 日本放送出版協会 2006年 請求記号:626RR 119 (22020952)公開

 かつては野菜づくりが盛んだった東京都世田谷区の等々力一帯。現在は地価上昇の影響もあり、閑静な高級住宅地へと変貌を遂げています。その一角にあるのが、本書の主な舞台となっている大平農園です。大平農園は江戸時代から代々野菜を作り続けてきた有機農法のパイオニアです。地域の人々や有機農業を学びたい人が頻繁に訪れるこの農園で、著者は援農ボランティアとして3年間畑作業に携わり、都市農家のもつ多様な可能性について考察をめぐらしています。土に触れることで心身のバランスを取り戻し、植物や野菜に託された自然の営みと「おいしさ」に感激すること。今ある都市農家を大切に残しながら、もっとその数を増やすべきではないかと提案しています。

『農村をめざす人々 ライフスタイルの転換と田舎暮らし』
相川良彦/會田陽久/秋津ミチ子/本城昇共著 筑波書房 2006年 請求記号:611.98RR 112(21912696)公開

 本書は冒頭で、日本での田舎というイメージは、雑誌『田舎暮らしの本』が創刊された1987年から、映画『おもひでぽろぽろ』が上映された1994年にかけて大きく変わったと指摘しています。それまでの移住者は、TVドラマ『北の国から』に代表されるような、社会運動として農村で暮らすライフスタイルを選んだ、強い思想を持った人々が主流でした。しかし1980年代後半から、都市住民が田舎でのゆったりとした過ごし方(スローライフ)に価値を見出して移住するパターンが増えてきています。その流れの中で新しく農業を始めた人々はどのような人生を送っているのか。北海道新得町、北海富良野市、山形県高畠町、京都府美山町に移り住んだ人々のライフヒストリーを聞き取り、考察しています。

『ロハスビジネス』
大和田順子/水津陽子著 朝日新聞社(朝日新書097) 2008年 請求記号:519.13TT 58(22165948)公開

 雑誌『ソトコト』が「ロハスピープルの快適マガジン」と銘打って特集を組むなど、マスメディアが注目したことで広まった「ロハス」。元々はアメリカのコロラド州ボールダーで1990年代後半に生まれた、新しい価値観、ライフスタイルを指す言葉で、「Lifestyles of Health and Sustainability」の頭文字をとって作られました。人間の健康だけでなく、社会や地球の「健康」まで配慮した価値観を大切にする「ロハス層」は確実に増えています。本書はそういった人々をターゲットにしたビジネスの入門書として、たとえば小田急電鉄が成城学園前駅から徒歩1分の土地にオープンさせた会員制貸し菜園など、様々な事例を紹介しています。

『滞在型市民農園をゆく -都市農村交流の私的検証-』
東正則著 農林統計出版 2009年 請求記号: 626.9UU 105(22354203)公開

 土に触れたい、作物を育てたいという都市住民のニーズは年々高まっており、市民農園の開設数は増加する一方です。さらに、農園の一画を借りて作るという形では満足せず、田舎生活を楽しみながらじっくりと農作業を体験したいという人も現れてきました。本書は、日本全国に展開する滞在型市民農園を取材し、その現状を考察したものです。滞在型市民農園の利用期間は原則として1年間ですが、3年または5年までの更新を認めているところがほとんどで、豊かな自然の中長期間安定して農作業に携わることができます。加えて美しい景観や歴史、住民たちとの交流を楽しむなど、滞在型ならではの魅力が伝わってきます。

雑誌のとびら

「ふるさと回帰・循環運動の支援ネットワークの構築を」
『月刊JA』全国農業協同組合中央会 53巻1号 (通巻 623号) 2007年1月 p39-42 請求記号:Z611-131

 NPO法人ふるさと回帰支援センター事務局長の高橋公氏が、その取り組みを紹介しています。高度成長期に地方の若者が労働力の担い手として大都市へ移動したことは、結果的に現在の地方の過疎化と都市の過密化という不均衡を生み出しました。センターではこうした状況を背景に、従来の流れとは逆の、大都市から地方に移住し豊かな自然の中で暮らしたいと希望する都市生活者を、社会運動として支援しています。定年後は自給自足などスローライフを楽しみたい人、豊かな田園生活を味わうグリーン・ツーリズムに参加する人など、新しい価値観の広がりが運動の鍵となっているとあります。

「成功のカギは情報発信 「伝える農業」に変われ」
『週刊東洋経済』東洋経済新報社 6228号 2009年10月17日 p80-82 請求記号:Z330.5-2

 農業や農村の価値を見出し、その魅力を伝える取り組みを取材した記事です。農家と交流する機会を作っているみずほの村市場(茨城県つくば市)の長谷川久夫社長は、「農産物がどんな環境で育っているか消費者に想像力を働かせてもらいたい」と語っています。田んぼの様子を24時間ネットで公開しているのは藤岡農産(北秋田市)。豚肉の炭火焼きを振舞いながら、育て方やエサについて丁寧に説明するみやじ豚(神奈川県藤沢市)の宮治勇輔社長。古い家に泊まり、稲作などを体験することができる農家民宿をコーディネートするロハス越前(福井県越前市)。消費者と生産者の新たな結びつきが生まれています。

「多様な定年退職農業(定年帰農)の可能性」
『農業と経済』昭和堂 78巻9号 2012年9月 p67-74 請求記号:Z611-501

 高齢化が急速に進んでいる日本において、農業や農村に価値や生きがいを求める人々が、定年後農業に参入する可能性について検討した論文です。2010年時点の調査で、日本の農業就業人口の約6割を65歳以上の高齢者が占めており、農業の新たな担い手として老若問わず新規就農者を呼び込む必要があると指摘しています。定年帰農者ならば年金所得をベースとしながら農業に関わることができる。老いた身体に鞭打って働く高齢者ではなく、生産の喜びを地域の仲間と共有し、農産物直売所や地場農産加工、グリーン・ツーリズムの主力を担う高齢者が求められています。

新聞のとびら ~かながわの農業~

都市住民が農業支援 農の協力会 市民発 地域をつくる人・活動
『神奈川新聞』 2014年5月3日 朝刊 横浜・川崎・横須賀版 p17
 川崎市北部の黒川上地区を拠点に、援農と里山環境ボランティアを行っている団体「農(みのり)の協力会」の活動を取材した記事です。立ち上げたのは、2003年に川崎市が開講した「農の寺小屋」の一期生有志。現在のメンバーは主に60~70歳代の男女30人で、農業者から依頼される草取りといった作業をこなす他、自分たちでも野菜を育てつつ周囲の里山保全活動をしています。「いま、黒川に遊休地は見当たらないですね」と話す事務局長の齋藤悦子氏が頼もしいです。

独立就農後押し 県の農業アカデミー改編へ 直売の実習施設 野菜ほ場拡張
『神奈川新聞』 2014年5月11日 朝刊 横浜・川崎・横須賀版 p21
 「県立かながわ農業アカデミー」が、農産物の生産から販売まで実践的な経営力を備えた担い手を育てるために、校内の大規模な改編に乗り出したことを伝えています。現在、アカデミー入校生の約7割を農家の後継者ではない就農希望者が占めています。そのため、卒業後に新しく土地を借りて農業を始められるよう、人気の高い野菜の実習ほ場を5倍に拡張し、新規就農者にとっては有力な販路となっている直売所の実習施設を整備する計画を立てているとあります。

荒廃農地解消へ 藤沢市農業委が取り組み 復元し就農希望者に貸与
『神奈川新聞』 2014年7月1日 湘南・相模原県央・県西版 p18
 農家の高齢化や後継者不足のため荒廃農地が増える一方で、新規就農を希望する人は多いという状況。長年耕作されていない荒廃農地を復元させて優良な農地へと改良し、それを営農意欲のある人とマッチングさせる取り組みが、藤沢市農業委員会の手で始まったことを伝える記事です。復元対象の第1弾となった土地は、相続した男性が営農していなかったために約20年間放置され、背丈ほどもある竹やぶが広がっていた農地。少しでも緑豊かな農地を取り戻したいという思いがそこにはあります。

耕作放棄地活用し市民農業塾 「農ある暮らし」を形成 南足柄 新たな担い手育成 関心高い人 参入促進 コミュニティ築く 農業のプロ初歩から支援
『神静民報(シンセイミンポウ)』 2014年5月11日 朝刊 p3
 2014年4月に南足柄市で、新たな農業の担い手を育成する「市民農業塾」が開設されました。記事では同塾の取り組みを紹介しています。活動場所は南足柄市三竹にある約3,000平方メートルの耕作放棄地。立案者は元同市幹部職員で「TOMIOファーム代表」の古屋富雄氏です。古屋氏をはじめ、農業のプロによる万全のサポート体制が整っている中、塾生は一般の市民農園とは異なる広大な土地でじっくりと農作業を体験できるようになっています。

インターネットのとびら

かなさんの畑~かながわ産品・地産地消アンテナショップサイト~
http://kanasan-no-hatake.jp/index.html
 かながわブランド振興協議会が運営するサイトです。「三浦だいこん」や「多摩川なし」といった、神奈川県各地で作られている野菜や果物などを紹介し、それらの食材を実際に使ったお勧めレシピを掲載しています。また、県内200か所以上の朝市、共同直売所、観光農園などの情報も掲載しているので、ぜひチェックしてみてください。県庁新庁舎地下特設スペースでも、週に1回(不定期)野菜直売会を行っています。

農林水産省 消費者の部屋
http://www.maff.go.jp/j/heya/
 農林水産省の取り組みや身近な食生活に関する情報などを、消費者に向けて分かりやすく伝えているサイトです。さまざまな質問に答えている「消費者相談」では、たとえば「野菜と果物の違いを教えてください。また、すいか、メロンは野菜、果物のどちらですか。」に対する回答もあり、なるほどと思うことしきり。「こどもそうだん」の鋭い質問、「いかのスミとたこのスミの違(ちが)いについておしえてください。」への回答も気になるところです。