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トピックスのとびら

 図書館には図書、雑誌、地域資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
 そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.109 ウクライナ-今そこにある危機-(2014年8月発行)

 ウクライナ問題をめぐり、欧米諸国とロシアの緊張関係が一段と高まっています。「新冷戦」の幕開けを危惧する声まで出てきました。ロシアとヨーロッパに挟まれているウクライナ。2014年2月に親ロシア政権が崩壊し、代わりに親欧米の暫定政権が樹立された後、ウクライナ情勢は悪化の一途をたどっています。3月には南部に位置するクリミア自治共和国がロシアに編入され、プーチン大統領は事実上の軍事介入を決定。このことに欧米諸国は強く反発しています。ウクライナが期限までに代金を支払わなかったため、6月中旬にはロシアがウクライナへのガス供給を停止するという事態も起こりました。
 1991年12月にソ連が崩壊し独立を果たすも、ウクライナの経済は長く低迷を続けています。鉄鋼業や農業などの有力な産業を抱えているものの、石油やガスといったエネルギー供給はロシアに依存しているからです。加えて蔓延する汚職。事故後30年近く経った今もなお、原発周辺の30kmが立ち入り禁止区域となっているチェルノブイリの問題。揺れるウクライナは、世界にどのような影響をもたらすのでしょうか。

図書のとびら

『シェフチェンコ詩集』
シェフチェンコ著 渋谷定輔・村井隆之編訳 れんが書房新社 1988年 請求記号:981X 30(20111704)9門書庫

 ウクライナの人々が国民的詩人として敬愛するシェフチェンコは、19世紀ロシア国民文学の創始者プーシキンにちなんで、ウクライナのプーシキンとも呼ばれています。シェフチェンコが生まれた1814年には、まだ人間を家畜のように売買する農奴制が残っていました。その農奴の子として生を受け、さらに幼くして両親を失うという苦難の中に育った彼は、貴族の上品な言葉ではなく農奴の日常語を取り入れた独特の文体を作り上げます。「ウクライナの自由を/かちとってくれ/そしてわたしを偉大な 自由な/あたらしい家族の ひとりとして/忘れないでくれ」。ウクライナ民衆の自由を訴え、長い追放生活にも屈せず闘った詩人は、享年47歳の若さでその生涯を終えました。

『ウクライナ・ナショナリズム 独立のディレンマ』
中井和夫著 東京大学出版会 1998年 請求記号:238.6HH 101 (21105564)公開

 ウクライナのコサックがボフダン・フメリニツキーに率いられポーランドに対する反乱を開始し、1954年にロシアを宗主国とするペレヤスラフ協定を結んで以来、ウクライナにはロシアからの分離独立運動と合流志向の両方が常に存在してきました。このことがウクライナ民族運動の特徴の一つとなっています。本書はウクライナ・ナショナリズムに焦点をあてて、ウクライナが独立に至るプロセスと独立後に抱えるディレンマについて解説しています。東と西、ロシアとポーランドの間にあり、文化的にも東方正教圏と西方カトリック圏の間にあるため、東西の争奪戦の対象となってきたウクライナ。加えてウクライナ国内に存在する東西の分岐が、国民統合を困難なものにしています。

『ガスパイプラインとロシア ガスプロムの世界戦略』
酒井明司著 東洋書店(ユーラシア選書17) 2010年 請求記号:575.59 3(22443154)公開

 現在表面化しているロシアとウクライナのいわゆる「ガス戦争」ですが、実はここ最近ずっと両国の課題となっています。ロシアのウクライナへのガス供給停止は今回突然始まったものではなく、1991年のソ連崩壊から今日にいたるまで、何回か繰り返されてきました。ウクライナは国内のガス需要の大部分をロシアからの買い付けに頼っている一方で、常にその支払い能力に不安を抱えているからです。ウクライナの代金未払いにはどのような原因があるのか。ガスをめぐるロシアと取引相手国、またはそれらの相手国同士がどれだけ複雑な利害関係で結びついているのか、本書からその背景を読み解くことができます。

『ウクライナの発見 ポーランド文学・美術の19世紀』
小川万海子著 藤原書店 2011年 請求記号:702.34 130(22544100)公開

 無限に続くステップ(草原)の大海、吹き渡る風、豊穣の大地の生命力、哀歌の調べ。肥沃な黒土が無限に広がり、「欧州のパンかご」とも呼ばれたウクライナは、19世紀のポーランドに生きた芸術家たちのインスピレーションの源泉となりました。本書はウクライナに魅了されたポーランドの画家や詩人たちの作品を通して、彼らが描き出したウクライナについて語っています。画家のレオン・ヴィチュウコフスキが「世にも美しいウクライナ」と讃えたその情景。当時政治的にはロシアのツァーリ、文化的にはポーランドの支配下にあったウクライナは、彼らの目にどう映っていたのでしょうか。

『ゴーストタウン チェルノブイリを走る』
エレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワ著 池田紫訳 集英社(集英社新書ノンフィクション0608N) 2011年 請求記号:543.5 58(22545362)公開

 1974年にキエフで生まれたウクライナ人女性のエレナ。彼女はチェルノブイリ周辺の「死のゾーン」をガイガーカウンター片手にバイクで旅し、撮った写真をウェブサイトで公開しています。そのサイトを池田氏が見つけたことが、本書出版のきっかけとなりました。チェルノブイリの原子炉が事故を起こしたのは旧ソ連時代の1986年4月26日のこと。当時発電所従業員用の居住地として整備され、現在は無人となっているプリピャチ市の様子を撮った写真には、「ゴーストタウンは「現代のポンペイ」だ。ソビエト時代が保存されている-放射能の中で、もう何年も。」とコメントがあります。神から炎を盗んで人類に与えたプロメテウスの彫刻は、事故後、市の中心から原子力発電所へと移されました。

雑誌のとびら

「対談 ウクライナ情勢の深層。」
『潮』潮出版社 664号 2014年6月 p52-59 請求記号:Z051-86

 ロシア政治を専門とする法政大学教授下斗米伸夫氏と、作家で外交ジャーナリストである手嶋龍一氏の対談記事です。ウクライナ・クリミア危機の背景を分析し、激化する国際政局で日本がとるべき進路について語っています。1991年当時世界3位の核保有国だったウクライナは、冷戦後の世界に先駆けて核兵器の撤去を成し遂げました。しかし現在、ウクライナの元外務大臣クラスが再び核武装化を提案しており、そのことは、ロシアのクリミア半島編入の要因の一つとなったと下斗米氏は指摘しています。冷戦後に確立された秩序が崩れつつある中、日本は今後どうあるべきなのでしょうか。

「ウクライナの混迷をもたらしたのは西側の介入だ ロシアから見た「米国という危険な存在」 」
『金曜日』金曜日 22巻22号(通巻1012号) 2014年6月6日 p16-18 請求記号:Z051-522

 アメリカを代表する社会派映画監督のオリバー・ストーン氏と、監督と共に『もうひとつのアメリカ史』を著した、アメリカン大学のピーター・カズニック教授による記事です。西側主流の視点からだけではなく、ロシア側からの視点も私たちは共有するべきではないかと問題提起しています。ウクライナの破綻した財政に対し、極度に寛容な対案を提示したのはロシアのプーチン大統領であり、ウクライナ国民を悲惨な状態に陥らせる緊縮政策を要求したのは西側だという実態。厳しい経済状況に加え、政治腐敗も蔓延しているウクライナが必要としているのは、ロシアとEU両側との友好関係であると指摘しています。

「Culture ART ウクライナ暴動が生んだアート」
『Newsweek』阪急コミュニケーションズ 29巻23号(通巻1402号) 2014年6月17日 p56-57 請求記号:Z051-197

 ヤヌコビッチ政権を倒した反政府デモの象徴となった、ウクライナの主都キエフの独立広場。そこに今、スラブの図像、19世紀ウクライナの画家イリヤ・レーピンの写実画、フランシスコ・ゴヤの戦争画など、さまざまなアートが並んでいる様子を取材した記事です。この野外美術館の「壁」は木や廃材、土のうで作られたバリケード。広場に野営している人はみな、自分たちが「物語の一部」であることを理解している、そんな不思議な歴史感覚がここには広がっていると記者は語ります。そして、「汚職の美術館」とも呼ばれる、金ぴかのものを寄せ集めたヤヌコビッチの豪邸とは対照的だと結んでいます。

「ウクライナとロシアの未来」
『すばる』集英社 36巻6号 2014年6月 p148-152 請求記号:Z910.5-121

 現代ロシアを代表する作家であり、ウクライナ人の母、ロシア人の父をもつミハイル・シーシキン氏による特別寄稿です。キエフの独立広場に飛び出した人々が叫んでいるのは、彼らを振り回し傷つけ続ける権力に対する反抗であり、ウクライナを平穏な文明国にしたいという願いなのだと語っています。広場で「反戦・民族主義反対」のプラカードを掲げ、退去を求める警官に対し「そっちこそ戦争の許可、取ってないじゃない!」と返して連行された少女。「気の遠くなるような人類の歴史のなかで、いったい、「国を愛せ」という呼びかけの末に、どれほどの命が犠牲になっただろう。そして今、ロシア人が、ウクライナ人が、同じ犠牲のもとに立たされようとしている。」という言葉が胸に迫ってきます。

視聴覚資料のとびら

「ザ・ラスト・レコーディング ウラディミール・ホロヴィッツ」
ウラディミール・ホロヴィッツ(ピアノ) 1990年(録音1989年) 佐藤コレクション ピアノソナタ第59番変ホ長調 (ハイドン),マズルカ第35番ハ短調作品56-3(ショパン)他  請求記号:CD13 ハイト(41174293)視聴覚資料室公開
 20世紀最高の天才ピアニストとして名声をほしいままにしたホロヴィッツは、帝政ロシア時代のウクライナ出身です。彼はユダヤ人家庭に生まれ、キエフ音楽院を卒業しました。しかしユダヤ人迫害の影響を受け、後にアメリカに移住しています。ハイドン、ショパン、リストの作品を取り上げたこの録音は、ホロヴィッツが亡くなる直前の1989年10月20日から11月4日にかけて、ニューヨークの自宅で演奏されたものです。最後を締めくくっているのは「イゾルデの愛の死」。この曲をホロヴィッツはどのような思いで奏でたのでしょうか。

「ラスト・レコーディング ニコライ・カプースチン」
ニコライ・カプースチン(ピアノ) 2004年(録音2003年) ピアノ・ソナタ第7番作品64,子守唄作品65,3つの即興曲作品66,3つの練習曲作品67,即興曲作品83(全てニコライ・カプスーチン)他  請求記号:CD18 カフー(41230293)視聴覚資料室公開
 1937年ウクライナのゴルロフカに生まれたニコライ・カプースチンによる自作自演の録音盤です。カプースチンはモスクワ音楽院でロシアの古典的なピアノの伝統を学び、1960年代からは当時としては珍しく、ジャズの要素を取り入れたオーケストラとの共演作品を手がけました。旧ソ連にいながら、ラジオやLPレコードを聴き、耳からだけでアメリカ的なジャズを自分のものにしたのです。クラシックとジャズを融合した独特の作風を、作曲家であると同時に優れたピアニストでもある彼自身の演奏で味わうことができます。

「小澤 conducts 世界の国歌」
小沢征爾指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 1997年 請求記号:CD44(41088659)視聴覚資料室公開
 1998年に開催した長野オリンピックの表彰台で使われた国歌集です。小澤征爾指揮による新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏を録音したもので、ウクライナの国歌「ウクライナは滅びず」も収録されています。この「ウクライナは滅びず」は、1864年にウクライナ劇場で聖歌として発表されたもので、国歌としては1917年に承認されました。しかしその後、1991年にウクライナが独立するまで、長い間国歌として演奏されなかった歴史があります。

インターネットのとびら

ウクライナ/外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ukraine/
 外務省がウクライナに関する情報を提供しているウェブサイトです。面積や人口、民族、言語といった基本的なことから、政治体制や外交方針、経済状況、日本との関係などがコンパクトにまとめられています。日本政府が2014年3月に行われた先進7カ国(G7)首脳会議で表明した、最大1,500億円の対ウクライナ支援の第1弾として、3億5,000万円の無償資金協力を実施することとなったといった、最近の動向を知ることができます。