トピックスのとびら

図書館には図書、雑誌、神奈川資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.146 EU と 英国離脱(2017年9月発行) PDF版254KB



 英国が国民投票によりEU離脱を選択し、世界を驚かせてから1年余り。当時は“BREXIT”(ブレグジット:Britain〈英国〉とExit〈離脱〉を混成させた造語)という言葉を頻繁に耳にしました。現在は一見落ち着いているように見えますが、本当の混乱が始まるのはこれからだと言われます。離脱に向けてのEUと英国の交渉は折り合いがつかず見通しの立たない中、今年8月30日から9月1日にかけてメイ首相が初来日し、日英の経済連携強化等について安倍首相と懇談しました。英国離脱はEUのみならず英国にとっても深刻な危機であると同時に、世界や日本に対しても大きな影響を及ぼすことは間違いなく、今年3月の通告を受けて6月に始まったEUと英国の離脱交渉を、世界中が強い関心をもって見守っています。EUと英国離脱の現在とこれからを考える参考となる資料をご紹介します。

図書のとびら

紹介資料表紙 『欧州複合危機-苦悶するEU、揺れる世界』
遠藤乾 (えんどう・けん)著 中央公論新社 2016 請求記号:333.7/246(22900583) 公開

様々な危機に満ちた現在のEUを、総合的に、歴史的な経緯も含めて考察した本です。著者は、日本におけるEU研究の第一人者で北海道大学大学院教授。本書では、 現在のEUが直面するユーロ危機、難民危機とテロ、ウクライナ危機、英国離脱を「複合危機」としてとらえ、それらの危機が「多層にまたがり、連動する、複数の危機」という意味でも「複合」であると述べています。中でも英国離脱を「世界史的な事件」として、全9章のうち、第4章「イギリスのEU離脱」、第8章「イギリス離脱後の欧州と世界」において詳細に検討しています。巻末に詳細な年表と充実した参考文献がついています。

紹介資料表紙 『迷走するイギリス-EU離脱と欧州の危機』
細谷雄一著 慶應義塾大学出版会 2016 請求記号:319.33/32 (22895288) 公開

戦後イギリスとヨーロッパ統合の動きを丹念に追いながら、イギリス政治史の視点から見たEU離脱に至る経緯を記述しています。特に、離脱を問う国民投票前夜の英国政府・残留派と離脱派の攻防や、離脱を阻止するための加盟各国の動向がスリリングに描かれ引き込まれます。著者はイギリス外交史の第一人者で、各章末に豊富な参考文献が掲載されています。終章で著者は「政治の世界で民主主義が劣化していった一つの重要な要因は、政治家が当たり前のように嘘を語るようになり、それが検証されることなく国民の間に広く浸透していったことであろう」と記し、警鐘を鳴らしています。

紹介資料表紙 『問題は英国ではない、EUなのだ-21世紀の新国家論』
エマニュエル・トッド著 堀茂樹訳 文藝春秋 2016 請求記号:304/1162 (22913487) 公開

  独自の分析でソ連崩壊やリーマンショック、アラブの春、ユーロ危機などを予言し、現代最高の知識人と評されるフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏は、驚くことに英国離脱をも予言していたと言います。本書では、今日、先進世界は第二次大戦以降3つ目の歴史的転換点を迎えている。英米によって推進されてきたグローバリゼーションが限界を迎え、その疲労に耐えられなくなった英米で、EU離脱やトランプ登場という「国家」への回帰現象が表れたと分析しています。第3章で、トッド氏の「予言」が生まれる過程や歴史の見方が公開されていることも本書の魅力です。日本の課題についても言及する時事評論集です。

紹介資料表紙 『日本EU学会年報』第37号
日本EU学会編 有斐閣 (発売) 2017 請求記号:333.5/50/ 2017 (22937742) 書庫 常置

 日本EU学会は1980年に「日本EC学会」として創設、現名称は1997年度から。「なぜEU統合が困難に直面しているのか」「そうした困難はいかにして解決可能なのか」を大きな研究課題としています。年報第37号(2017.5発行)に掲載された『BREXITと「社会給付と自由移動」をめぐるEU政治過程-域内移民と国外派遣労働を架橋する交渉力学を中心に』(原田徹:同志社大学助教)では、離脱選択の阻止を目的として欧州理事会が決めた移民受入れに関する特別措置によって、「EU市民間の平等」という基本的規範が損なわれ、東欧諸国に不利益を生む結果となり、東西加盟国間の対立の要因となる恐れがあると論じています。

紹介資料表紙 『リスボン条約』
小林勝訳 御茶の水書房 2009 請求記号:333.7UU/205 (22291975) 公開

 「リスボン条約」の正式名称は「欧州連合条約および欧州共同体設立条約を修正するリスボン条約」。現在のEUの基本条約です。2009年12月1日に、当時の加盟国(27)すべてが調印して発効し、これにより2005年以来停滞していたEU統合は再び活性化しました。この条約でEUは初めて加盟国の離脱についての手続きを定め(第50条)、英国のEU離脱はこれに沿って進められています。本書は、欧州公式出版局がウェブサイト上で公表したドイツ語のテキスト(2008年5月9日付:欧州連合官報に掲載)をもとに翻訳し解題を付したものです。

雑誌のとびら

紹介資料表紙 連載 「“BREXIT”-イギリスのEU『離脱』の歴史的深層」
『書斎の窓』 有斐閣 請求記号:Z023.05/13
第650号 2017年3月 p35-38
第651号 2017年5月 p39-43
第652号 2017年7月 p35-40

 明治大学経営学部教授の安倍悦生氏による全3回の連載記事です。著者自身のイギリスやフランスでの体験なども参考に考察しています。
 第1回「ブレグジットの核心」では、なぜ英国離脱派が勝利したのかを、地域の所得格差、年齢構成、学歴格差や職業分布、移民の多い地域と少ない地域、企業の規模や業種という5つの側面から分析し、ブレグジットの最大争点は移民問題だとしています。移民の急増により、イギリス人の雇用が不利になったこと、生活習慣、価値観、宗教儀礼などの違いが大きなストレスとなったことなどが移民排除を望む声になり、EU離脱を選択させたと述べています。
 第2回「移民とはなにか、どのように考えたらよいのか?」では、イギリスにおける移民問題を19世紀半ばから辿り、2016年のイスラム教徒移民の数が280万人と十数年で著増している実態を報告しています。
 第3回「東欧移民はなぜ問題になったのか」では、EUが前提としている「4つ(ヒト、モノ、カネ、サービス)の移動の自由」を制限し、時間をかけて徐々に受け入れていけば移民が社会に溶け込んでいけるのではないかと示唆しています。

新聞のとびら

「英、EU離脱を選択/欧州分裂 世界に打撃/キャメロン首相辞任へ」
日本経済新聞 2016年6月25日 p1 

 メイ首相は1日、3日間の来日日程を終えた。英国の首相が2か国会談のため、日本のみの訪問で東アジアまで足を延ばすのは異例だ。秋からの欧州連合(EU)との離脱交渉本格化を前に、日本との経済連携強化を内外に示すことは、戦略的に有益との判断がメイ氏にあった。

インターネットのとびら

外務省> 国・地域 > 欧州 > 欧州連合(EU)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/index.html
  外務省が提供するEU情報です。英国におけるEU残留・離脱を問う国民投票に関する日本の立場として、外務大臣談話や英国及びEUへのメッセージ採択、外務大臣会見記録などを読むことができます。また英国及び関係国との協議の記録も掲載されています。その他、日・EU関係の基本文書や協定、EU概況、EU情勢関連用語集、リスボン条約など基本情報も豊富で、EU関連リンク集も掲載されています。

europe magazine EU MAG 駐日欧州連合代表部の公式ウェブマガジン
http://eumag.jp/
 EUの最新ニュースが日々更新されています。EUの基本情報、特集、政策解説、ニュースの背景、注目の話題などサイトが充実しています。また、政治・外交、経済・産業、環境・エネルギー、科学技術、日・EU関係、社会、教育・文化、加盟国事情、ライフスタイルなど、テーマから関連記事を探すこともできます。

日本EU学会
http://www.eusa-japan.org/?page_id=20
  日本EU学会のホームページです。学会の概要、理事長メッセージの他、研究大会や日本EU学会報、ニューズレターのバックナンバーを見ることができます。特に日本EU学会報は、創刊号(1976年)から35号(2015年)までの論文を全文公開しています。最新の37号と36号も時期がくれば公開されると思われます。

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