トピックスのとびら

図書館には図書、雑誌、神奈川資料、新聞、視聴覚資料、インターネットといったたくさんの情報のとびらがあります。
そのとびらを開いて、時事的な話題を複合的な視点から紹介します。

No.143 読解力 ~読む力とは~(2017年6月発行) PDF版193KB



 新聞各紙で2016年12月7日の朝刊に、2015年度のOECD(経済協力開発機構)のPISA(生徒の学習到達度調査)のテスト結果が報じられました(後述「新聞のとびら」参照)。テストのなかで、読解力の日本平均点が参加国のなかで8位となり、前回よりも下がった結果となりました。今回の調査で、読解力が下がった要因として、2015年度から問題の出題、解答にコンピュータが用いられることになったことやSNSの普及などが取り上げられています。その「読解力」をテーマに、PISA、読書、文字の読み書き(識字)に関する資料を集めました。  「読解力」とは「読む力」でしょうか。「読む力」とは明確には何ができることを指すのでしょうか。本を読むだけではなく、「読む」行為に焦点をあてて資料を紹介してみました。

図書のとびら

紹介資料表紙 『生きるための知識と技能 6 OECD生徒の学習到達度調査(PISA)』
国立教育政策研究所編 明石書店 2016 請求記号:375.17/4 /2015 (22907976) 公開

 2015年に行われた学習到達度調査結果や、同時に行われた学習環境に関するアンケート結果が取りまとめられています。調査の目的として「PISA調査は,義務教育終了段階の15歳児が持っている知識や技能を,実生活の様々な場面でどれだけ活用できるかを見るものであり,特定の学校のカリキュラムをどれだけ習得しているかを見るものではない。(p6)」と記されています。「科学的リテラシー」、「数学的リテラシー」、「読解力」の調査における国別の順位表が掲載されています。また、学習環境などに関する「学校質問調査」と、生徒の社会、経済、文化的背景などに関する「生徒質問調査」の結果も記載されています。
*各分野の概念や出題方針については、 『PISA2015年調査 評価の枠組み』(請求記号:375.17/3/2015、資料番号:22904056、 原書名:PISA 2015 assessment and analytical framework)にまとめられています。

紹介資料表紙 『読書教育を学ぶ人のために』
山元隆春編 世界思想社 2015 請求記号:019.2/180 (22801567) 公開

 読書教育の実践例や「読むこと」に関する論考がまとめられた1冊です。読み聞かせ、ブックトーク、アニマシオン、黙読の時間(朝読書)、読書感想文、読書会などが紹介されています。また、情報メディアの多様化やリテラシー教育の課題についても取り上げています。Ⅱの7「読書能力の発達(住田勝著)」では、読書能力の発達を年齢によって段階的に区分し、それぞれの段階にあった読書の進め方を提案しています。資料編には読書状況の調査概要と年表を掲載しています。

紹介資料表紙 『識字神話をよみとく 「識字率99%」の国・日本というイデオロギー』
角知行著 明石書店 2012 請求記号:810.1/123 (22626675) 公開

 本書では、識字を「社会関係からみた、文字のよみかき実践のこと(p7)」と定義し、日本は「識字率99%」といわれるが、読み書きに困難を伴う人びとが存在することについて述べています。第Ⅰ部で日本の識字率に関係する調査を検証し、第Ⅱ部で漢字がもたらす識字の困難さについて指摘し、第Ⅲ部で識字に関する先行研究の事例と識字社会での識字学習について取り上げています。

紹介資料表紙 『読む力は生きる力』
脇明子著 岩波書店 2005 請求記号:019.5PP/ 234 (21794201) 公開

 本を読まなければいけないということではなく、本を読むことで得られるものについて語られています。本との関わりが想像力や心の豊かさを育て、言葉の発達を促すと述べています。著者の読書体験や大学生と関わった経験を踏まえて、読書のすすめ方やすすめたい作品が紹介されています。また、絵本の読み聞かせ、読書力、映像メディアが及ぼす影響などについても触れています。

紹介資料表紙 『メディアの中の読者 読書論の現在』
和田敦彦著 ひつじ書房 請求記号:019LL/191 (21482732) 書庫

 読者や読書について、様々な観点から研究を行っています。また、読者や読書を研究するための問題設定やアプローチの方法について、紹介します。「読書」に至るまでには、著者、出版、流通、読者、読む場所など、数多くの事柄を経ており、それらを明確にし、相互作用を考えて論じる必要があると述べています。本書の各章では、心理学やビデオゲーム、作品の「ジャンル」や読者の地域性といったテーマで論じています。巻末に細かな注と参考文献を掲載しています。

雑誌のとびら

紹介資料表紙 「人間はAI化しているか?―人工知能研究から見えてきた「読解力」低下の真相」 加藤ナオミ(構成・文)
『Kotoba 多様性を考える言論誌』集英社 通巻27号 2017年3月 p128~133 請求記号:Z051/904

 人工知能を開発しロボットの東大合格を目指すプロジェクトに携わっている、国立情報学研究所の教授、新井紀子氏のインタビュー記事です。ロボット開発の過程で、ロボットの性能向上よりも、人間の読解力向上が急務であると判断されるほどに、人間の読解力が低いという調査結果について述べられています。学生が教科書を読めているかどうかのテスト結果や、人間が得意だと思われていた読解力の点数がロボットより低いという結果、高校生を対象に実施されたテスト※では正答できない生徒もいたという調査結果の例が挙げられています。
※記述式の回答を求めており、インターネットからの写し(コピー&ペースト)も可という条件のテスト

紹介資料表紙 「若者の読書離れ」という“常識”の構成と受容 清水一彦
『出版研究』日本出版 学会 通巻45号 2014年 p117~138  請求記号:Z023.05/20

 1980年代に「若者の読書離れ」が常識として広がった当時の背景と、毎日新聞社が行っている「読書世論調査」などを元にした検証から、実際には2005年まで若者が読書離れをしていなかったという著者の意見を述べています。「読書世論調査」から、漫画本や雑誌を含めると10代の読書量が他の年代に比べて多いことが読み取れることや、読売新聞と朝日新聞データベースを用いた該当記事数、当時の知識人、出版業界人、メディア(新聞)が相互に作用しあったことなどを取り上げて論じています。その結果、1980年代から「若者の読書離れ」という認識が社会に広がっていったと指摘しています。
*『読書世論調査』(毎日新聞社):第5回(019.3/1/1951)~第70回(019.3/1/2017)、一部を除いて所蔵有り、「ヨミダス歴史館」(読売新聞社):3Fかながわ資料/新聞雑誌室でも検索可能です。

紹介資料表紙 「読書活動と学校 今、学校での読書を考える ―さまざまな実践報告から―」
『日本語学』 明治書院 第24巻第5号 2005年4月 臨時増刊号  請求記号:Z810.5/4

 中学生や高校生の読書状況、学校での読書活動などに関する論文が収められています。その中の「リテラシー論の変遷から見た読書活動の課題(中村敦雄著、p139~148)」では、読書指導と読解指導の手段をリテラシー論の変遷に沿って整理し、テレビなど紙以外の多様なメディアが存在する時代にあった読書活動を提案しています。

新聞のとびら

「OECD 高1学力15年調査」
『神奈川新聞』 2016年12月7日朝刊 p17
 「経済協力開発機構(OECD)は6日、72カ国・地域の15歳約54万人が参加した2015年の「生徒学習到達度調査」(PISA)結果を発表した。(中略)逆に読解力は平均得点が20点近く下がり、順位も4位から8位に落ちた。(中略)PISAは今回から一部の国・地域を除き筆記からコンピュータを使って出題、解答する形式に移行。文科省は読解力低下を「読み取りに手間取ったのが一因の可能性がある」とみているほか、読書量や新聞を読む機会が減り、長文に触れることが少なくなった影響も考えられるとした。(中略)読解力は文章やグラフから必要な情報を読み取り、説明する力を見る。(後略)」
*朝日新聞、日本経済新聞、産業経済新聞、毎日新聞、読売新聞(五十音順)の2016年12月7日の朝刊でも同様の内容が報じられています。

「読解力が危ない (1) 問題文が理解できない」
『読売新聞』 2017年1月30日朝刊 p1
 「(前略)戸田市は昨年2月、人工知能(AI)の研究で知られる国立情報学研究所の新井紀子教授らと、市立中6校の生徒計340人の基礎的な読解力を測るテストを実施した。その結果、4人に1人は問題文を正確に読めていなかった。問題によっては正答率が半分程度やそれ以下のケースもあった。・・・(中略)・・・普段のテストでも答えを何も書かない子たちから「問題で何を聞かれているか分からない」という声が出ていたからだ。同市は昨年8~10月にも小6~中3に同様のテストを実施。現在、どの学年で読解力に差がつくのか、分析を進めている。(後略)」 *全6回、1月30日~2月4日の朝刊1面に掲載されています。

インターネットのとびら

国立教育政策研究所 >[トピックス]OECD生徒の学習到達度調査(PISA)
http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html
 [トピックス]の項目の中に、「全国学力・学習状況調査」やOECDの調査に関する項目があります。その中の「OECD生徒の学習到達度調査」をクリックすると、2000年の調査から2015年の調査までが一覧になっています。2000年調査と2003年調査の要約は文部科学省のWebサイトへのリンク、2006年調査~2015年は調査に関するPDF版の資料が公開されています。

国立国語研究所>コーパス・データベース
https://www.ninjal.ac.jp/database/
 国立国語研究所が収集したデータをコーパスやデータベースとして公開しています。現代日本語、日本語教育・日本語学習、日本語史等に分類されています。日本語の「基本動詞ハンドブック」というオンライン辞書や「形態素解析ツール Web茶まめ」も掲載されています。

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